イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第77話『対決! ウィンターグランプリ』感想

新年あけましておめでとう! プリパラは今後の展開のため、メインテーマにガッツリカウンターを当て、凡人たちのささやかな努力と幸せを全開でぶっ飛ばしにかかるよ! という2016開幕戦。
いやー、本当にひびきが話の真ん中に来てからこっち、『プリパラがこれまで大切にしてきたこと』『プリパラって一体何なのか』という疑問を徹底的に掘り下げに来ていて、見ていて面白い。
努力チームの決死な姿を健気に描けばこそ、それを軽やかに乗り越えていく天才チームの『理』がしっかり強調され、構図がよく見える話でした。

今回天才チームと努力チームを対比することで見えてきたのは、悪役ひびきの欠点……ではなく、彼女の理想が持っているポジティブな側面だったと思います。
凡人たちがこれまでのように泥臭く努力を積み上げる中、『実績より感性』という独特の視点で別角度からの努力を足場に、才能ゆえのアドリブ重視で舞台を仕上げるひびきのプロデュースは、けして間違いではない。
シオンとそふぃが凡人チームにいては見れなかった景色を、アクティングの後にちゃんと見ていることから考えても、ひびきの才能主義には一分の『理』、みれぃやらぁらが大事にしている立場からはけして辿り着けない『何か』をちゃんと秘めているわけです。

方向性はさておき、みれいもひびきもより良いステージのための努力はしているし、地道な努力が持つ親しみやすさは、圧倒的な才能が生み出す高みに追いつけないという冷厳な事実もある。
今回2つのチームを切り取るカメラは、とても公正で冷静だったと思います。
みれいに導かれて健気に努力を積み上げる女の子たちも、ひびき主導で優雅に過ごす天才チームも、どちらも結構和やかに、楽しそうに描かれている。
このアニメがプリパラという『遊び』について語っている以上『楽しそう』というのはとても大事だし、それを主役である努力チームだけではなく、敵役になる天才チームからも感じ取れるよう描いていたのは、良い見せ方だったと思います。
プリパラ世界に閉じ込められるているファルルに、映画を見せてあげるシーンの暖かみと切なさは流石だ。

ひびきはとても高慢、かつ排他的で嫌なやつなわけですが、それでも彼女が代表する才能主義・競技主義にはちゃんとロジックがあって、10割全部否定されるべき『悪』というわけではない。
この見せ方は単純な二分法で物語を組み上げるのではなく、敵対している紫京院ひびきにもしっかりポジティブな側面を与え、『みんなトモダチ、みんなアイドル』というメインテーマに批評的な光を当てることを可能にしています。
アイドルランクがあり、いいねの数で勝敗が決まる以上、ひびきが重視する競技性というのはプリパラの内部に埋め込まれているし、それを否定することはプリパラ自体を否定することにも繋がる。
メインテーマをまっすぐに捉えるだけでは辿り着けない、もう一歩深い理解へ踏み込むためには、今回の敗北は重要かつ必要だとおもうわけです。


と同時に、ひびきが理想とする世界の危うさも丁寧に描写されていて、少数の才能ある『演じるもの』と大多数の『見るもの』たる凡人に分類されてしまう世界は、プリパラの先細りを強く予感させます。
プリパラの集合意識体であるファルルを陣営に引きこむことで、この危険性が具体的なダメージとして描写されやすくなっているのは、うまい作りですね。
ひびきが支配する世界の具体的な危うさは次回以降描写されますが、それが完璧ではないということ、危険性を秘めているということは、今回の描写からもじわりと感じ取ることが出来ます。

努力を信じてみんなで頑張ってきたみれいと後輩たちのステージが、2D作画で描写された瞬間の『やっぱダメか……』感はなかなかの重たさがありましたが、僕がそう感じるということは、彼女たちの行動の背骨になってきたプリパライズム、『みんなトモダチ、みんなアイドル』という理想が、やっぱり魅力的に見えていたということです。
天才チームの勝利によってこの価値観が(一時的に)否定されたことにショックを受けているのならば、やっぱりそれは追求して構わない、追求するべき輝く理想なのだと思います。
ただそこには、才能の有無によるパフォーマンスの差が確かにあるし、それを前提とした競技性もあるし、それを優先しても生まれてくる繋がりみたいなものもある。
今回勝敗という形で明確になった、2つの価値観の間の溝。
これを広げたり埋めたりしていくことが、2年目第4クールの重要な要素になるということを、今回の公平な話は見せてくれたと思います。

競技性重視の立場を取ればこそ、辿り着けるもの。
遊戯性を大事にすることで、手に入れられるもの。
これは『プリパラ』という遊び・競技・システムの中でおそらくは相反するものではなく、相補しあうものなのであり、今後はこの溝をキャラクターたちが理解しつつ、いかに架け橋を作っていくのかというすり合わせの物語になっていくんじゃないかなぁと、僕は期待しています。
今回ひびきの世界に向けられた肯定的な目にはそういう意図が感じられるし、なにより一つの価値観を否定するより、両立し止揚したほうが面白いでしょう、お話として。


才能のひびきと努力のみれいという対立以外にも、あじみ先生がスパっと一時退場したり、スタイリッシュタフガイがただのガイになってたりしました。
危険物過ぎて今後の展開には邪魔だから端に寄せられたのか、はたまた逆転の秘策のためにパリに引っ込んだのか、あじみ先生の扱いには不透明なものが残りますが、まぁぶっちゃけ扱いに困ってた感じはあったしね、一時切り離しはうまい手だ……あまりにも思い切りが良すぎる気もするが、まぁこのアニメプリパラだしな。
パルプスで転地療法中のふわり共々、美味しいタイミングで再登場して欲しいものです。

メガ兄はシステムの範疇を超えた苦悩をにじませつつ、アドミン権限を響に譲ってましたけども、これも今後の展開で生きてくる悩みだといいなぁと思います。
メガ兄が管理者の側からプリパラの意味に悩んでくれると、アイドルたちの悩みに呼応して世界が広がって、お話が大胆に転がることが出来るわけで。
あとSF描写として、アイドルたちの活動に触れて心の襞を豊かにし、システムを飛び越えた判断をはじめたメガ兄周りの展開は、スゲー面白い。
ファルルの時といい、プリパラのSFテイストは女児向けに適切にアレンジされつつ、かなりコアな部分を貫いていると思うのよね。

というわけで、才能が努力を凌駕した……という単純な話ではなく、角度の違う2つのプロデュースが、別の結末にたどり着いたお話でした。
ひびきのみれい追い込み力は相当なものであり、ただ物語としてみるとかなり美味しい圧力だとは思いますが、キャラクターとして考えると可哀想なので早めにリカバーしてあげて欲しい。
でも今週は久々にらぁらがみれい好き過ぎたから、思ったよりはダメージ少ない……いや多い……どっちなんだろうか。
一つ言えるのは委員長は小学生好き過ぎだし、それは素晴らしいってことです。
響が実権を握ったプリパラにどんな革命が吹き荒れ、何が置き去りにされるのか。
来週も楽しみですね。