・ 新しい部分
今回は安定性と新規性のせめぎあいだったと思う。
ゲーマーの性としてルールが変わったら新しいことしたくなるもんで、移動なり強打なり、今回は新規な部分に挑戦した人が多かった。
新しいことはプルーフされていないので、ミスが多い。
擬似的にプルーフしてくれる講座とか、事前にプルーフ出来る模擬戦とかは無いので、現地で事故るという流れ。
とりあえず手前味噌になるけど、Aブロック第一試合と準々決勝第四試合は転倒戦術という、Ver15以前の有効メタにとどめを刺した試合だと思う。
自分も挙動を把握しきっていないのだが、横転の仕様変更により、待機で踏んで戻る動きを寝ている方は捕まえきれない。
蹴っていれば筋肉鎧も気絶判定もあるので、疲労点優位は取れなくなる。
相手のファンブルを待ち続けるのはなかなか不毛な試合だ。
アンジェラくらい耐久性に特化した仕上がりだとまた別なのだろうが、汎用性と両立させた転倒戦術は現状なかなか厳しい。
移動に関しては、準々決勝第一試合、準決勝第一試合のPIPさん連戦が非常に目立つ。
「背面対応とかダルいし、もう大振りでいいだろ」という声が聞こえてきそうな、旋回してKO振る動きだった。
目標値9はあまりいい数字ではないし、移動後はそこまで崩れた状態でもないので、ぶっちゃけ悪手なのだが。
準々決勝第一試合は距離1背面への意識も見えてくる試合で、距離1背面はステッピングコンボがない相手でも非大振りの攻撃を貰う位置。
(画像参照、オレンジがPCが占位可能なヘクス(攻撃可能なヘクスでもある)、緑色のエリアが攻撃可能なヘクス)
此処を取るなら、組むなり足折るなりして相手の戦闘能力を奪って取りたい場所である。
対応なく此処を取ると、先述の試合なり武神戦なりのように、移動不可のところを背面に回りこまれて詰められる。
武神戦は、「Ver15以前の灰さん」と「最新の灰さん」の比べ合いであり、そういう意味で勝つべくしてミカエルが勝った試合でもある。
・ 決勝解説
んで、多分現状の武神の最先端の試合は決勝。
これも手前味噌だけど。
かなヱは柔法の必要CPが下がったこと、耐久型が強打と横転の仕様変更で締め出されること、その状況では柔法は決定力があることなどを理由に作られたキャラ。
「天神橋システムを積んだ柔法」VS「アンチ天神橋要素を積んだ天神橋システム」の試合だといえる。
かなヱの初期待機は、移動・攻撃両方にアドをとれて、フェイント単発はそんなに痛手ではない選択肢。
知力12以下は誘ってこないという読みで、決め打ち気味に使う。
誘われた場合も、剛法相手なら距離1に詰める=移動してからじゃないと誘えないので、回り込みながら組めばいい。
とか思ってたんだけど、準々決勝第三試合で距離3から誘われてんだよな……主技能柔道、型、礼儀作法なんだけどな……。
これに対してミカエルは待機返しを選択。
疲労点というリソースは、判定なしで削れていくのでデジタルに疲労点の多少を読んで比べ合うと事故なく勝てる(負ける)要素。
待機に待機返しは、疲労店で勝っている間は圧倒的に正解。
更に対応してかなヱが誘い。
移動しながら誘わないのは、柔法ということもあるし待機移動をトリガーしたくないというのもある。
通らないが待機が終わるので、ミカエルは全力移動で背面取り。
「待機している相手の背面をとるな」は今や鉄則で、背面をとっても待機行動全力移動で有利な位置を取り返し、続く行動で非大振り攻撃を背面から打たれるから。
行動順の手損が激しく、ほぼ負けが確定する手順なのでミカエルは待機が終わってから動いている。
背面距離2を取られるものの、るーさんが解説している通りのルーチンでコンビ発動ルートに入って背面取って組む。
自分のミスは、移動に伴うベクトルの固定で追撃の組み技が出来なかったこと。
ここで投げるなり極めるなりできていれば、数字を比べる状態になっていたので有利にことが進む。
なのだが、低下力の膝蹴りなんぞ打っても状況は固まらず、相手にターンが渡る。
「背面後は基本組んでくる」というメタで、13CP払い主技能相撲20を選択したコンボが発動。
「背面を取ってこない相手は天神橋システムで取れる。取ってくる相手は振りほどきコンボで取れる」というメタが綺麗に決まり、振りほどいて背面取り返して組む。
背面腕組なので飛び関節も四方投げも使えず、打撃暴れも不可なので眼のない振りほどきを強要されてあとは詰められるだけ、という試合。
この試合を見ると「背面取られたら負け」という段階、「背面を取るだけ」という段階、「背面取られたら背面取り返して手を出す」という段階、「背面取って背面取替されたら振りほどいて背面取り返して手を出す」という段階に、それぞれPLの戦術意識が位置しているのが判る。
移動は判定を伴わないので、それぞれの段階のキャラは後の段階のキャラに、基本的に勝てない。
運の絡む要素が少なくなり、キャラではなくPLの戦術理解のレベルがそのままPL対PL勝率に直結し始めるので、直接PLを殴りに行く形になって負けてる方はモチベガン下がりという構図になってる。
移動判んないなら、半端に対応するより、イニシアティブに全振りして「攻撃性能と防御性能を比べる」構図を相手に押し付ける方が勝率高いまである。
つまり、じゃんけんゲーにしていくという選択肢である。(赤目くんがリノンちゃんで狙った構造ですね)
「背面取られたら背面取り返して手を出す」という段階を維持するためには、どうしても構えコンが必要で、これを使うためのハードルを下げる意味でかなヱの技サーフェスは考えられている。
そこは上手く言ったとおもう多分、勝ったし。
その段階を灰さんの13CP払った対応で綺麗に切り落とされたんだが、組まない移動屋、例えばウェンイーとかはこの13CPを空費させられる。
結局、武神は「いかに相手の払ったCPを無駄に出来るか」で勝負が極まるとおもう。
MtGで言えば「アグロ全盛のメタとしてノンクリーチャーロックを出して、アグロ対策のクリーチャー対策カードを腐らせる」動きに似ている。
そういう意味では、運と同じくらいメタ読みが大事だとおもう。
・ ストーリーの話
決勝に残った二人は、綺麗に自分の話を盛り上げられたとおもう。
自分はどうしても試合の外で話が回る状況に乗りきれなくて、試合の中で話を回したくタイプのようで、キャラは全部試合の中で解消されるべき凹みを内包して出している。
この凹みを試合の中で埋めて凸らせることでドラマを捏造しているわけだけど、これは勝たないと出来ない。
まれに非常に良い負け方をしてできることもあるが、これは試合運が極端に絡むため、積極的に狙っていくものでもない。
勝っても負けても収穫があるようにキャラを設計して、試合の結果でプラスマイナスを得ていく流れを重要視しているんだとおもう。
自分はどうしても、完成したキャラを出して試合外でキャラを回転させていく形式が納得行かないんだなぁ、と今回痛感した。
組み合わせ抽選と試合展開、両面において武神は運ゲーなので外側に置きたいのは理解できるし、現状それが主流。
なのだが、どうしても乗りきれない。
闘う以上その結果を重視したいし、それを上手く使いたいと考えてしまう。
久延彦は初戦でクリスチアーノを引けたのがでかくて、あそこで「異能者格闘技を極める」というパーソナルクエストが明確になった。
実力者に二連勝して迎えた自キャラ戦、強キャラ力の高いかなヱを壁にして、弱さを前に出してそれを解消する動きでパーソナルクエストを解消。
あいつは武道家なので、悟後の修行が大事。
なのでダラダラ出続けたい気持ちもあるんだが、たしかに綺麗に終わってはいるんだよなぁ。
スペックとしては掌握受け封じからのKOパンチや、対転倒戦術が上手く動いていたとおもう。
掌握は隙も少なく、カウンターを受けづらい切り込み手段だと思っていて、誘い負けたらこれでいいかな、とか思ってた。
戦術に記載しないでそこで負けたのは、自分が負けているので反省材料だ。
かなヱは「自分なりの強キャラ」というキャラ要素を、上手く貫けたとおもう。
強キャラには強キャラの仕事があって、自分の強さで相手の弱さを強さに変えて物語を完成させたり、負けないことで場の価値を高めたりすることだとおもう。
いきなり直弟子との腕比べになり、アッシュとはコネの壁当てで話を回した。
決勝上がってサリエル戦。
打ち合わせはないが、今度は相手の強キャラ力を壁に使わせてもらって、セコンドのうづきの成長に使わせてもらう。
相手を立てた上で「強い相手に勝ったので(負けたけど善戦したので)俺は偉い」という、姑息な動きである。
取れるタイミングで話を回していかないと、武神の試合だけでキャラを成長させるのは難しい。
うづきは驚き役としても、強キャラの動きを脇で見て成長する役としても、結構面白い動きをしてくれた感じ。
かなヱ自身は大会参加前と何も変わらないんだが、場のワッショイは上手く言ったとおもう。
強キャラの仕事のもう一つは、場の価値観を高めることだと思っている。
強いという記号を持っている奴が場を称揚しないで、だれが空気を持ち上げるのかという。