イマワノキワ

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現代アフリカ・クーデター全史

片山正人、叢文社。1950年からのアフリカにおけるクーデターの通時資料。さてはて、一大資料である。調べも調べたりアフリカのクーデター230件、ぎっしりと詰まっている。普通こういう資料の本は味気なく読み物として楽しめるものではないのが通例であるが、この本はなかなか楽しく読めた。
それを支えているのは、筆者のクーデターに関するしっかりとした捉え方だ。筆者はアフリカの「クーデターを、アフリカだけの問題としては見ない。植民地主義と冷戦という、西欧の侵食の影響を強く見、それを支えるだけの論拠をしっかりと引っ張ってくる。
民族主義と経済問題という、植民地時代に「ケーキを分けるように」と大地に線を引いたツケがすべて、民族自決の名の下に独立した国家にクーデターという形で噴出する。アフリカは非常に多くの民族が住む大陸であり、一つの国に六十の民族が住む、というのもざらではない。そして、それに対する政治的処方箋もないまま、縁故主義、利権腐敗、軍治主義がさらに状況を悪化させる。
その状況の最後の解決策として、クーデターが引き起こされる。それが「一つ」だ。筆者はクーデターをけして理想化もしないし、矮小視もしない。個人的野心で起こるクーデターも在れば、現状打破のために起こされるクーデターもある。クーデターで倒されるクーデター政権もあれば、民政に移行しある程度の発展を行う政権もある。「アフリカのクーデター」などという単一の事例はなく、230の顔を持ったクーデターが、そこにはある。
アフリカは遠い。距離的にもそうだし、貿易、政治、文化。あらゆる面で遠い場所だ。僕も、1980年は全アフリカ史の中で最もクーデターが多く、ある統計によれば四日に一度はクーデターが起こっていたことなど知らなかった。アフリカ全54カ国のうちクーデターを経験「していない」のは13パーセントの七カ国しかないことも知らなかった。そのことを教えてくれたのはこの本だ。国語の使い方に少々難があるが、丁寧に地道に、そしてコンパクトに事実が纏まっている。名著である。