イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

再読/マルドック・スクランブル

冲方丁ハヤカワ文庫JA。「ヴェロシティ」とのリンクに重点を置いて再読してみた。矛盾点(オクトーバ社の起源)や不明な点(プリンス)なども多々あったが、ボイルドとウフコックが袂をわかってからの一年で、いかにボイルドが空っぽになったかを再確認できた読書だった。「ヴェロシティ」のオチを知っていると、「ヴェロシティ」当時のボイルドから一年であそこまで空虚になる理由もある程度納得がいくつくりになっている。あの選択肢を選べば、(そしてとある登場人物が語っている法則性に従うのだとすれば)何もなくなってしまったボイルドは「スクランブル」のボイルドにしかなれないのだろう。
スクランブル」の時点では魅力的な悪役であった(逆に言えば、でしかなかった)ボイルドが、「ヴェロシティ」という彼の物語を得たことでグッと厚みを増して迫ってくる、そんな読書だった。「ヴェロシティ」に心を打たれた人ならば、もう一度「スクランブル」を読み直してみるといいのではないかな、と思った。