イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

東と西の宇宙観 西洋編

荒川紘、紀伊国屋書店。西洋の宇宙観を通時的に追いかけた本。荒川先生は「龍の系譜」で知っていらいはずれがない安定した筆者なのですが、この本は素晴らしい。古代メソポタミアからユダヤ、ギリシア、ヘレニズム、初期キリスト教イスラム=ギリシア、近代、現代と続く宇宙観の歴史。
徹底した資料への当たりこみと、「宇宙観」という一本のテーマから時代背景、時代精神の構造、前時代の影響、社会学的分析などさまざまな道具を駆使しての分析がとにかく的確であり、まずそこに圧倒される。「プラトン宇宙論では世界創造主に「デミウルゴスという名前がついていた」というエピソードでは、「やはり初期グノーシスにおいてプラトン主義の影響は大なのだなぁ」と嘆息することしきりだった。
とにかく人間の考えた「宇宙」というものがいかに人間の社会を変化させ、変化した社会が新しい「宇宙」を生み出す、という円環構造をしっかり捉え、明確な論理とヴィジョンの元に提示してくる。名著である。姉妹編である東洋編も早く読まなければと思わされた。