イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ:第1話『ON YOUR MARK 運命のはじまり』感想

冬アニメ新番組トップバッターは疾走感溢れる『陸Free!』……とか言われてるけど、座組その他諸々ひっくるめて『男の子版ハナヤマタ』だと思うアニメ。
いしづか監督と大野色彩設定のコンビらしい、レイアウトと色彩にセンスのある絵が気持ち良い、爽快な出だしでした。
取り敢えず部活メンバーの横顔と、ストライドという競技の気持ちよさをざっくり飲み込ませるアクティブなスタートは、勢いがあって良いですね。
……ハナといい、いしづか監督はパルクールやる子と前世で因縁でもあったのかしら。

まず目を引くのは、クリアーでパキッとしたカラーリング。
濁りのない色使いはちょっと人工的な空気を感じさせるんですが、空間を走り回るアニメだけあって奥行きのある使い方をしていて、なかなか独特の風情が生まれています。
青春という時間的にも、ストライドという競技的にも走り続けることになるアニメだと思うのですが、いい意味で汗臭さを排除した色合いと合わせてくる見せ方は、非常に独特で面白い。

いしづか監督は色とレイアウトを凄く意識的に使いこなし、心理的・対人関係的な間合いを絵で表現するのが巧い映像作家だと思います。
"ハナヤマタ"でも冴えていた印象表現は今回もキレていて、体育館から主人公が出てストライドに出会うシーンの『運命に出会う』感じ満載のライティングや、横からズバッと切り取るレイアウトは、絵の情報量と情緒をみっしり詰めた、作家性のある絵面に仕上がっていました。
こういうパキッと決まる絵があることで、キャラクターたちがストライドに青春を賭ける熱が他人事ではなく、視聴者の胸にぐっとせり上がってくるパワーが宿ってくるんじゃないか。
そんな期待がパンプしてくるのは、すっごく良いと思います。

ストライドという架空競技を、どう気持よく感じてもらうか』というのが今回最も大事なポイントだったと思うのですが、立体的な動きの気持ちよさ、ポーズやスロモを活用した時間的メリハリが巧く効いて、狙いはバッチリ達成されていたように感じます。
暖かで穏やかな学園生活の合間に挟まれる疾走はとても気持ちよさそうで、キャラクターがストライドに抱いている情熱を声高に説明することなく、自然と視聴者をノセる巧さがあった。
パルクールというモチーフは一種ハプニング芸術的な側面、社会的な了承に背中を向けるアウトローな感覚があると思うのですが、『一種の祭り』『ストライド部復活に湧き上がる学園生』という要素をさり気なく見せることで、元ネタが持っている危うい空気をうまく排除し、『僕らの世界とは少し違うけど、なんだか面白そうなルール』を飲み込ませている。
ここら辺の空気の作り方は、1話ラストで学園艦を見せてしまうことで一気に世界を飲ませたガルパンと似ているのかもしれません……戦車道ならぬストライ道ってことやな。


色合い的には汗臭さ、泥臭さと無縁に見えるわけですが、お話しの基本的な構図はとってもオーソドックスな部活リベンジもの。
人数がいなくて廃部寸前のストライド部という入れ物に、むっつりストイック、面倒見よさ気なクセモノ、部外者風のイイヤツ、燻ってるように見えてアツい先輩と、なかなか面白いメンバーがつめ込まれています。
今回は各員の事情に踏み込むよりも、まず世界の空気、競技の空気、部室と学校の空気を感じさせること最優先で展開していましたが、それでも『なんだか面白いことが起こりそうだ!』という期待感が生まれてくる、良いキャラ配置だと思います。

ゲーム版主役のざーさん声を横にどかして主人公に座ったヤンチャボーヤ・八神くんもなかなか面白いキャラで、散々『どんなスポーツでもやる!』と強調しておきながら、メインテーマであるストライドだけには及び腰な元気青年。
部活巡りのシーンを見ているうちに、球技が苦手な彼の天分が疾走すること=ストライドにあることが自然と飲み込めてきて、いい見せ方だった気がする。
何やら兄貴と因縁があってストライドに二の足踏んでいるようですが、部活に出てこない三年といい、年上世代とぶつかり合って地金が出てくると、更に面白くなりそうな感じですね。

他のキャラもみなストライドという競技に愛情と熱意を持っていて、それが第1話の段階でしっかり見えてくるのは、期待と信頼が深まって良い。
やっぱメインテーマに関しては、プラスにしろマイナスにしろ強い感情を抱いていて欲しいものだし、それが視聴者にぐっと伝わってくると尚良い。
後ろ向きなこと言っていた支倉先輩がエンジンかかる所とか、色々愚痴りつつもストライド部に積極的に協力してくれる将棋メガネとか、ストライド・ボーイズたちはとても前向きで熱心なのが見て取れ、応援したくなります。
『オッス、凸凹問題児のつなぎ役やります』みたいな顔してる小日向くんが、実際の競技ではトリッキーな動きをする意外性とかも、とても良かったなぁ。

自分は走らない桜井さんにもリレーショナーという役割がある所とか、パルクールにはない団体競技としての要の部分を任せていて、なかなか面白い。
個性豊かなボーイズを繋いでいく物分りの良いサポーターになるのか、はたまたアクの強い走らないランナーとしての個性を見せるのかは今後次第ですが、男所帯の中で巧く存在感を出して欲しいものです。
現役部隊は結構物分かり良さそうだけど、年上世代が面倒くさそうなオーラ出てるからなぁ……つなぎ役でもいろいろ試練と見せ場がありそうだけど、そこら辺はお話しの組み立て次第ですね。


というわけで、競技と競技者の横顔をアクションの中で見せる、疾走感のある第一話でした。
あんま説明ゼリフはなくても大体の雰囲気、お話しの構図、競技の気配が感じ取れるのは、やっぱり画面内部の情緒的情報量を上げてくる、独特の演出論理が機能しているからだと思います。
走るアニメなので、キャラクターが走っている世界の空気をまず気持ちよく見せるっていうスタートにしたのは、凄く良かったです。

結構な速度で走りつつも、お話のタネがどういう感じで転がっているのか、それを育てていくキャラクターがどんな奴なのか、ぼんやりながら見えてくるのも技アリと感じました。
何よりも、ストライドという架空競技を楽しそうに見せる熱意、ストライドを駆け抜けていく少年たちの話をやるぞ! という決意がちゃんと感じ取れたのが、本当に素晴らしかった。
これから先彼らがどこに駆けていくかはまだまだ分かりませんが、その行方を見守りたい。
そういう気持ちになれる、なかなか気持ちの良い第一話だったと思います。
良いアニメだな、プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ