イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

秘密のファイル

春名幹男、共同通信社。上下巻に及ぶ戦前・戦後の情報機関工作史に関する本。サブタイトルは『CIAの対日工作』であるが、日本だけではなく、日本を基軸にしたアジア全体に関する広範な政治・軍事工作について述べており、非常に切れ味鋭く、深みのある本である。
まず、強力なルポの最大条件である『確実なニュースソース』を徹底していることがこの本の強さである。ニュースソースはまず何よりアメリカ国立公文書館と、米軍公文書。そして、現役のエージェント・政治家へのすさまじい切れ味のインタビューである。事態が事態だけに、匿名での証言もあるし、特秘扱いが解除されていない公文書に関してははっきり『不明である』と記述する誠実さも、ルポタージュとしての透明性を高めている。
十万枚近い公文書を徹底的に洗い、関係者へのコネクションを的確に利用し、ジャーナリストとしての信念に基づいて鋭いインタビューを繰り返す。興味本位のちょうちん記事でも、特定の政治利益に基づいたプロパガンダでもなく、確かな視座と精密な調査、そして何より知性あふれる分析がくみ上げた、まさにルポタージュ。
内容は戦時中の米軍工作から始まり、GHQ情報部と日米政治家の関係性、さまざまな資金の流れ、CIAの怜悧な情報工作などなど、思わず奥歯を噛み締める内容になっている。それは作られたものであはなく、丁寧に、そして的確に情報戦争の事実を追い求め、的確な筆で誠実に活写した結果である。名著。