イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~:第2話『クロスキューブ』感想

『大体の説明も終わったし、エンジンかけていくぜっ!』ていうことで、日常の謎と人情話を絡めてお出ししたハルチカ第2話。
弱小部活の部員強化も兼ねつつ、第1話ではライトを当てきれなかったキャラの表情を掘り下げていく話でした。
ハルチカコンビのおもしろ漫才っぷりや、謎解きの際の役割分担なども見えてきて、作品のキモが見えてくるエピソードになったと思います。

前回が作品全体のチュートリアル的エピソードだったのに対し、今回はキャラの表情を見せ、だいたいどういうレートでお話が展開していくのか、サンプルを提出するエピソードだったように思います。
作品を見るためのゼロ地点になるお話、視聴者の中の基準を作る話の仕上がりってすごく大事だと思うのですが、謎を解くだけでは終わらず、シナリオヒロインの『失った弟への後悔』という感情を解して終わる物語的起伏がちゃんとあることは、見ていて安心感を覚えるポイントでした。
やっぱキャラの気持ちが動かないと、のっぺりしたお話に見えちゃうよね。

『小児ガンで弟が死んでる』というヘヴィな話題に切り込んでいく主人公コンビの姿を見せることで、彼らの性格なども掴める形になっていて、そこもありがたい。
ハルタは真実のためならかなりズケズケとナイーブな部分に踏み込める強さ(と意地の悪さ)があって、頭の回転が速い論理派探偵役。
チカちゃんはハルタが踏み荒らした感情の庭のフォローをしつつ、読者の代わりに疑問を言語化し、直感でヒントを出すワトソン役。
ホームズ時代から続く由緒正しい役割分担ですが、定番というのは強いからこそ定番になるわけで、そこんところがしっかり見えたのは良かったです。

ハルタも完全な性格破綻者というわけではなく、『成島さんが抱え込んでる後悔を、推理で解いてあげたほうが良い』という倫理的判断ができる男ではある。
同時に自分の性的傾向から逸れた相手の行為を利用して情報を集める奸知も持っていて、なかなかアクの強い人格してます。
いいタイミングで真相が公開されるように仕向けるテクニックといい、探偵役に必要な『賢さ』が持っているイヤーな部分を巧く『ホモセクシャルの高校生』というイメージにすりあわせている感じがあって、好きなキャラです。

謎はハルタがゴリゴリ解いていくので、チカちゃんは賑やかし……なんですが、クルクルと変化する彼女の表情は、お話に色気と瑞々しさを生む大事な足場なので、立派な仕事だといえます。
ハルタの効率的で強引な真実探求ロードだけだとどうにも水気が足らないわけで、そこをハルちゃんの豊かな感情と、成島さんのそっけない態度への細やかな対応で補ってる、いいコンビですね。
テンポよく掛け合うダイアログの気持ちよさもあって、成島さんとの第一種接近遭遇はなかなか良いシーンでした。

タイトルに『青春』と入っているだけに学校内部の雰囲気をどう見せるか、彼らの『青春』を気持ちよさそうだと感じてもらえるかは重要だと思うのですが、春という季節感の出し方、クリアなライティングの気持ちよさと掛け合いのテンポが相まって、とても良かったです。
たとえ現代日本を舞台にしても、創作物はおしなべて『こことは違う場所』を舞台としたファンタジーですので、『俺もそこで遊びたい』『創作の世界の空気を浴びていたい』という欲望を掻き立てるように世界を組み上げるのは、やっぱ大事でしょう。
主役にはならない人たちにも油断なくリソースを配分し、世界を躍動させ続けることで生まれる魅力は、このアニメの強いところかなと思います。


日常の謎の奥に隠された感情と、感情を覆い隠す謎の見せ方は、このお話がミステリというジャンルに含まれる以上、大事なところだと思います。
『グレイの前髪パッツン眦涼しい系美少女』という僕好みの外見はさておき、吹奏楽部に入らない理由(≒それを解決すれば部活に入ってくれる理由)と巧く絡めた後悔は、それがすでに一年前の出来事であるという冷却の仕方も含めて、『日常の謎』らしいコンパクトで綺麗な感情の大きさだったと思います。
一年間も弟の墓守りし続ける娘を、ジワッと見守っている両親をちゃんと写したこと、一年という時間で自分たちなりに決着を付け、娘の友人にも普通に対応できる正常さを成島さんと対比させたところは、結構好き。
ギミックが少しIQ高すぎるというか、『がん患者にしては、ウィット豊かな遺産だな』と思わなくもないが、まぁミステリのキャラクターは基本的に賢く、余計なことをしてもらわなければ困るのだ。
解くべき謎が生まれないからな!

今回の部活要素はあくまで添え物というか、『成島さんの事件に首を突っ込むための、モチベーション生成装置』という仕事が大きかったです。
今回は探偵・ハルタのクールでスマートな立ち回り、助手・チカの元気で柔らかな対応を見せることが大事だったわけで、『ブラス部分もがっちりやろう!』と欲張って上手く行かないより、見せるべきポイントに集中したのは良いと思います。
いろんなジャンルを内包した作品なので、エピソードごとに配分は異なり、また別のお話では部活重点な物語が展開されるとは思うしね。

草壁先生はハルタとチカが青春するための強力なエンジンであり、『謎を解いて部を元気にしよう! 弟の呪いを解いて、デキるオーボエ奏者をゲットしよう!』という主人公の意欲の源泉です。
同時に作中唯一の大人として、探偵コンビの師匠役というか、既に答えが解っている神様の視点からヒントを出す仕事もしていました。
前回の話と合わせて作中における先生の立ち位置がわかる見せ場だったと思いますが、便利なヒント役&恋愛要素のニンジン役だけだと、せっかく雰囲気あるのにもったいない気もします。
『死別した奥さん』というわかりやすい謎も既に提示されているので、先生のミステリに分け入っていく話もそのうち(最終話付近かな?)あると期待したい。


そんなわけで、ハルチカコンビがこういう感じで事件に飛び込んでいくという、テストケースな物語でした。
日常の謎』が孕んでいて欲しい感情の熱量、ピリッとしたギミック、謎に分け入っていく探偵のスタイル。
気になっていた所にしっかり答えを出してくれた、良い二話目だったと思います。

しばらくは部員集めをモチベーションにして、いろんな謎に首を突っ込んでいく形でしょうか。
基本形がかなりしっかりしていることは今回見せたと思うので、少しヒネった形でストライクを取りに来るのか、はたまたストレートの速さで押し切ってくるのか。
今後のエピソード捌きにも、注目したいところです。