イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブブキ・ブランキ:第1話『魔女の息子』感想

セルルック3Dのパイオニア、サンジゲンの十周年記念作品として造られたオリジナル作品の第一話は、ジェットコースターのような速度で突っ走る出だしとなりました。
ブブキとは一体どんな力なのか、新宿は何故あんなに荒廃しているのか、あの巨大ロボット何よなどなど、湧き上がる疑問はさておき、鍛えに鍛えた3Dパワーと転がり続けるお話しの勢いで一気に走り切る感じ。
『取り敢えず勢い付けてぶっちぎるぜ』っていう尖り方、俺嫌いじゃないぜ……。

とは言うものの、お話を見るためには浮遊感と同時に安心感が必要なわけで。
お話しの骨格は結構オーソドックスな少年冒険譚というか、楽園を追放され試練を乗り越えて戻るまでのお話……なのかなぁ。
お空の島の美術が凄くキラキラしていて、10年経過したとの新宿の薄汚れた感じと巧く対比されていたのはなかなか良かった。
あの島の風景と、両親と過ごした日々が輝いて見えることで、東少年の中にある『帰るべき綺麗な思い出』というモチベーションに視聴者が近づける感じがするのね。

お話しの書き方は一人称的というか、ワケワカラないまま島から追放され、ワケワカラないままブブキ警察(いい言葉だ)に追い回される東くんの立場に、視聴者を寄せていく作りだと思います。
神の視点からの情報を抑えめにして、意図的に情報洪水で溺れさせることで、主人公とのシンクロ率を上げていく感じというか。

これを飲み込むためには『ワケワカンないけど、もっと持ってきて』ってパワーがいるわけですけども、爆発と轟音多めの展開と、尖ったデザインで巧くフックした感じはあります。
コザキユースケさんの目を引くキャラデザインが、異常な力で変貌してしまった新宿と巧く噛み合っていて、なかなか雰囲気あった。
目玉がギョロギョロしてるブブキのデザインは気持ち悪くて良いし、そこから発現する超常の力の描き方も、新鮮さと説得力があってグッド。
取調室に右手ちゃんが進入する所で、地面が綺麗な円形に抉られる異質感は、『なんか普通じゃないことが起こるぞ!』という期待感がグッと湧いて、好きだな僕。


ワケワカラないなりに昔なじみの女の子と合流し、ブブキの力を与えられた仲間とも出会い、あれよあれよとお話は進んでいく感じ。
少年チームのブブキは全部パーツなのかそれとも心臓&右手だけなのかとか、全部親から継承したものなのかとか、いろいろ細かいところが気になってくるのは、設定のフックが巧く行ってる証拠なのかなぁ。
東くんはお話しの勢いに押し流されて骨ロボのところまで来たわけですが、何にもしない主人公はあまり好きになれないので、自分の意志で立ち上がり、自分の力で闘うシーンが早めに見たいですね。

少年チームと敵対する悪役たちが、『俺達強いです、あと悪いです』と全身からシグナル出して追悼式に出てきたインパクトは、なかなか良かったですね。
『優しかったママンを魔女に貶めた存在』という形で、間接的に世界を牛耳る大BOSSと因縁があるのは、今後の話を転がしやすそうで良い。
ボロボロに零落してる町並みとか、『俺たちは人民を迫害します』と服に描いてあるブブキ警察とか、主張の強いアジビラとか、『礼央子の支配する世界はマジろくでもないです!』というメッセージが、薄汚い新宿から感じ取れたのも、3Dの強みを生かしてる感じでグッドです。

もう『3D"なのに"○○で凄い』という褒め方をする時代は終わっていると思うので、3Dというツールの使いこなしがどうか、という話になるわけですが、アクション多めのジェットコースター展開と、『傷んだ』感じの世界観説明を両立させるべく、クオリティの高い背景・パースを維持できるのが強かったと思います。
人間の芝居に軽い違和感はあるけど、ここら辺は今後ストーリーが馴染んできて、キャラが生きてくるうちに味になってく所だと思います。
そういう意味でも、次回以降少しテンポをスローダウンし、キャラと世界を落ち着いてみせる方向に行ってくれると、個人的にありがたいです。

というわけで、主人公と視聴者を物語世界に押し流す、濁流のような第一話でした。
色んなモノがたっぷり詰まっていて食べきれませんが、『食べてみたいな』と思わせるワケの分からない魅力は、しっかりあったと思います。
流されて運命の場所まで来た主人公・東くんが、今後どういう存在証明をしてくれるのか。
エッジの効いたヴィジュアル面だけではなく、オーソドックスなお話運びの手腕にも期待しながら、来週を待ちたいところです。