イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ダブルブリッド読み返し

歯医者の慰みに一巻に手を付けたら、止まらなくなって読んでしまった。最新刊行は二年前、もう二年も経ってしまったのだ。まぁシリーズが途中で止まったり終わらなかったりなんて事はいくらでもあることだ。そこは重要では、ない。
読み返して思うのは「場所」の問題だ。たとえばリーフにもファウストにも「場所」がない原田さんのように。中村恵理加は電撃文庫というレーベル「場所」にはあまりにもそぐわない物語に、四巻で舵を切ってしまったんだなぁということを再確認した。それは多分、最初からそうならざるを得なかった現象で、いうならば坂を転がり落ちる球のようなものなのだろう。もしくは、重力に惹かれて落下する小石か。
僕はダブルブリッドが好きだ。だらだらした日常が綺麗に忘れ去られ、どうにもならない地獄坂を転落していく五巻以降が特に好きだ。そんな中でも色々な大切なことを忘れないのがとてもいい。全てを真っ黒に塗ってしまえば楽なのに、中村恵理加は光を書くことを忘れることが出来ない。単色に染め上げることは出来ない。
不器用、なのだ、多分。その不器用さに僕は惹かれているのだろう。読み返してそう思う。セックスではなくセクシャリズムを、バイオレンスではなくパワーポリティクスを、おそらくは無自覚にただ己の書きたいこととして選択し、それゆえに器用に立ち回ることの出来ないこの作品が、僕は好きなのだ。便利でも、愉快でも、都合が良くもない、さまざまな強烈な色彩の入り混じる絵画はしかし、どこにもかける隙間がない。そんなことを思いながら、読了し終えて少し、哀しい気持ちになった。