イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

食卓の呟き

池波正太郎朝日文庫。待ち時間の慰みに歯医者で読んだ。思えば、小学四年生で親父の「散歩のとき何か食べたくなって」を盗み見て以来、エッセイといえば池波だった。このエッセイは未見だったので読んだりした。
やはり、いい。食事と映画の話がメインなわけだけども、とにかく言葉の使い方、文字の扱い方が丁寧で、それが読みやすさに繋がっている。物事を見る視点の確かさ、鋭さ。とてもいい。その経歴の最初を劇作家としてはじめた池波は、俳優のことを優(ルビ:かれ)という。その柔らかなセンス。何度見返しても素晴らしい。
そして、うっすらとたなびく死と老いの雲が、このエッセイにはある。静かに老境を見つめ、なお冴える彼の筆。1984に発行されたこの本は、1989年に文庫化され、1990年、池波は急性白血病で逝去する。そして2006年、僕はこの本を読んだのだ。