イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

乱歩奇譚:第6話『地獄風景』感想

法と正義が機能しないディストピアの探偵絵巻、第六回は限定状況コメディ。
探偵事務所の外に一歩も出ることなく、人一人死ぬこともない緩めの展開でした。
後半に向けて状況を整理した……と言いたい所なんだけど、三・四・五話(通称『ワタヌキ
編』)に絡んだ描写はED後のCパートだけなんで、なんとも言えない。

猫と影男と爆弾と赤ん坊に関しては、爆弾のカウントダウンで切迫感を作りつつ、全員がボ
ケ続けるほのぼのとした笑い。
ここら辺の間の感覚はやっぱルックが良くて、岸監督の十八番だなぁと感じる。
いつもは常識人やってるハシバもホモを忘れてボケていたので、一種特殊な時間が流れてい
た。
好きな空気だ。

そういうコメディの中に設定の再確認を入れ込んでいて、コバヤシ少年の認識異常とか、ア
ケチと影男の腐れ縁とか、獄中から携帯電話で連絡可能な黒蜥蜴の影響力とか。
笑いで設定を流し込ます取りまとめの手腕は、やっぱり流石。
コバヤシが猫に関しては情を持ってるとか、アウトサイダーを気取りつつもなんだかんだで
情を切り離せないアケチとか、新しい描写もさらっと埋め込んでいた。
即座に番号を当て、爆弾を外部で処理する探偵と助手の機転といい、似たもの二人なんだな
彼ら。


話の殆どを使って空気を抜きつつ、ニ十面相事件の増大とナカムラ刑事の動揺という、今後
の展開に影響な話を最後にやっていた。
A/Bパートで展開したコメディが一・ニ話の『江戸川乱歩の現代風キッチュポップリメイク
』の延長線上にあるのに対し、現実的悪徳が増大し妄想を食いつぶしていくCパートは『ワ
タヌキ編』の延長線上にある。
今回探偵事務所の愉快な面々がカガミ刑事の接見に来なかったように、現時点で二つのライ
ンは交わっていない。

ワタヌキが代表していた陰惨で夢のない正義の不在と、二十面相という正義の捏造の対立に
、猟奇を楽しみつまらない現実を否定する乱歩的なメンバーは関わらないままだ。
この作品において現在、乱歩と反乱歩はねじれの位置にある。
これが交錯、もしくは並列した時に、テーマ全体が渦を巻き始めると思うのだが……まぁ今
回はそうではなかった。

大体半分の話数が終わったが、乖離した二つの線はいつ、どのように交わるのか。
もしくは交わらないのか。
今回見せたぱっと見のルックが良くてセンスの良いコメディの奥に、(コメディとしての出
来の良さ事態を一種の煙幕として)現状の整理と今後の提示があったように僕は読んだのだ
けれども、それが当たっているのか否か。
それは次回のお話次第だ。
乱歩と反乱歩をねじれの位置に置いたままでは、没後50年を担う批評としては弱いと思うが
、さてはて。