イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

コメット・ルシファー:第11話『堕ちた天使』感想

気がつけば冒険の旅も終わりらしいアニメ、ヒロインが攫われてクライマックス開始であります。
さんざん気を持たせた天文台爺さんはフェリアと会話にならない会話して新用語を垂れ流しにした上に死ぬし、ラスボスっ面で出てきた黒いガーディアン=秘書子は新用語垂れ流しにして月落とすし、もう残り一話だって言ってんだろマジ!
最終決戦前の「フェリアは絶対助けだす!!(俺じゃなくモウラが!!)」は、ソウゴというキャラクターの全てを表現した見事なヒキだったと思います。

先週『クライマックス前なので、取り敢えずお話の総決算ぽい感じで要素をまとめよう』という狙いでシーンを作って全部滑ったように、敵の本拠地に乗り込み、敵の厄介な装置で変身不能に陥り、それをどうにかするために頼れる仲間と別行動をし、かつて敵対したガスとミツバチさんが『ここは俺に任せて先にいけ!』とやり、黒幕が仮面を脱ぎ捨ててファイナルバトルという今週の要素、全てがしっくり来ません。
先週ドモンの死に大ショックを受けた辺りでイヤーな予感がしたんですが、やっぱり三馬鹿は味方になる展開か……ドモン好き過ぎ病患者は百歩譲って納得するとして、変態とキチショタが味方になるロジックがさっぱり読めねぇが、このアニメにおいては可愛いもんだこんくらいの理屈の通らなさは。
ミツバチさんは事ここに及んで食い物を粗末にした秘密兵器でワンマンアーミーしており、食事描写の不愉快さは狙ってやってた(と受け取るしか無い配慮の無さ)んだなぁと納得したりした。

フェリアを手に入れて、ようやく隠してきたこと喋るお膳立てが整った展望台ジジイは絵に描いたような『崇高な目的に目が眩んで、マトモな人間性と知性を溝に投げ捨てた悪役』として寝言を垂れ流した据え、一体何が起こっていて何をどうしたかったのか解説する前に刺されて死んだ。
もうお前しかこの話の背景に何があったのか、納得させてくれる可能性を背負うキャラはいなかったのに……結局フェリアが人間の心を手に入れると具体的にどういう不具合が起き、それを回避するためにジジイはどういう気持で計画を進めていたのか、さっぱり分からん。
せっかくフェリアに人間性を感じてんだから、フェリアの言ってることに少しずつ乗っかって自分を変えていくことでキャラは立つし、フェリアがただの無力な囚われのヒロインではなく人に影響を及ぼせる人物なのだと見せることも出来たと思うが、そういうことはなし、フェリアとの対話の中でジジイの背負っているものが見えたりもしない。。
ジジイの背景が分からないと『フェリアを助ける』という主人公≒物語の大目的が天秤に乗っける対価も分からんわけで、敵役の仕事ホント果さないままそれっぽい雰囲気だけだして死んだなジジイ。

そんなジジイの代わりをしてくれるのが秘書子なんだろうが、ジジイの寝言力を引き継いで専門用語で喋るので、相変わらず目的と目指す結果がよく分からねぇ。
多分ジジイとソウゴ母が研究してた新エネルギーのコアになるのがフェリアで、二人の計画を唆していなくなってしまったマスターの代わりをさせようというのが、黒いガーディアンの目的なのだろう。
こう言う推測が『面白いなぁこのアニメ、だからちょっと判んなかったところ色々考えてみよう!』という正のモチベーションではなく『わけわからないなぁこのアニメ、少しでもモヤモヤを削るために現状の材料から言いたいことを推測しておくか……』という負のモチベーションから生まれる辺り、すげーコメルシだと思う。


敵サイドに負けずグダグダしてるのが主役側であり、顔が見えないのを幸いヘリをぼっこぼっこ爆発させるロマンとソウゴに頭痛がした。
お話の都合で創作物内部の命の値段は変化するものだとは思うが、それにしたってもうちょっと配慮というものを少しは感じさせて欲しい。
あんだけガーディアンを苦戦させてた軍用バイペダルがパン爆弾で軽やかに吹っ飛んだり、面白愉快マシンだったはずのロマンの機体が善戦できていたりで、生死のリアリティラインは今回完全に吹っ飛んだとは思うけどさ。

急にスパイダーウーマンになったモウラだが、"甲竜伝説ヴィルガスト"にゲストで出れそうなイカしたデザインは正直可愛くなく、女の子になった理由もアクションシーンの都合(+画面に女の子が少なくなるので彩り)以外感じられないのは良くない。
自分は岩石イモムシと主人公が有機・無機の境を超えて分かり合っていく部分だけは、この話でもまぁまぁ良い部分だと思っていたので、分かりやすく共感できる人間の形に変化してしまったのは、本当にガッカリである。
後まぁ、単純に可愛くない。

ソウゴが吠えたり落ちたり鉄パイプでカァンカァンするだけで、主人公力の不足した行動しか取れないのはこの世界のルールなのでまぁしょうがねぇ。
秘書子とモウラ子のスタイリッシュアクションに割って入るくらいのことはして欲しかったが、石に興味があるだけの普通の14歳だもんなキミは……。
ロマンが後半体を張り他人に共感することで存在意義を高めた動きを見ていると、出来ないなら出来無いなりに、やれることはたくさんあった気もするが多分素人の気のせいだ。
よく吠えていたけども、キャラクターの心拍数と血圧が上がりさえすれば視聴者の気持ちも上向きになるという傾向は、おそらく創作物には存在しないのだ。
そういう狙いを効果的に果たしたければ、色々抑えるべき事柄がたくさんあって、アクションと興奮の連動というのはそれを足場にして効いてくるテクニックなのだろう。

シリーズ後半顕著になった良くない意味でのコメルシらしさがたっぷり詰まったラス一個前でした。
お話の中のロジックは繋がってないし、共感するための足場はないし、必要な要素が満たされないまま話はドンドン進むし、当惑は収まるどころか加速してます。
来週最終回みたいですけど、どういうふうに収めたことにするのか、気になるやら怖いやら。
次回を待つとします。