イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

NORN+9 ノルン+ノネット:第1話『空を征く船』感想

『ハマケン声のオジサンに約束された冒険の切符が、イケメン付きでやって来たじゃもン!!』という、複数主人公型閉鎖空間共同生活能力者バトル乙女ゲーアニメ。
『詳しく説明はしねー、取り敢えずおもいっきり作品の空気を吸い込め!!』という第一話でして、ぶっちゃけ良く分かんねーけど雰囲気良くてフックもたくさんあって、なかなか面白かったです。
初見に不親切な作りは、今回感じた謎が暴かれていく運動が、話しの軸になるからだろうしね。

取り敢えずこのアニメ、絵がスゲーな!
主人公が飛び込んだ超技術お船のマニアックな書き込みが、圧倒的な異界力を生み出していて、理屈を蹴っ飛ばした引き込みを達成しています。
乙女には縁遠そうな(偏見)モニタデザインだのメカデザインだのに気合い入りまくりで、オレンジ謹製の超イカす3Dモデルがバンバン前面に出てくるのは、なかなか面白い。
少年少女が隔離された船の異常な清潔感、俗世の汚れを無視した壺中天(もしくは冥界)のような雰囲気がソフトな背景いっぱいに溢れていて、クオリティに溺れる酩酊感がスゲー気持ち良いですね。
細かいところに気を配って世界を作ることで、視聴者を取り敢えず世界にぶっ込んでしまう豪腕はパワフルかつ魅力的だと思います。

綺麗すぎて嘘くさい領域まで美術が行ってるわけですが、主人公が身を置く世界は文字通り地面に足がついていない、俗世の法則を超越した箱庭。
異常に果実と水が強調されてる演出とか、『ひょっとして登場人物全員死んでね?』と疑いたくなる冥府っぷりですけども、そのフワッとした第一印象が落ち着いていくことで、話が転がっていくんでしょうね。
綺麗な楽園の腸がどんな匂いなのかは、とても楽しみです。
そもそも自分から『世界』とか名乗る組織が、ロクなもんなはずねぇだろ……ぜってぇ週一で手紙とか来て、デュエリストの宿命がどーのこーので世界が革命されるよ……(ウテナの呪縛から逃げられないマン)
そういや、OPのコンテ幾原でしたね……ブラコンEDといい、乙女ゲーとの相性良いのかな?

キャラクターデザインも小奇麗、かつ良い意味で現実感がなくて、夢うつつ定かではない世界観と噛み合っている印象です。
女の子複数主人公の乙女ゲーって、結構ヘンテコね……こんなにSF周りの設定考証ガリガリでやってる時点で、相当ヘンテコだとは思うけど。
今回はいわばチュートリアルで、キャラクターの顔が見えてくるエピソードはあんまりなかったわけですが、そこら辺は次回以降でしょう……なんか爆発したし。
あと劇伴がすっげーゴージャスなのは良いな、音関係が良いとワクワクする。


外見は『清潔感と異界感のある、ふわっとしたSFファンタジー』で高水準にまとまっているわけですが、中身の方は謎だらけ。
主人公は記憶喪失、舞台は良く分かんねー船、イケメンと女の子の能力も不明、船が世界を周回している目的もフワッとしている。
解らないことだらけなんですが、『分からないことを楽しもう』という気にさせるリッチさが世界にあるのと、『何が分からないんだろう』と整理したくなる謎の見せ方を第一話からしているのは、なかなかパワフルだと思います。

時間設定は明治期前後っぽいんだが、お船は露骨にSF兵器だし、女の子ハウスは現代日本っぽい衣装だし、そもそも主人公に託された制服現代のものだし、かなり当惑する。
『お船が渡っているのは、空ではなく時間』というふうに考えると、ここら辺の矛盾が結構解決するんだよな……主人公が女三人で、ノルンだしなタイトル。
そこら辺が腑に落ちても『超兵器が少年少女拉致って何をしたいのか』『ヒッキーが意味深に言ってたデス・ゲーム設定は炸裂するのか』とかは、全く解決しないがな。
こういう部分は話しの根っこにある謎だと思うので、じっくりと答えが見えてくるのを待とう。

キャラクターは女の子たちが『ふんわり天然』『かっちり委員長』『むっつり無言』という解りやすい分担をしていることと、緑のイケメンがナチュラルに女たらしだってことと、男サイドに違和感なく混ざってる斎賀スゲーなマジってことが解った。
あと『さすが能力者、結構生っぽい動きで屋根に叩きつけられてもなんともねぇぜ!!』っていう、主人公の頑丈さな……"AMNESIA"なら四回くらい死んでたな、第一話だけで。
高垣さんが声をやってる黒髪ストレートが、男向けでもめったに獲れない超正統派の黒髪ストレートキャラで、凄く素晴らしいと思います。
女1人につき3人って計算だと、一人足らないけど……イレギュラーな攻略対象がいるってことかな?
主人公の記憶や能力、約束をくれた優しいおじさんとの絡みとかも、今後生きてきそうなネタでした。

『穏やかに話進むなぁ……美術スゲーし、世界に溺れてるの楽しいから良いけど』と思っていたら、なんか急に爆発が起きて『敵』とか言われました。
下界ではチョンマゲ結ってる技術レベルなので、SF兵器に手を出せるとは思えないわけで、主人公サイドとおんなじ能力者か、はたまた別のお船か。
危機感が高まるイベントをちゃんと起こして次回に引くところは、醸しだした謎を巧く活かしていて素晴らしい。
戦闘になれば他のメンバーの能力も判るんだろうしな……こうして見ると、能力者モノとしても手際の良い見せ方してんだな。


というわけで、『磨き上げたSF設定と謎含みの展開、あとかわいい女の子とイケメンで横っ面を思いっきり張っ倒す!!』という、僕好みの出だしでした。
こういう腕力勝負の出だしって、当てどころがなかなか難しいと思うわけですが、作品に漂う『ここではないどこか』なオーラが馬力あって、綺麗に張り倒されました。
こういう市長体験をさせてくれるアニメってのは、やっぱ良いアニメだと思います。

謎の爆発は誰が仕掛けてきたのか。
『世界』を名乗る存在の狙いは何か。
沢山いすぎて中々見分けがつかないキャラは、どういう活躍をするのか
黒髪ストレートの概念存在みたいな彩陽声は、どのくらい黒髪ストレートなのか。
いろんな疑問が湧くと同時に、その先を見たくなるような、面白い第一話でした。
いやー、面白いなこれ。