イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プレイレポート 20/05/02 アニマアニムス『禁じられた遊び ~Jeux interdits』

昨日はようやっとプレイの機会を作れた、FEARの新作アニマアニムスを遊びました。これで俺もうちよその民だっ!

シナリオタイトル:禁じられた遊び ~Jeux interdits システム:アニマアニムス GM:コバヤシ

シェンツ:紅原かしつ:17歳女性:不明 運命に巻き込まれる形で、指輪の魔力に取り込まれた願いなき少女。複雑な家庭環境をハッキングとVtuber活動に費やしていた、下らなくも愛おしい日常は、残酷なゲームの中で破綻していく。
浅間忍さん:興座雄助:35歳男性:再生 サバトシステム全体の破壊と再生を狙う、危険な元傭兵。戦場で一度死ぬが、サバトに身を投じ勝利した母の願いで復活を果たす。しかしその愛は、全てを壊すのに十分な重荷だった。

アカメくん:クルス:20歳女性:破滅 サバトを信奉する教団に生まれ、指輪に選ばれることこそ誉と教え込まれた人形。死病に侵された人生の最後に、待望のサバトに参加する。白皙の奥に修羅を飼う、静かなる乙女。
Braveoneさん:頸城竜馬:23歳男性:最強 乙女の番としてサバトを勝ち抜くべく、教団に買われた最強。血縁ですら食い合う苛烈な流派、最強最後の継承者たる天才であるが、闘争では満たされない虚無を宿す。乙女との出会いが、獅子に新たな血を注ぐか。

誰かを殺してでも願いを叶えたい。重たいキャラ前提を各PLが咀嚼した結果、こんな感じのロクでなしがゾロゾロと集合しました。いやー、凄いね!!
今回はルールブック不所持者が多かったため、キャラメイク込みでゲームを開始しました。流通が厳しい状況なので、すぐさま手元に抑えるってのが難しいんよね……。ルールや世界観のインスト込みでセッションするのはとても久しぶりなので、錆びついたコンベンショナル回路に油を挿して、手順を守ってプレイ開始。

ぶっちゃけ僕らオッサン集団、アニマアニムスが推す『エモいうちよそでしんどい』はなかなか分かりません。そういう文化が生まれる文脈に直接身を浸しておらず、身内で通じる圧縮言語がその実何を示しているか、よく分からん状況なのですね。
なので結構ハードルと言うかバリアと言うか、警戒分厚くなった状況でゲームを始めたと思います。偏見や変な構えを持ってゲームするのは本当に良くなくて、それを抱えたままだとゲームの内実に関係なく、そっちにセッションが引っ張られます。
そういう意味では、ライフパスを振る中でゲームが目指しているキャラクター、セッション体験がどういうものか一個一個確認できたのは、とても良かったと思います。ライフパスをつなぎ合わせるとすげーロクでもない生命体が、半自動で生成されるゲームシステムに浸ることで、このゲームにどういうキャラが必要で、どういう物語が希求されているかが肌で理解ってきた感じがある。
その過程で世界観への質問疑問、モチベーション生成で引っかかるポイントを言語化・共有して、極力構えを解いてからゲームに向き合えたのも良かったと思う。印象や思い込みってのはどうしても生まれるもので、それを苦笑いで噛み潰しながらセッションするよりも、バッと出して解きほぐしてからゲームと対峙したほうが、やっぱり良いセッションにはなるよね。
それをやるためにはメンツへの信頼が必要で、そういう意味でも価値観や倫理、ゲームへの真剣さが同じくらいのメンバーでやれたのは、非常に良かったと思います。こういうところが共通だから、長く一緒にゲームがやれてるんだな、と思う。

ゲームをする上で参加者全員が引っかかっていたのは、『最終的にデュオは殺し合う』という部分で。コミュニケーションのゲームであるTRPGは、同卓するプレイヤーと衝突する展開を飲み込む時、結構工夫がいるものだと思います。
最初っからPvPだと明言したり、そういうマインドセットを作ってからゲームに臨むのならまた話も別なんですが、アニマアニムスは世界観の根底にある殺伐とした碌でもなさを、正直あまりうまくパッケージできていない感じがある。過剰に爽やか、というか……これは僕(ら)が不適切なメッセージを、ルールブック(ならびに、それに伴う広報)から受け取ってしまっている感じもあるけど。
ここら辺、参考文献が一ページあるだけで結構変わったかな、という印象もあるけど。とまれ、カジュアルに殺し合いを消費すれば良いのか、どうしようもない状況に飲み込まれつつ人間性にしがみつけば良いのか、ゲーム的に推奨される倫理基準を何処に於けばいいか、結構迷子に成りました。
結局そこはゲームをしながら話し合い、『殺し合うにしても今(このセッション)ではなく、底に至るまででプレイを通じ変化・蓄積する人間性、それが儚く消えていく葛藤を楽しむゲーム』なのではないかと、認識を再構築する形で共通見解を作りました。天羅に近いプレイフィールなんだろうな、みたいな認識制作。

多分ここら辺は僕らがクソマジメな部分なんですけども、人の命を奪って己の願いを叶える卑劣と悲惨を、思考停止して食えないんですよね。何故そうなっているのか、その状況に置かれたらどうするか、かなりコストを掛けて解体・再構築しないと、ゲームの前提を消化できない。
(あえて言うけど)わざわざ悪趣味な世界設定とキャラクタービルドで生み出される、逃げ場のない悲劇。倫理のネゲントロピーが負のサイクルを描くしか無いゲームに飛び込むのは、僕らには結構準備と覚悟がいるもので、マインドセットをしっかり作らないと遊べない……少なくとも誠実には遊べない感覚が共有されていたので、結構時間をかけて『アニマアニムスってどういうゲームなの?』を、実プレイに入る前に構築していきました。

そこら辺をしっかりやった(あとプレイ前のガス抜きに時間使った)結果、実プレイは目の前のドラマに全力集中して、ちゃんと向き合ったゲームになったと思います。指輪に選ばれサバトに身を投げる瞬間であるシーン00を入れたのも、キャラクターをゲーム世界に定位する大事なアンカーになったかな。これは絶対やったほうが良い。
システムの取り回しの軽さ、積み重なる変化をキャラクターシートに刻んでいくルーリングは非常に巧みでした。魂を削って力を求めれば、喪失が近づく。この天秤をシンプルに再現したゲームシステムは、サバトの苛烈さを上手くデータ化していて、取り回しも軽かったです。
ミドルの情報収集を自動生成するシステムも妙に雰囲気があって、僕は特にここが気に入りました。技能が個別化されていることで、シーンに実在感があるのが良いのかな? 必要最低限の手数に簡略化しつつ、殺し合う相手と向き合い対話する(そしてそれが変化を生む)ドラマが痩せずにどっしり出来ているのは、なかなか良かったです。
戦闘システムも簡勁かつイメージ喚起力があって良いのですが、もう少しキャラビルドが差別化出来ると、より楽しめるかなと思いました。抽象化がやや聴きすぎていて、戦闘を通じたキャラ立ちが、ややボンヤリした印象も受けます。
まー本体はミドルでの葛藤ではあるので、クライマックス軽くするのは正解だとも思うけど。ここら辺、世代によって求めるボリュームバランスが違くて、より若い世代に訴求するようビルドした結果なのだと思う。それは正しいのでOKではあるけど、まぁもうちょい濃い味でも良いかな、個人的には。

というわけで、楽しいセッションとなりました。エモいうちよそ解んないオッサンなりに、初期状態のどん詰まりを実プレイで生まれる交流で変化させ、あるいは変化しきれないやるせなさを堪能しつつ、物語の燃料を積んで『愛憎相殺』という結論を爆発させるのが狙いのシステムかな、と思いました。
願いのために他人を殺し、世界を変えるエゴ。その碌でもなさとギラついた輝きにどう向き合うかは、生み出されたキャラクターとアクトごとに個別だとは思います。ただ僕(ら)の間隔と信念からすると、それはけして気軽に玩弄されて良いものではない。多分アニマアニムスもそういうデザインはしていないし、それなり以上の重たさを持ってゲームに参加して欲しいと思っているのでしょう。
その観点で見ると、かなり哲学がはっきりしたゲームデザインになっており、やりたいことは出来ていると思います。ただこの解体・再構築作業は凄くコストがかかって疲れたので、可能であればオフィシャルサイドがシリアスな言葉で、コストを背負ってやって欲しかった。
『エモいうちよそでしんどい』だけ言われても、僕には何をするゲーム、何が楽しいゲームなのか分からんわけです正直。そこを言語によって分解し、適切に届けるのはゲームデザイナーの仕事であって、ユーザーサイドの責務ではない気がします。まぁオッサンがいらねぇ荷物背負ってるだけなんだけどさ。
それでもこのゲームをやろうと思ったのは、一つには時代についていかないと確実に腐敗していくという切迫感、『俺たちでもナウいゲームが出来るんだ』という意地と見栄が理由です。同時に、面白そうだからやって面白かったです。素晴らしい。

ただまー、碌でもなさを消化する物語の胃腸が弱ってるのは、強く感じたね。『若い子には良いスパイスかもしんねーけど、正直重いわー』とは感じた。でも美味しかった。なんだかんだ好きな味付けだからね。
なんつーかな……碌でもなくて理不尽で悪いことばっかり起こる塵世に、ちょっと長く身を浸していると、任意に色々設定できる物語の中では、そして最後くらいはなんらか、理にかなって前向きな結論が欲しくなるんですよね。それはボーッと座ってたら満ち足りた結論が流れてくるっていう”楽”ではなくて、己の決断と歯ぎしりと血しぶきを代価に、『世の中捨てたもんじゃねぇ』という確信をなんとかつかみ取りたいという欲求なのですが。
どっかにこー、ロクでもない閉塞を打ち破れる可能性が見たいわけですよ。出口のない檻に突っ込まれた人間が右往左往して、美醜善悪入り混じった人類曼荼羅を描くのは鮮烈で、確かに面白い。ただそれを野放図に、どうにもならない結論を約束しながら進めるのはちょっと、今の僕(ら)にはヘヴィではあって。
ここら辺は完全に好みの領域だとは思うし、『そういうゲームだ』と認識しているのなら、それに相応しいタマを投げてしっかり楽しむって話なんですが。うむ、実際面白かった。今度はPLしてみたい。

良いセッションでした。同卓していただいた方、ありがとうございました。