イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

餓狼伝 the Bound Volume2

夢枕獏双葉社。小説が読みたいタイミングで、ふと目に留まったので棚から抜いた。読んで感じたは、懐かしさ面白さだ。丁度長田が藤巻と組んで、文七と堤がやり、長田が北辰館トーナメントにずいずいと延びて、姫川と戦う。藤巻も姫川と戦う。そこらへんのおいしい話が一気にまとまった巻だったのも大きいかもしれない。
徹頭徹尾殴りっこ、極めっこしているような印象のあるこの小説だけれども、実は面白さはそこだけではないと思う。出てくる男達のどうにもたまらぬ涼しさというか、味の深さというか、粘っつこい戦いの間に挟まれる細やかな情の描写が、この小説の面白さのもう一端だ。肌の質感や肉の温かさの宿った男達の会話、触れ合いが、非常に心地よい。
この後少々地面から足が離れ、その隙に現実の格闘技界があれよあれよと加速して行ってしまうこの作品だが、この本に収録された4巻から7巻にかけての「小説が現実を飛び越えている感じ」はやはり凄い質量を持っている。それは登場人物たち一人ひとりの声や視線に張りがあること、現実を飛び越えながらもその実しっかりと地に足が着いていることと無縁ではない。延々人を殴ることしかしない人種というものを、すとんと隣においてゆく質量と説得力が、確かにこの小説にはあったのだ。面白く読んだ。