イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

IRA 第四刷増補

鈴木良平彩流社。1900年代からのアイルランド武力闘争についての歴史書。第四刷のこの本は、97年の和平合意で終わっている。クロムウェルのアイルランド征服から始まる受難の歴史は、1900年代の民族自決の流れを受けて活性化し、武力闘争へと移る。
その先にあるのは、一時の平和と、果てのない闘争だ。狙撃で、爆弾テロで、デモ鎮圧で、内部闘争で、ハンスト戦略で、人は死ぬ。南アイルランド政府、シン=フェイン党、IRA、プロテスタント過激派、そして英国政府。さまざまなファクターがお互いの、時には自分達の喉を噛み千切りあうような闘争。プロテスタントによるカソリック住民への放火・略奪・殺害を、プロテスタントが80%を絞める政府警察当局があえて放置したという蛮行。
それは全て、過ぎ去ったことなのかもしれない。だが、起こったことなのだ。その事実を、この書物は淡々と伝える。筆者はアイルランド文学者であるが、IRAの日本での紹介書があまりにも発行されないために、自身で書くしかないと思い立ち、この書物を起こしたそうだ。途中で書かれるアイルランド紀行には正直に、「アイルランド人の無念は、自分にはわからない」と吐露されている。その限界を見据えてなお、書かなければならなかった題材なのだ。そして、そう思わされるだけの圧力と重さが、この本にはある。必読。