イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ディアスポラの知識人

周蕾、青土社。中国学、文化の政治学を用いた論文集。強力な本である。筆者は香港生まれ、女性、高インテリ層、カルフォルニア在住の中国学者という自分を強烈に意識しながら、オリエンタリズム的な「ネイティブ」の消費、「他者」の消費、自己の位置に無意識・無批判な西洋智と闘争する。
その言葉はあまりに強烈かつ適切なので、中国を終われて中国を語る中国人という自分自身の奇妙な位置と、それを取り巻くアメリカ大学界にも及ぶ。自らの足場すら掘り崩すような強力な言説はもちろん、深い見識と鋭い分析に支えられているのは言うまでもない。
これは闘争の本だ。そして、時代遅れな本だ。たった10年で中国と世界がここまで変わってしまった以上、それをいわないのは、この強力な本に対して不誠実だろう。そして、その欠落を自覚し、埋めていくだけの強靭さがこの本にはあると思う。傑作である。