イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブラッドハーレーの馬車

沙村広明太田出版。ゴリゴリに偏向している漫画家サムラ先生の、ろくでもなーいミッドアメリカ暗黒絵巻。頭から尻尾まで、悪意とろくでもなさを鍋にかけて煮詰めたような展開で、それなりに腹が出来ているか腹をくくっている人種でないと色々ショックを受けるだろうなぁ、と思った。まぁサムラ先生の作品は全部ろくでもないので、そこらへんは納得済みで読むとは思うのですが。
とりあえず、漫画が巧い。絵はとてもきれいだし、コマの切り方とカメラの置き方に圧倒的なセンスと技術を感じる。コマ単位の情報量が多いくせに、ぐいぐいと読ませる。ここらへんは、サムラ神経というかなんと言うか、この人独特のコマの作り方が持ってるパワーだと思う。良くも悪くもあくが強い漫画なので、これぐらいコマに力が無いと読めないんじゃないかな、と。
そこらへんの、巧さを感じる漫画捌きで、細かく世界を囲い込みながら全八話できっちり終わる。サムラ先生は長編になるともうドンだけだよ、って感じでだれるわけで。それは多分、十巻以上続く漫画には、コマの力以外の物が必要だからだと思います。でも、八話一巻で終わるなら、コマの力と空気の作り方だけで引っ張れる。
こういう言い方をしてますが、中身の無い漫画、というわけではないです。何かのメッセージがあるのか、はたまたただ書きたかっただけなのかは分かりませんが、とにもかくにも煮凝った悪意がでろん、と漫画全体に横たわっていて、読み捨てるには苦すぎる漫画です。そういう漫画が存在していてもいいな、と僕は思うので、この漫画は面白かったです。巧さを分析する楽しみ、という意味も含めて。