・端書き
(これから『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』第1話の感想を書きます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
時流その他で新番組の層が薄い…てのもありますが、気にかけつつしっかり見れなかった番組を、後追いながら自分なり見るいいチャンスだと思い、この作品を見ていくことにします。よろしくお願いいたします。)
・本題
文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~ 第1話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
心の檻をインクに変えて、掴めなかった信頼を刻んだ物語が歪む。
メタフィクショナルな檻に閉じ込められて、太宰治はメロスとして走る。奇妙に改作された作品世界に、迸る刃と見知らぬ手助け。
物語を殺す敵に、文豪は如何に立ち向かうのか。
という感じの、近代日本文豪擬人化バトルソシャゲのアニメ化、第一話に遅まきながらキャッチアップ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
自分も好きな領域なので、どう味をつけてくるかと構えてたけど…いや、面白かったです。
いきなりメロスの世界に太宰も視聴者も飲み込んじゃって、事件解決してそれを包むフレームまで一話で解説。
文豪戦士としての自我を取り戻した太宰が、『これゲームだから…』で強引に押し通してるところをチョコチョコ突っ込んでくれる所含めて、最初の挨拶として食べやすい構成でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
今後どういう角度と深度で彫り込んでいくかは分からないけど、期待感と確かな信頼はある。
なにしろ一学問として、様々な人が沢山の学識を捧げうる領域。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
ディープに細部を触っていったらきりがないし、解釈も無限にあるネタとどう向き合い、誠実さを保ったままエンターテインメントにするか。
バランスは難しいところだと思いますが、作者と作品の距離感含め、面白いとこ突いたと思います。
史実をネタにしたエンタメは、どうやってもコアの部分を借りてくる後ろめたさみたいのが漂って。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
作品独自の面白さをしっかり確立した上で、どう史実なり原作なりに操を立てるかってのが難しいと思うのですが、少なくともこの第一話は良いバランスを保ったと思います。
まずOPとEDがいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
EDはまだ映像がないけど、OPは神風動画の多彩な表現力が生き生きと踊って、明治大正のレトロな雰囲気を耽美にまとめている。
ステンドグラス風、輪郭を外したパキパキの表現。色んな美しさが堪能できて素晴らしい。
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歌詞に入り交じる、過剰な文学ネタがなかなか良くて、そこが『まぁ信頼して体重預けっかな…』と思えた第一歩だったりします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
作詞はアプリの世界観監修の方だそうで、こういう引用の網を織れる人が全面に出てるなら、まぁにわかなクスグリかたはあんましねぇだろう、みたいな。
さて本編は、自作に取り込まれた太宰くんがグチグチ寝言をたれつつ、文豪っつうか剣豪な芥川先生に尻を叩かれつつ、メロスとしての歩みを頑張る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
芥川先生の介入がないと、太宰は生粋のダメ人間力を発揮、メロスのペッキリ折れて終了、と
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”走れメロス(に限らず、あらゆる文学作品)”に作者が何を込め、何を願ってフィクションに仕上げたかというのは、絶対に答えにたどり着けない迷宮だと思っておりますが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
たとえ作者本人が自作を解説したとしても、それはあくまで特権的な一読者の意見でしかなく、他の解釈を否定するものではない。
しかし無限の解釈全てがフラットに価値を持つわけではなく、『よく読めている』読解と『的外れで不適切な』読解を分ける分水嶺は、確かに存在する…はずです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
これを設定しない限り、読解行為は無限のアナーキーに交代していく。
ではどんな読みが適切か(あるいは正しいか)を如何に定めるか。
この軸が非常に難しいわけですが、文アルが”メロス”を読む視座は、佐藤春夫への信頼と裏切りを足場に進んでいきます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
裏切られたと感じ、信じきれなかったからこそ、仮想に夢を託した。その祈りを、作者自身の手で折り曲げさせるのが、侵略者の狙いである。
芥川先生がケツ叩かないと、即座に諦めバッドエンドに直行するダメダメ太宰の書き方は、可愛くて結構好きなのですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
まぁ文豪に限らず、人間がどんな人物であったかと定めるのも、答えのない夢幻の迷宮に迷う行為であり、同時に自分なりの解釈をとりあえずおっ立てないと始まらないとも思う。
フィクションの奥に込められた、作者個人の物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
文学史に刻まれる客観的事実と呼応する形で、”メロス”は読まれていく。
その多重構造の上に、彼らが死せる歴史的存在…を超えて、ポップなイケメンになるほどの客観化がある。
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(作品←文豪)←アルケミストによる浄化構造)←それを感受する現在のリアリティ、あるいはポップな娯楽消費の対象になった文学)))という、多層なメタ構造。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
それが、このねじれた物語を成立させている。
『文豪パワー、メーイクアーップ!!』と鎌を構えた”太宰治”は、当然生身の津島修治ではない
作品を、あるいはその無頼で破滅的な生き様という物語を通じて生まれた、太宰治というパブリックイメージが独自のキャラクター性を付与され、独自の物語を歩こうとしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
この多重化された偽物っぽさが、個人的には時流を感じて面白かったりするのですが。
彼らがあくまで、作品原文でも作者本人でもなく、複製技術時代に別個のアウラを与えられたポップなキャラクターとして、独自の物語を歩いていること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
ここに製作者もキャラクターも自覚的になってくれると、メタフィクションとしての立体感が出て僕好みですが…さてどうなるかな?
”太宰治”は紫に燃える不信の炎の取り囲まれつつ、己の意志で”メロス”を完結させて、その泥から這い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
芥川先生が蜘蛛の糸を使ったり、ミノタウロス…に擬された牛頭とやりあってたり、OPラストで泥中の蓮が描かれたり。
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かなり意図的に、彼等が潜る作品は”地獄”として描かれているように思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
嫉心、憎悪、不安、恐怖。
”負”とされる人間の感情は人を地獄の泥に追い込み、同時に文学という蓮を咲かせる要土ともなりうる。
…という綺麗事で住むなら、太宰も芥川も川端も三島も自死してない。
作家個人の中に巣食う地獄を、その文才が結晶化させる作品は果たして、開放しうるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
そこにこびりつく個人的な…あくまで個人的な泥を振り払って輝けばこそ、時代を超えて名作と愛され、このようなスピンオフも作成されてしまう作品のアウラは、一体誰を救済するのか。
書いても書いても救われないが、しかし書かざるを得ない業。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
飄々とスタイリッシュ、あるいはギャーギャー可愛い”キャラクター”としての文豪のハラワタを、引っ裂いて掴みだしアニメにしてくれるのか。
ここらへんが、この作品に投げかける恍惚と不安の源泉であったりします。
とまれ太宰は自作を乗り越え、幻影でしかない佐藤春夫に決着を付けた。かくして、文学概念を食いつぶす正体なき”敵”との闘いが、本格的に始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
目覚めてからの太宰くんツッコミ劇場は、こっちの気持ちを120%組んでくれて気持ちよかった
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外野から突っ込まれる前に、作中で不自然な横車を全部言語化してしまうのは上手い(そしてズルい)手筋だなぁ、と思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
そらま、文豪が武器握って敵と闘うのは、アプリというジャンル、そういう流行りに乗っかったお商売の部分、多々あるからな…理由はねぇ。
しかし同時に、そういう存在としてこの”太宰治”あるいは”芥川龍之介”が仮想に実在してしまっているのも、また事実で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
既に死んだ文豪を、存在しない文学の危機に放り込み、特定の要素を過剰にブーストした戯画として駆動させる。
幾重にも折れ曲がったメタな構造に、どう実在の血を宿すか。
そこも楽しみだったりします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
顔の見えねぇ謎の敵を追いかけるよりも、文豪が作品に刻んだ(と思われる)リアルな歴史と感情、あくまでギズモでしかない自分へのぼんやりとした不安と取っ組み合ったほうが、トルクのある物語が紡げそうだけど…ここら辺は、僕の個人的な好みだな。
とまれ、太宰治はメロスの海からすくい上げられ、冒険が始まるのでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
いや、面白かったです。大正テイストの漂う本陣の美術が、なかなか良いですね。吸いたいと思った空気が、ちゃんと作中に流れてるのはグッド。
時代を超えたスーパー文豪大戦と緩やか日常、どう書くか楽しみです。
同時にどんだけコアでシビアな問題提起を盛り込み、自分達が作り出した仮想を彫り込んでいけるか…こう言って良けりゃ『文学的な』ストーリーを積むげるかも、非常に気になるところですけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
このアニメが選んだ主題は、僕どうやってもそういう見方を避け得ないのよね…。
なので読解も見当違いな方向にぶっ飛び、明後日な方向からネタを引っ張ってきたりもするのでしょうが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
そこもひっくるめて、自分の中でのハイカルチャー/カウンターカルチャーのバランスを確認するのも、この視聴の目的だったりします。
いや実際、今の日本オタクカルチャー、史実窃盗しすぎだろ…
個人的にはイケメンがキャッキャする明るく楽しいお話よりも、それぞれが抱え原稿用紙に焼き付けた地獄を的確に切開し、このお話らしい切り口で刻んでくれることを望みたいですが…さて、どうなるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月18日
導入が終わっての二話、とても楽しみです。