イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

柳生雨月抄

荒山徹、新潮社。というわけでシェンツマンから借りた荒山先生の短編集。「十兵衛両断」でとんでもなく最悪にひどい柳生+朝鮮ファッカー&ハッカーとしての才能をまざまざと、これでもかというほど、げっぷが出るくらい見せ付けてくれた荒山先生でしたが、「十兵衛両断」のヒドさは荒山先生にとっては三段跳びのホップに程度に過ぎませんでした。
ステップ&ジャンプであるこの作品で飛び交う妄言と寝言と史実ファック。オスカルにアンドレにヤマタノオロチが大逆襲。もう確実にダメです。アウトです。そのくせ読んでしまう! 伝奇に必要な三本ぐらいねじと線を外した奇想を満載にし、隆先生や山田先生が培ってきた歴史伝奇必殺の武具、よくわからない参考文献を投擲してあるんだかないんだか判らない説得力を爆撃。その癖一応以上に小説としての圧力、読ませる力で押し込んでくるわけです。
主人公、柳生友景がこの作品の鍵です。確実に厨房神経をフル回転して考えた無敵ブリや、日本古来の概念兵器の悪用、そのくせ「まぁしょうがねぇか」と思わせる男ぶりと、荒山先生の作り出した地獄のクリーチャー。それが友景。本格的にひどい伝奇を、それの三倍ぐらいひどい主人公がすさまじい力業で押し通す、すさまじい小説芸を見せ付けている作品です。いやヒドイ。そして面白い。荒山先生はやっぱすごい。