イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

B-Project 鼓動*アンビシャス:第7話『胸のBULLET』感想

男なんだろ? グズグズするなよ系即行動アイドルアニメ、今週はマブダチどもの挽歌。
第5話からの束モノ掘り下げ回の流れをくむ話で、王茶利くんと野目くんの叩き上げボーイズと、北門&増長のバンビ時代からマブなリーダーコンビを軸に進むお話でした。
急に伝説の薬草とかほざきだしたので思わず『ドラクエかよ……でも先週、怨霊に支配された新選組ゾンビ出てきたアニメだしな……』とか突っ込んだが、流石に不死の病はよもぎでは治らんかった。
リアリティラインは揺れ動きつつも、ボーイズたちのキャイキャイあり、素直にフラグを積んでは解消する奥行きあり、ちょっといい話の気持ちのいい〆あり。
Bプロアニメらしい、まとまった良エピソードだと思いました。

今回の主役は、イカにもな森久保声だと思ってたら吐血か喀血かしらねーが不治の病を背負ってアイドルやる覚悟ボーイ王茶利くん。
病魔を隠しても叶えたいアイドルの夢を、ガキの時代から一緒に目指してきた野目くんの純愛と絡めて、直球で描く話でした。
なんかふんわりした不治の病はさておき、ちゃんと積んだフラグを解消する形でエピソードを作ったところと、ヤングな二人がアイドルにかける思いの強さが素直に出ていたのは、キャラが好きになれてよかった。

つーか、二人で想い合いすぎてツバサちゃんとの乙女要素が蒸発寸前なの、大丈夫なのかと不安になる……丁寧に現場から遠ざけてたしなぁ。
『二人の関係は友情! 友情です!!』ってアラート鳴らしたいところなんだけど、命を顧みず崖に生えた伝説の薬草を探して回り、詩で心がつながって出会い直し、『万能薬はなかったけど、お前の愛が最高の薬DAZEミ☆』っていうオチは、どう考えても恋愛文法。
まぁ高度に発達した友情は愛情と見分けがつかないって言うし、野目くんの真っ直ぐでバカな行動力は眩しかったので、何も問題はない。

若い二人が愛を育む中で、リーダーたちはなんか拗らせた年長男子百合に勤しんでいた。
こっちもガキの時代からつるんでいたけど、なんか拗らせて素直にSUKIって言えない関係になったようだ。
こうやってメインテーマにかぶせてキャラの属性や関係性を描写し、お話の重なりあいを描写する手法は結構好きだな、奥行きが感じられて。
今回王茶利&野目がお互いの厚意を素直に受け止めあったように、こじらせた年長者たちも思う存分百合百合する日が来るんだろうか?


そんなWカップルから離れた位置で、ジーっと見守っていた愛染さん。
第2話では金城くんにクールに突っかかる部分ばっか目立ってたけど、今回は冷静な観察眼を活かして、めんどくせーオレンジ髪の本心を一発で見抜いていた。
トスの上げ方が独特というか、完全に素直になれないツンデレガールに告白を促す捌けた先輩の動きで、『このアニメ、オトメの皮を被った男性カップル推進アニメなんじゃないかな?』という疑問が深くなる。
水浴びパチャパチャでキャフフしてたシーンといい、世の中には男の子キャイキャイを遠くから見守る幸せへのニーズが、確かに存在しているのだろう。

今回は性格ゴミクズのクソモブも出てこず、むしろ王茶利くんを心配して見舞いに来てくれる人格者っぷりで、仕事は順調に進んでいた。
あんま仕事にガッツイた内容じゃないけど、リーダーたちの歴史を感じる述懐とか、Bプロの評判とアイドルの夢のために死病をひた隠しにするところとか、細かく仕事意識が見える描写がキュートだった。
トンチキな薬草とかは出しつつ、こういう部分はないがしろにしないのが、Bプロアニメを信頼できるところだ。
ぶっちゃけ作画も結構ヘロヘロだしな!!!!

つばさちゃんに関しては、仕事の差配をしつつボーイズのキャイキャイを見守る立場というか、ビジネスパートナーを維持というか。
今後すごい胸きゅんイベントがあって一気に関係が進むのか、最後までずーっとキャイキャイウォッチャーとして突き進むのか、さっぱり分からん。
が、余計なこと言わず仕事をしっかりして、ボーイズたちの純情にもちゃんと共感する味付けは、薄味ながらいい塩梅なのだ。
今回で10人全員顔を見せ束ものアイドル編も落ち着くと思うので、次回以降このバランスを維持しながら、存在感を強めていければ非常にグッドだと思います。


そんなわけで、病弱ボーイとむっつりボーイの不器用な純情と、面倒くさい年長者の男百合を"王様のブランチ"っぽい番組に乗せてお送りする回でした。
フラグの処理の仕方といい、イベントの起こし方といい、感情の展開のさせ方といい、Bプロはトンチキな展開を織り交ぜつつ真っ直ぐな描写が強くて、安心して見れますね。
これで10人全員がユニットクロスオーバーを果たした(北門さんだけ二回登場)わけですが、こっから後半戦、どう展開させていくのかなぁ。
多人数を楽しく見せるトンチキさと、それに引っ張られ過ぎない安定感を活かして、今後も楽しませてほしいものです。

 

クロムクロ:第20話『飛んで火に入る虎の口』感想

青い地球を護るべく立ち上がったサムライたちの物語、今週は決戦宇宙鬼ヶ島。
一度膝から崩れ落ちても、20話分『戦場』で鍛え上げられタフになった由希奈がガンガン動きまわって情報を集め、ムエッタも己の真実を求めてエフィドルグと決別、剣ちゃんも『お前を守る』という約束を果たすべく全力全開。
一方その頃、ソフィーちゃんは地上で鬼のおじさんと物語の本質に関わる熱いトークを繰り広げるのであった……というお話。
フィドルグの狙いと組織概要、ゼルの正体と過去、SF的入れ替わりトリックを解くヒントと、気になっていたところがドバっと出てくる転換点でした。
お話が進んでいるのと同時に、『何が心残りなのかすらも解らない』普通の高校生だった由希奈がどれだけタフに育ったか、剣之介とお互いどれだけ思いやっているかもよく感じ取れて、充実感と今後への期待が両立するエピソードでした。

お話のおおまかなラインとしては、剣之介&ムエッタの呉越同舟連合による由希奈奪還作戦と、ソフィーちゃんの『教えて! エフィドルグ!!』が同時並列進行。
これまでちらほら見せてきた疑問にかなり直線的に答える話で、いろんな事が明らかになりました。
逆に言うと、敵の狙いが20話すぎるまで明らかにならなくても、メインキャラクターの精神的変遷を丁寧に追いかけることで、アニメは面白く見せれるってことなんだろう。

箇条書きで解ったことをまとめますと
・いま来ているエフィドルグは先遣偵察隊であり、本隊の勢力はこの1000倍以上
・要石はワープゲートのキーとなるアイテムで、これを回収することで本隊を呼び込める
・エフィドルグの狙いは地球の完全隷属、自分たちの価値観に従った世界の構築
・ゼルはエフィドルグに滅ぼされた存在の生き残り、戦う理由は復讐と反抗
辺りでしょうか。

黒部にある枢石が奪われた瞬間、敵本隊がワイプアウトして地球は制圧されるわけで、黒部を守る理由がより強化される情報開示だといえます。
逆に言うと、先遣隊さえ潰せれば、ゼル由来のオーバーテクノロジーでGAUSを強化し、本隊の襲撃に備えることも出来そうであり、お話の落とし所が明確になった感じですね。


明言されていない部分/謎が深まった部分だと
・どうやら人間3Dプリンター的な技術と記憶の焼付技術を組み合わせることで、任意の記憶や精神を持ったコピー人間を製造可能
・ムエッタは雪姫をベースにしたコピー人間であり、ミラーサに秘密通路の認識ができなかったことから考えると、レフィル以外のメンバーもコピー人間か?
・この期に及んでレフィルの兜を外さない理由
・剣之介にコピー人間技術が応用されているかは不明
・450年前の詳細
・ゼルはなぜ岳人の時計をしているのか
辺りが不透明なままの部分ですね。

レフィルがムエッタの情報開示を拒む頑なさや、作りかけの不気味な雪姫ヘッド、これまでの情報を統合的に判断すると、ムエッタ=雪姫コピーに意識情報を流しこんだコピー人間なのは間違いがなさそうです。
ミラーサが3D人間工房への通路を認識できなかったのも、真相を隠蔽するべくコピー人間には認識できないプロテクトをかけているからでしょう。
とはいえ、前回チョトっと見えたムエッタの記憶やら、序盤から引っ張ってる450年前の事件の詳細は謎のままですが。
地上に剣之介が帰ってきて、ゼルと対面して話す時が更に情報が見えてくるタイミングですかね。

もう一つ疑問なのは、ソフィーに情報を開示してくれたゼルの言葉を裏付ける証拠が一切なく、彼の告白を真実と受け取っていいか、結構不穏なところです。
外見に似合わぬ冷静さと清廉さを併せ持ったゼルは、好感のもてる良いキャラに育ったと思うので、ここで裏切られるとショックが大きいというか、『いや……それあんま嬉しくない……』って展開ではあるけど、どう使ってくるかなぁ。
敵の本拠が降りてきて、まさに最終決戦ってシチュエーションなんだけども話数は結構あるので、もう一捻りしてくるならゼルかなぁって気はすんだよね……捻らず素直に流す可能性も高いけど、このアニメだと。

しかしこんだけ科学技術で圧倒(出入り口の描写を見るだに、任意の重力制御を余裕でこなしている)しているのに、人数の少なさと人間を甘く見続ける慢心、任務よりエゴの充足を優先する浅ましさのおかげで、エフィドルグに勝つ目が見えない。
嘘ついた挙句ノータイムで殺しに来て、しかも失敗してウロウロ探しまわるムエッタの浅はかさとか、なかなか見れないブサイク加減だと思う。
フィドルグがそういう低劣種族なのか、コピー人間は程度が下がるのか、未だ仮面を外さないレフィルがなんか企んでいるのか、そこら辺が見きれないなぁ。
話数に余裕はあるので、じっくり進めていただきたいところだ。

そんな風に情報の洪水が押し寄せる中、主に女達のドラマもいろいろと進んでいました。
一回はか弱いヒロインのように『宇宙とかマジ無理……』と弱音を吐いた由希奈ですが、『戦場』に巻き込まれたり逃げ出したり向かい合ったり、色々あった日々を思い出して立ち上がり、自分の力でどうにかしていました。
第12話の特訓合宿回が直接的に生きてくるスニーキング・ミッションは、ボーデンさん好きにはありがたい展開でしたし、オペレーター稼業の経験が生きた情報収集も、強みを活かした感じがあって好き。

由希奈が『戦場』を前に逃げ出さなくなったのは、やはり『戦場』からやってきた剣之介とともに歩んできた日々あってのものだねであり、それまでさんざんアマゾネスしてたのに剣之介を見た瞬間決壊しちゃうのは、それだけ心を許した存在になってるからでしょう。
一度は拒絶した『刀』という剣之介の象徴を手にして、ミラーサのハァハァ斬りを捌いていたところは、いまどき高校生とサムライが絆を育むアニメの真骨頂とも言えるシーンでして、なんか見てて充実感があったな。
剣之介も虎口に飛び込む決意を固め、(彼の中での)雪姫と行動をともにすることで、自分がなにを手に入れたいのか、どの約束を守りたいのかハッキリした感じもあって、お互い強く求め合う関係性がキマくっていた。
時間かけて関係を構築しただけあって、盤石だよなぁ由希奈&剣之介……素晴らしい。

そんな二人に割り込める立場に一応陣取る二人の女は、しかし自分に課せられたミッションの方を優先していました。
雪姫ことムエッタは身体的アイデンティティをレフィルに問いただして裏切り者扱いされ、ソフィーちゃんはゼルと対話して情報を集め、今後の展開を左右しそうなUSB貰ってました。
これでムエッタは人類サイドに身を寄せざるを得なくなったけど、無辜の作業員さんの首折ってるからな……生存フラグ的には黄色信号だ。

先週は出されていなかったお茶を一緒に飲んでいる所は、口にするものを大事に描くこのアニメらしい、ソフィとゼルの関係性変化の象徴でしたね。
今描写されている範囲のゼルは、USBや横文字言葉などの『平和な現在』に適応した時空の旅人であり、守るために戦うサムライなわけで、剣之介と非常に似通ったキャラクターと言えます。
『高校生』という外見と社会的立場を手に入れやた剣之介が、一歩一歩間合いを詰めて『現在』に受け入れられ、カレーを食うどころか自分で作るところまで行ったのに対し、鬼の外見をしたゼルは社会の外側からひっそり見守るしかなかったのは、ちと面白い差異だと思います。
敵の本拠も攻めてきて、ゼルのUSBを活用せざるを得ない状況が迫ってますが、さてはて優しい鬼のおじさんの本性は白か黒か。
ゼル好きなんで、白だと良いなぁ……。


そんなわけで、様々な謎が解消されつつ、新しい謎もモリっと出てくるお話でした。
一回引き離されたおかげで主人公カップルの絆は深まったし、因縁の相手はこっちの岸にやってきたし、敵の本拠地は吶喊仕掛けてくるし、話も一気に進んだなぁ。
敵とされていたものが味方となり、秘密とされたものが事実に変わった後に、何がやってkるのか。
決戦の次回をどう描いてくるのか、楽しみに待ちたいと思います。

91Days:第7話『あわれな役者』感想

血に込められた愛と憎しみが狂気に変わる禁酒法時代の修羅の巷、今週は女はそれを我慢できない。
息子が父を、弟が兄を、妻が夫を殺す血塗れの世界の中で、復讐鬼がその騎馬を存分に振るうお話でした。
暴力を職業とする『ファミリー』の因果に足を取られ、もはやオニオンスープのように冷めきっちまった『家族』の絆を取り戻そうと願う兄弟の、あまりにもむごい結末。
その状況をつくりだした主人公が行動する理由もまた、喪われた『家族』への反転した憧憬という、地獄めいた血の因果が一気に花ひらく回となりました。
これでロウレスはファンゴとネロの共闘体制として一応固まり、ガラッシアとの全面抗争も辞さない超タカ派でまとまったわけだな。

アウトローであり職業集団である『ファミリー』と、親から生まれ兄弟が家を同じくする『家族』。
同じ言葉を使いつつ、その内容は全く異なっています。
口では『ファミリー』を謳いつつ、メンツや利益や自己防衛や憎悪のために血縁者をぶっ殺し、義理の家族も殺してはばからないマフィアの悪辣さは、これまでも描かれたとおり。
今回ヴァネッティ三兄弟が直面したのは、その間にある矛盾であり、その中にある矛盾でもあります。

その胎内に新しい命を宿せるフィオは、男兄弟がこだわる『ファミリー』のあり方を、一切理解できません。
メンツと威圧力を失えばいつでもドブに沈められ、命を取られかねないヤクザ稼業の職業倫理は、フィオにとってはどうでもいいものです。
そんなフィオにとっては血の繋がりだけが『家族』なのであり、所詮他人である夫を殺して状況を改善することには躊躇いがない。
水杯でつながった『ファミリー』のために『家族』を殺すネロとフラテのカルマだけではなく、『家族』を思えばこそ新しく出来た『家族』すらも殺してしまう女の業が、今回は色濃く描かれていました。
法なき修羅の巷においては、安全地帯などどこにもないわけです。

『男(もしくは侠)』として、空っぽなプライドを守らなければ商売が立ちいかない、クソみたいなヤクザ倫理を理解しているネロとフラテの間にも、乗り越えられない溝があります。
圧倒的なスケールを誇るヴァネッティを前に、飲み込まれることで生存を図るか、牙を突き立てて生き延びるか。
組織としての実体がなくなっても恭順して生き延びるか、犠牲を覚悟で闘争を仕掛けるか。
『進む』か『退く』かの選択肢をつきつけられた時、『退く』ことを選んだ豚が死ぬという構図は、今回キノコ頭をやめて一気にかっこ良くなったファンゴが、父を殺した経緯と強く重なります。

『プライドがなければ、生きている意味が無い』というネロと、『プライドを投げ捨てても、生きてさえすればいい』とするフラテの対立は、個人的な資質に立脚する対立でもあります。
生来のカリスマを持ち、対立してなおヴァネッティに支持者を残すネロと、『日曜日の礼拝に行かなくてもいい』兄を恨みつつマフィアとして認められるために必要な暴力性をどうしても確保できないフラテ。
『愛されるのではなく、認められたい』と願いつつ、血でしか己を証明できないマフィアの世界にあまりにもなじまないフラテの生存戦略として、新しい父であるロナルドに擦り寄り、酒と薬に逃げ、ガラッシアに恭順する生き方があります。
その惨めさと哀しさは、生来王の資質を兼ね備えたネロには絶対に理解できない弱さであり、弱さに同情を見せることすら隙になるマフィアの世界を考えれば、お互い銃を突き付け合うのはある意味宿命だったのかもしれません。
……『フラテは身内だ。どうにか助けたい』という弱さをアヴィリオに見せたのは、『ファミリー』であるアヴィリオなら弱さへの共感を食い物にしないという共感を、ネロが抱いているからだろうなぁ……それ、あまりにも致命的な誤解だぜ。

兄弟はお互い、血縁のぬくもりを大事に思い、空いてしまった溝になんとか橋をかけようとする。
家族の思い出が詰まったオニオンスープをネロは『懐かしい』と味わうし、フラテがここまで追い込まれたのも兄恋しさ、父恋しさ故でしょう。
しかし時間は巻き戻らないし、『ファミリー』の道理を捨てて、フィオが口走る『家族』の真理にすべてを捨ててたどり着くには、あまりにも血が流れ過ぎ、流しすぎた。
マフィアという職業の血塗られたルール、『悪しき父』としてフラテを支配しようとしたロナルドの策謀、そして何より、身近であるがゆえにあまりにもこじれて強烈な感情を込めた『家族』へのコンプレックス。
密室で兄弟双撃する苛烈な結末は、もはやどうしようもない運命の末路であり、複数の思惑が絡み合う浮世の掟でもあるわけです。


そんな因縁のもつれた糸を、己の望む方向に引っ張っているのが、我らが主人公。
誰よりも大事な『家族』をぶっ殺したネロが、よりにもよって『家族マジ大事。俺もホントは殺したくないし、暖かい昔に帰りたい』と抜かしたので、死ぬより辛い地獄に兄弟を叩き落す策略を練ります。
『殺すだけじゃ飽きたらない。俺の背負った地獄を、お前も味わえ』というのは復讐者物語でよく聞くセリフですが、こうも綺麗に実現されると、鮮やかさに感心するやらおなか痛いやら。
家族のフリして判断力を鈍らせ依存度を上げるために薬を処方してたロナルドの卑劣さと、同等以下のゴミってのが凄いよね、主人公なのに。
『弟に合わせてやるよ』とか『そろそろ始末をつけたらどうだ?』とか、『死ね』を気の利いた言い回しで表現するボキャブラリーの豊富さが好きです。

アヴィリオが切れ者であると示すためには、具体的な描写が描かせません。
今回の策略はこれまでの描写を的確に活かしたものが多く、例えばネロを現世の地獄にとどめたままフラテを殺すスリの技術とか、身内殺しをフラテに押し付けることで状況を加速させる陰謀だとか、どっかで見たことのある技術の集大成でした。
キャラクターに何が可能で、何を特異としていることを違った状況で繰り返すことは、キャラの中に一貫性を培い説得力を上げていくわけで、過去見せたモチーフを鮮やかにリフレインした今回は、策士アヴィリオの強さを見事に演出していました。
第4話ではコメディタッチに使われていたスリの手妻が、今回は人を殺すための大事なピースとして使われる辺り、エグいなぁ。

今回色濃く描かれた、ヴァネッティ兄弟の『家族』と『ファミリー』をめぐる愛憎は、アヴィリオが復讐者として陰謀を操る理由の陰画です。
『ファミリー』を背負えばこそ『家族』を殺す矛盾、『家族』だからこそ助けたいと願う人間らしさは、当のネロが虐殺した『家族』が持ち、アンジェロから奪ったものである。
だからこそアヴィリオはフラテを殺し、ぽっかり空いた隙間に『これからは、俺がお前の弟だ』と滑り込んで『家族』になろうとする。
フィオを操作する手紙の使い方といい、今回アヴィリオのこれだけ陰謀が巧く行ったのは、『家族』を殺されるものの空疎さ、『家族』を背負うものの複雑さを、まさに当事者としてアンジェロが知り尽くしているからでしょう。

ネロとアヴィリオは『家族』にまつわる様々なものを共有しているのだけれども、取り返しようのない過去によって、その共感はねじれてしまっている。
どれだけ同じ立場になっても『んじゃあ、俺たち手を取り合い、兄弟のように助けあおう』とは、実の兄弟すら殺しあうロウレスの街では、どうやったって訪れない未来なわけです。
しかしこのアニメは、丁寧に丁寧に『ファミリー』の光の側面、縁もゆかりもない連中が血よりも濃い絆を育むさまを見せて、『どうにかこいつら、良い関係にならねぇかなぁ』と叶わぬ願いを思い浮かべさせます。

それはヴァネッティ兄弟の間にある情の描き方にしてもそうで、オニオンスープを巧く使った三者鼎談の場面などは、それが破綻する所引っくるめて非常に鮮烈でした。
暖かさから目を背けず希望のカケラを描いた上で、マフィアという職業、過去の業罪のままならさで淡い期待を叩き潰し、泥まみれに塗る。
その情と無残さの扱いの巧さが、脚本と演出両面で非常に上手く描かれていて、つくづく上手くて強いアニメだなぁと思います。


かくして『家族』を失い王の地位を手に入れたネロですが、同じイニシエーションをくぐり抜けたファンゴとは、『ルームメイト』でしかありません。
元々命の取り合いを厭わない商売仇であり、利害でしか繋がっていない間柄は、ファンゴの好戦的でねじの外れた人柄もあり、いつ破綻してもおかしくありません。
というか、ファンゴの制御不能な怪物性は意識して強調されているので、ただの気まぐれで全面戦争になってもおかしくない。
ここら辺のややこしい関係が、レモンがけピッツァという『不思議な食い物』を『』口はつけるが食べきることはない状況、酒というキーアイテムを飲まない態度でしっかり見せているのは、相変わらずの巧さですね。

ロナルド殺しも『フラテが発狂して殺し、実の兄が始末して忠誠を見せた』という絵に書き換えられたけども、わざわざ妹を愛の無い結婚に差し出して作った交渉窓口が潰れたのは事実。
ガラッシアがロウレスの街を丸ごと飲み込みたい欲望は、小さな町のチンケな殺し合いには一切関係なく存在しているわけで、状況は一切余談を許しません。
状況が片付いたと思ったら、新たな厄介事がどんどん顔を出す矢継ぎ早の姿勢が、ストーリーの熱を途切らせずすすめるコツなんだろうなあ。
状況を安定させないために『殺人者を隠蔽する』手法が多用されているのは、物語の発端であるアンジェロ一家皆殺しでも、このルールを適応してひっくり返すためかなぁ……死人を弄んだ報いがアヴィリオに帰ってくるな、そうなると。


というわけで、義理と人情秤にかけりゃ、重すぎる情が天秤をひっくり返して全てを血塗れにするお話でした。
どうにかならねぇかなぁと願いつつも、どうにもならねぇという理屈と絡み合った情をしっかり見せ、破滅のカタルシスを飲み込むしかない状況を生み出す。
大量の泥の中で輝く少しの光が、より濃厚な地獄を引き連れてくる劇的状況をうまく視聴者に食わせる話で、上手いし面白いし凄いしです。

これでロウレスはネロ=ファンゴ連合のタカ派で一致を見たわけですが、その繋がりは『ルームメイト』程度の危ういものだし、町ごと飲み込もうというガラッシアの巨大な顎は今だ健在。
何よりも、復讐をたぎらせる主人公が『家族』としてネロの懐に滑り込んだ以上、最大の地雷を抱え込んだも同然です。
社会的状況としても、爆発寸前の感情の濃さとしても一切の油断を許さない91Days
13×7という裏切りの数字が行き着く先はどこなのか、非常に楽しむです。

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第21話『吉良吉影は静かに暮らしたい その1』感想

明るく楽しいゆるふわ異能力学生バトルコメディも21話め、ついにラスボス降臨でございます。
これまでもチラホラ顔を見せていた杜王町最悪の殺人鬼、吉良吉影がその姿を表し、間抜けで迂闊で可愛げもあって、しかしそれ故におぞましい邪悪さを存分に発揮。
いつものようにバカガキどもがキャッキャする裏でとぼけた手首回収劇は無事終了……と思ったら、運命は交錯し楽しい『日常』が凶猛な牙で生け贄にかぶりついた……って言うところでTo be Continued。
吉良の持っている小市民的な生々しさをコメディの中で見せつつ、喉まで出かかった笑いを『死人の手』という異物で押しとどめてくる、奇っ怪な迫力のある回でした。

と言うわけで、これまでの凄みのある演出で細かく顔を見せていた『杜王町の失踪率が高い理由』『杉本鈴美の仇』吉良吉影が、コメディの主役を張る今回の展開。
ノリとしてはカツサンドだの幕の内弁当だの、身近なアイテムを印象的に使ったテンポの良いコメディであり、吉良もバカでマヌケで迂闊な部分をこれでもかと見せてくれます。
ジョジョらしいおかしみに満ちた展開なんだけども、いつもの様に笑おうとする度画面に映る白すぎる腕が、異物として笑いを押しとどめてくる作りになってました。
その異物感は、バカでマヌケな愛すべき小市民であると同時に(もしくは小市民を演じる?)、最悪の殺人鬼でもあることを強調してきます。

コメディーを担当してくれる楽しい人間だからと言って、女の子をぶっ殺して手首が腐るまで身近においていく所業を、やらないわけではない。
連続殺人という大罪を犯しつつ、ラップを突き破ったカツサンドを放って新しいのを買うセコい悪事も、それこそ1000円を中学生にねだるような日常的で人間的なズルもやる。
吉良吉影は同僚が早口で称していたような普通の人間として『日常』に溶け込みつつ、というか殺人という『非日常』を『日常』として謳歌しつつ生き延びている、どこにでもいる人間なわけです。


そういう人間が、一見それとはわからない偽装を施し、何食わぬ顔でカツサンドを買っている恐ろしさ、おぞましさ。
今回展開されている面白い、しかし笑えないコメディによって、吉良吉影という巨大な悪がどんな顔をしているのか、彼を不倶戴天の敵として設定している四部がどういうお話なのかが、よく見えたと思います。
吉良はそれなりにそつなく殺人をこなす知恵ものであり、しかし完璧に事件を隠蔽できる超天才という『非日常』的存在ではない。

セコいズルもするし、バカなミスもする吉良のコメディ性≒『日常』性は、息をするように『死人の手』が出てくる異常な『非日常』とも、殺す相手を利害で選ぶ計算高さとも、区別がないわけです。
しげちーを殺すか、殺さずやり過ごすかという判断はあくまで『日常』的な利害計算に則っているもので、サイコ殺人鬼の孤高な価値観とか、異質だが誇り高い異形の判断とか、『日常』から切り離された特殊なものではけしてない。
吉良にとって『殺す/殺さない』という判断は、『ラップが破れたカツサンドは買わない』というつまらないズルと同レベルのものだし、トンチキで面白い回収コメディの裏側には常に死体が転がっている。
そういう『日常』に癒着した『非日常』のおぞましさを、今回のドタバタした展開は巧く演出していました。

吉良を『非日常』に浸りきった異物として描いてしまえば、彼を倒して排除すれば杜王町≒『日常』に平和は戻り、殺人は起こらず、正義が世界を支配する素晴らしい世界がやってくる。
でも悪というものはひどくありふれたもので、いつ誰が被害者/加害者として足を踏み入れるかわからない身近なものです。
吉良は我々から遠く離れた殺人鬼的人格ではなく、自分大好きで、迂闊で、紳士ぶってはいるが最悪のサイコ野郎で、油断と人間味をみせはしても『殺し』を15年続けてきた手練でもある、凡庸な存在です。
『街』を舞台にした第4部は、そういう悪の凡庸さと連続性に正義は立ち向かえるのかということが、大きなテーマになっている気がします。

なので、吉良吉影の登場エピソードはコメディになる。
彼は笑いを切り離したシリアスで迫力のある大物ではなく、くだらなく面白い隣人として描かれ、『死体の手』さえなければ付き合いの悪い同僚として受け入れられる存在として描かれる。
しかし生者とは一線を画す色合いの『死体の手』は、吉良に笑いという共感をよせた視聴者に不意打ちで叩きつけられ、彼が持っている『非日常』の象徴として機能し続ける。
笑いとショックが渾然一体となった今回の視聴感は、そのまま吉良吉影という存在の複雑さ、彼を内包する杜王町の複雑さ、そこを舞台とする第4部の複雑さに、そのまま繋がっている気がするのです。


いわば『悪しきコメディ』として描かれる吉良の回収劇と並列して、今回はバカ高校生と重ちーの『良きコメディ』が展開します。
そこでは『死人の手』はなくて、まぁ先々週のような根性ドブゲロの銭ゲバをしたりもするけど、基本的には健全で微笑ましいボーイズライフが演じられている。
衝突もするけども基本的にはお互いを思いやっている友人関係は、楽しく輝かしく美しいものです。

しかしそれは、吉良が演じる死体の『悪しきコメディ』と隣り合わせであり、しかも『良きコメディ』の出演者は隣で演じられている物語に気付くことはない。
あまりにも広い『日常』の中に溶け込む(もしくは『死体の手』が既に『日常』である)吉良の犯罪は、時折危うく露出しかかるもののあくまで『悪しきコメディ』の内部で展開し、平和で幸せな『良きコメディ』と衝突はしない。
殺人鬼の世界と少年たちの世界は交わることなく、死人の数は積み上がり、『街』の『日常』は維持される。

とは行かないのが、ジョジョが『正義』の物語である理由でしょう。
スタンドという『非日常』を手に入れた少年たちはあるいは利己から、あるいは正義感からそれを使いこなし、普通人には踏み越えられない境界線を超えて、『非日常』の悪を正す権利を手に入れています。
吉良が『日常』と『非日常』を一体化させ殺人を続けているように、スタンド能力を一種のパスポートにして、少年たちは望むと望まざると『非日常』に踏み込んでしまう。

それが闇に潜む悪を正すチャンスであると同時に、あまりに危険な存在と退治する危機でもあるということは"キラー・クイーン"を発現した吉良から漂う『凄み』でよく分かります。
重ちーは別に犯罪捜査の結果吉良に行き着いたわけではなく、いつもの様に欲の皮の突っ張ったバカガキとして生きてたら、目の前に『死人の手』が転がってきた状況です。
吉良吉影はそういう形で『日常』に滑り込んでいるし、様々な被害者が彼に殺される前の状況も、同じような不意打ちだったのでしょう。

『悪しきコメディ』と『良きコメディ』の境界線はおそらく僕らが考えるより薄く、身勝手な邪悪は欲望のままにその境界線を超えてきます。
スタンドはその一線を越えさせるパスポートであると同時に、邪悪に立ち向かう力を与える武器でもあるわけで、これから展開するのはコメディの奥にあるシリアスな戦いになります。
それは正義が勝つとは限らない、危険で命がけのバトルであり、『良きコメディ』と『悪しきコメディ』、『日常』と『非日常』が接触した時には必ず飛び散る、血の色をした火花なのでしょう。


マヌケで楽しいコメディを二本並列して描くことで、吉良吉影が持っている『日常』性、そしてそこからはみ出る『非日常』性を強調する回でした。
『街』に溶け込んだ悪がどういう表情をしていて、どんな飯を食っているのかが、笑いとおぞましさの絶妙なブレンドでしっかり伝わってきて、なかなか良いキャラ紹介だったと思います。
親しみが持てる部分はちゃんとあるんだが、それにしたって(もしくはそれだからこそ)やってることが極悪すぎて拒絶するしかない、小市民系殺人鬼。
それが吉良吉影だッ!!! って感じですね。

2つのコメディはスタンド能力を媒についに衝突し、重ちーマジ大ピンチって感じで次回に引きましたが、さてこの戦いの結末どうなるのか。
いやまぁ、俺は原作読んでるんで知っているんですが、時間を使って落差を作ってくれたおかげで、結構新鮮な気持ちで来週の展開を待てます。
メディアが切り替わることで語り口が新たになり、作品の持っている魅力を新規に感じ直すことが出来る。
最も幸福な意味でのアニメ化の恩恵を、第4部アニメでは強く感じますね。
来週もどう魅せてくれるのか、待ちきれない心持ちです。

美男高校地球防衛部Love! Love!:第7話『愛と奇跡のクリスマス』感想

ゆるゆる進みつつも一番大事な星を探し求めるスターシーカー・ボーイズテイル、今週は聖夜の奇跡。
唐突なクリパが煙ちゃんから発令され、これまで直接接触の少なかった別府兄弟やら、孤独な悲しみを背負った赤鼻のトナカイやら、色んな奴らがぬくもりに引き寄せられる話でした。
別府兄弟が思いの外非リアで寂しがりボーイズだと解ったり、愛の戦士として『殴る』以上の解決法を見つけたり、特別な日に相応しいしっかりした骨組みのエピソード。
『知らないやつだから』『敵だから』『怪物だから』という理由で門戸を閉じず、自分たちから歩み寄っていく箱根兄弟のあまりの天使っぷりに、俺も見ていて幸せな気持ちになったよ……。

今回のお話は別府兄弟を防衛部に寄せることと、普段とは違った開放で敵・味方の対立構造を解体すること、2つの目的があるお話です。
この中心になっているのが煙ちゃん提案のクリパでして、普段はクールで現実的な彼も、遠く離れた仲間を思うナイーブさを隠しながら、『特別な日』を暖かく演出する。
暖色系の灯りが朗らかな雰囲気を作る中で、やってくるのは『敵』ではなく『仲間になれるかもしれない連中』であり、行なわれるのは『戦い』ではなく『パーティー』。
殴り合いもしないし、必殺技も打たない『特別』な展開の結果、これまで接触がほぼなかった別府兄弟と防衛部は一応顔見知り以上の関係になり、幼い妬み嫉みばかりが目立っていた兄弟は強羅あんちゃんの温もりを分けてもらって幸せになり、トナカイ怪人とは暴力一切なしの特例展開で別れるという、色んな『普段のルール』を破るお話になっていました。

別府兄弟が非常に幼い人格の持ち主だということはこれまでも描写されていましたが、強羅あんちゃんの誘いに乗っかって、『銭湯』という防衛部の領域に足を踏み入れた今回、その内面がより細かく見えてきました。
『サンタなんていない、クリスマスに奇跡なんて起きない』という回想セリフは、それを期待すればこそ生まれる防衛策であり、温もりを夢見つつ手に入らないナイーブさは、背だけでかくなっても一切変わっていないのでしょう。
そんな彼らが唯一温もりを信じられるのが強羅あんちゃんであり、とにかくあんちゃんが好きすぎるオーラ剥き出しで、プレゼント交換を待ち構えていました。
一体過去にどういう出会いがあったかはさておき、彼らにとってあんちゃんが『ヒーロー』であったこと、そして今も『ヒーロー』を信じる気持ちがあることは間違いがないようです。
なんだかんだ言いつつ、ちゃんと交換用のプレゼントという『真心』は持ってきているしな……手編みで。

あんちゃん個人を狙っている別府兄弟は防衛部には距離を撮り続けますが、有基を筆頭に防衛部の面々は彼らを拒絶することなく、しおりを配り、同じ食事を勧め、仲間として受け入れようとします。
不思議なビームや殴る蹴るを手段としては使いつつ、リアルな男子高校生らしいダルさに溢れつつ、なんだかんだ防衛部が『ヒーロー』で在り続けるのは、名も無き花を踏みつけられない愛と優しさがあるから。
『敵』であるはずの別府兄弟の冷たい態度を訝しみつつも、何度も歩み寄ろうと努力する防衛部の素の表情こそ、僕には凄く大事なものだと思えました。

あんちゃんの誘いを受けて、ダダチャが用意していたパーティーを拒絶して別府兄弟がやってきたのは、さり気ないですがかなり大きな描写だったように思います。
三角巾が良く似合うダダチャは『悪しき母親』として、何も知らないおバカな別府兄弟を操り、支配しています。
その象徴である食卓を、あんちゃん恋しさの欲の皮だとはいえ別府兄弟が自分の意志で拒絶したことは、『母』の束縛を排除し『子供』から一歩踏み出す可能性が、別府兄弟に残っていることを示しています。
結局二人は手袋という温もりだけを貰って、暗くて冷たい場所に帰って行ってしまったわけですが、彼らがそこから出てきて、兄弟だけで繋いだ手を世界に向けて広げていく未来を想像することは、十分出来ました。
……『悪しき母親』としてのダダチャと、『良き父親』としての強羅あんちゃんの綱引きなんだな、別府兄弟をめぐる現状は。

つーか自分たちの作戦がどういう結果もたらすかもわからないし、その収束もオカン任せだし、バカでガキで可愛いあの連中は早く素直になって、愛に溢れた風呂場で魂を洗われちまえばいいんだよ!!
やっぱねー、他人を道具としてしか見れない偏狭さばっか強調されてたから、彼らが優しくて寂しいロンリーボーイだってはっきり解った今回は、彼らを好きになれる良いエピソードだった。
寂しがっている子供を助けることこそ『ヒーロー』の本懐だって爾郎先輩も言っているわけで、今後の防衛部の活躍に期待が高まります。


んで、そんな別府兄弟に巻き込まれた形のトナカイ怪人とは、一切暴力を介在せず、対話と融和によって事態を解決しました。
人を殴るより人と笑い合うほうが素晴らしいのは当然ですが、盛り上がりと手軽さからたいてい暴力で解決されてしまうヒーロー事情は、なかなかそれを許してくれません。
ひるがえって、必死に働いても報われず、誰も愛してくれない寂しさを殴り飛ばすのではなく、抱きしめることで救ってしまった今回の展開、イレギュラーですが『ヒーロー』として凄く価値の有ることをやったと思います。

『ヒーローは暴力以外に問題解決手段を持ち得ないのか』『殴って殺してハイおしまいで良いのか』という疑問は、それこそTVヒーロー黎明期からいくども語り直されている問題です。
ウルトラマンなら"故郷は地球""怪獣墓場"あたりでメインテーマになっているし、月光仮面も『憎むな、殺すな、赦しましょう』だし、アンパンマンも飯食わして解決する問題は自分の審決を分け与えつつ対応してたりします。(ここらへんを今シビアに、ノスタルジックに語り直したのが"コンクリート・レボルティオ"かも)
そういう系譜の上で考えると、今回の特例措置は非常に『ヒーロー』の定義をよく踏まえた王道展開であり、強さと優しさを不可分なものとして描く文脈にしっかり則った話運びだったと思います。

見た目が醜いものでも、心は美しい人間と同じように、もしくはそれ以上に柔らかく傷ついていて、愛されることを待っている。
普段から愛々言っているこのアニメが、特に落ち度もなく、報われない環境で心を追い込まれてしまった青年の成れの果てにどう対応するかは、かなり大事なところだったと思います。
いつものようにぶん殴って終わっても、それはそれで綺麗に浄化されていたんでしょうが、今回選択されたのは『ちょっと可愛そうで殴れないから、殴らない』というクリスマス特例。
一見『ヒーロー物』のお約束をひねったように見えて、『ヒーローはなんのために戦うのか』という真実に一番近い答えをここで出してきたのは、俺凄く良かったと思います。
普段から共感能力の高い有基だけじゃなくて、クールでマイペースな他の防衛部員も優しい気持ちで矛を収めて、プレゼントを交換して一緒に楽しんで終わったところが、すげー優しくて好き。

今回も人間として正しすぎることをしっかりやったのは強羅のあんちゃんで、別府兄弟にそうしたように、心よく異形の客を迎え、同じ飲み物を差し出し、相手の辛さを拒絶せず受け入れる姿勢を見せています。
特別な能力など必要としないけど、何よりも難しく強く優しいこの姿勢を身近で見ている有基が、最適な回答をしっかり導き出しているのは、箱根兄弟の間にある好ましい影響が強く感じられ、凄く良かったです。
あんちゃん、美男子にもキモいトナカイにも一切差別せず、自分が用意できる最大限のものを差し出してるからな……あとひと知れないところで働き続けるって意味では、あんちゃんもトナカイと同じだから痛みがわかったってことかもしれん。
どっちにしてもあんちゃんは、今クールの"聖人(エル・サント)"勲章を"orange"の須和くんと争ってるね、俺の中で。

有基は別府兄弟にも、すげー積極的に話しかけてたからなぁ……優しいし強いよ、そういう態度ゆう。
しい奴の背中を見てきたから、有基は優しく正しい選択が出来るんだなぁ。
そういう意味では、おんなじものを見てきて歪んじゃってる別府兄弟も、トナカイ怪人と同じ救いが必要ってことかね。
あんちゃんに魂を救われた兄貴分として、有基の優しさが別府兄弟に届いて、真心でつながったブラザーに別府兄弟がなる話、マジ早く観てーなーマジよー。
……別府兄弟の手編みセーターという『真心』が、有基のところに届いてたのは今後を先取りした演出ってことかねぇ。

トナカイ怪人がねじ曲がるまでの過程に結構時間を使い、彼なりの努力や周囲の無理解、愛を求める必然性がしっかり描かれていたのも、防衛部が起こした奇跡の意味を高める上で、とても大事でした。
『外見は醜いが、こいつもお前と同じ、涙も流せば愛も欲しい人間だ! さぁ殴れるかヒーロー!!』という問いかけを目に見える形でやることで、『いえ、顔は関係ないし殴れません。シャンパン飲みます?』という『ヒーロー』のひねった答えが必然性のあるものとして立ち上がってくるわけで、中居さんの熱演も報われるというものだ。
人知れず報われない働きを続けるのは、匿名無名の『ヒーロー』たる防衛部も同じだしな。
あとわりかし良い話なのに、性夜ネタを振った後執拗に赤く屹立する鼻を画面真ん中に置き続けるのは、このアニメらしいと思った。
まぁ露骨すぎるほどに男根のメタファーでしたねアレ……高松監督ホント好きだなああ言うの。
おう、俺も好きだよ!!


そんなわけで、聖夜の優しさが起こした奇跡を柔らかい笑いとともに見せる、非常に良い話でした。
聖別された暴力で殴り倒すのではなく、防衛部も別府兄弟もトナカイ怪人も強羅あんちゃんも、みんなが真心を尽くした正しい行動をした結果奇跡が起こるという〆方は、本当に素晴らしかった。
俺こういう直球の良い話に、ほんとよえーな……素晴らしかったです。

シリーズ等しての攻略対象である別府兄弟の柔らかい地金も分かってきて、なんだか話が収まる場所がどこにあるのか、うっすら見えてきた感じです。
この後もダラダラとした男子高校生ライフで楽しませてもらいながら、スカシた顔のロンリエスト・ベイビーたちとどう心を通わせていくのか。
非常に楽しみです。