イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

レタス・フライ

森博嗣講談社。もしくは「Let us Fly」 というわけで博嗣先生の短編集です。ギリシャ文字シリーズではさんざっぱら肩透かしと煮え湯を食らわされているのが正直なところですが、あいもかわらず短編は凄まじい切れです。静かな台詞と情景描写が生み出す透明な静謐。今回はそこに狂気を凍りつかせて閉じ込めた感じがありますね。
ちょっとこじゃれたショートショートに思える「私を失望させて」は小説全体への森博嗣の態度表明だし、「檻とプリズム」「皇帝の夢」「麗しき黒髪に種を」「砂の街」に透けて見える凍りついた狂気はとても綺麗で、それ故に狂気のグロテスクを的確に切り取ってきます。「コシジ君のこと」の柔らかなノスタルジアも好き。
まぁシリーズからスピンアウトした二作は僕敵にはちょっと微妙であります。特に「ラジオの似合う夜」は僕林大嫌いなので、しょっぱなにこれはきつかったです。「また博嗣に乗せられるのかぁ」みたいな。でも「刀乃津診療所の怪」はミステリとしても、シリーズ・スピンアウトとしてもとてもいい出来。まぁ僕が萌絵好きなのもあるんでしょうけどね。どちらにしても、やはり森博嗣は短編に冴えを見せてくれる感じです。