イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

伊藤潤二の猫日記 よん&むー

伊藤潤二講談社。ホラー漫画家の雄、ジュンジ・イトーのエッセイ漫画。タイトルどおりの猫漫画で、犬派を自称する潤二が、嫁さんが持ってきた二匹の猫にコロッと転んで、あっという間に猫マニアにジョブチェンジする、という一話が非常にいい。文字通りの猫かわいがりっぷりであり、猫と暮らすと幸せだよね! という直線的かつパワフルな主張が垣間見える。猫ちゃんのキャラも立っていて、呪い顔の猫というなかなかひどいあだ名を貰っているよんと、美猫で甘えん坊のむーとの対比がいい。
伊藤潤二の奇想は漫画家全体を見渡してもなかなかのものだと思うが、ホラー以外のジャンル、例えばややギャグを混ぜたエッセイ漫画などでも丁寧な描写がじわじわと利いて来て、じっくり読ませる。もちろん、ホラーの文法まんま(嫁さんの目を真っ白に書くとか)の漫画技法も、ミスマッチを上手く煽っていてとても良い。
ホラーとギャグの二刀流は、多分楳図先生あたりからの伝統だと思うのだが、潤二も例に漏れずギャグが上手い。潤二漫画はなぜか異常に躍動感があるのだが、そのオーバーアクションを上手く生かして、テンポを作っている。日常のペーソスと、ホラーっぽい静けさ、そしてアクロバティックなギャグ。三種類の緩急を上手く織り交ぜて、読者を飽きさせない漫画作りは、エッセイ漫画のお手本とも言える巧さ。一巻でよくまとまっているところも、高評価である。