イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Norn9 ノルン+ノネット:第2話『能力』感想

『二話目になったらお話が落ち着くと思ったか? "逆"だ!! 圧倒的な謎と新キャラの量で押し流す!! 情報の洪水だッッ!!』と、思わず荒木キャラっぽく言ってしまう、乙女系異能力ミステリ二回目。
小野D声の敵さんは出てくるし、内通者疑惑は生まれるし、ひよこは可愛いし、平成からのタイムスリップショタは顔を出すし、第1話で見せた謎は解消されるばかりか、ドンドコ膨らんでいます。
同時に女の子たちはそれぞれの相手とイチャイチャしたり、ツンツンしたり、運命の出会いを果たしたりで、感情面ではかなりスマートにお話が進んでいます。
謎と恋心がどんどん加速する展開は、スピードと緊張感があって好きだな。

前回意味ありげに引いた襲撃ですが、小野Dは特に自分の素性やモチベーションを語ることもなく、内通疑惑を燃え上がらせ、黒髪ロングストレートにコナかけて嵐のように去って行きました。
こうしてまとめると、ほんとに話を広げる仕事しかしてねぇなあのイケメン……まだ二話なので、お話しの風船にガンガン空気を入れてくれるのはどんと来いですが。
ただでさえノルン内部に人が多いので、攻略対象を一人、敵として切り離すのは良いテクニックだな。
まぁ攻略対象ってわりには、ためらいなくこはるを殺しに行きすぎだが……そこら辺のスパルタンっぷりは、今後交流が深まってデレ期が来た時用のスパイスと捉えよう。

この話はたくさんのミステリを内包し、それが膨らんだり公開されたりすることで物語が前進していく構造を持っているわけですが、夏彦さんが襲撃してくる理由も現状伏せられたカードです。
アバンで色々言っていたことがそれを表返すヒントだと思うわけですが、『リセット』とか意味深なこと言ってたなぁ。
ノルンの子供たちに指示出してるのは自称『世界』という碌でもない存在ですし、平成ボーイが迷い込んだことで次元改ざん能力が作中に存在することが分かったので、夏彦さんの言う『リセット』がただの暗喩ではないっぽいのも、なんとなく分かります。
年表を書き換えて別の世界を作るという意味の『リセット』ならば、ノルンに集められた子供たちが『リセット』にどう絡むかってのが、『夏彦さんの襲撃理由』というカードを表にした後、また出てくるミステリです。
これもアバンで顔を出していた意味深な成人女性が、そこら辺の回答を握ってる黒幕なのかなぁ。
ここら辺は話し全部を貫く大ネタだと思うので、今後の発展に期待かな?


夏彦さんとマゾヒストの助手がやるだけやって帰った後は、事件調査と裏切り者対策。
ちょっとマスター、この乙女アニメ、すっげー殺伐としてるんですけど!(乙女系は結構そういうもんです)
夏彦さんは気まぐれに現れては去ってしまうので、『襲撃の際、結界は機能していた』というカードを『内通者』というカードと結びつけ、疑念と不信を永続したのはサスペンスとして良い手法だと思います。
これでキャワイイ女の子とイケメンが、綺麗なお船でキャイキャイする以上の楽しさが話に約束されるわけで。

内通者対策を通じて、第1話では描ききれなかったキャラクターの肖像もスケッチされました。
何しろ主人公三人、攻略対象三×三人、サブキャラ多数という大所帯なので、手際よくキャラを描写していくのは大事。
限られた時間ながらキャラ(特に女の子)の特徴が見えるシーンが運営されていて、なかなか良かったと思います。
基本的に『女の子+男の子三人』のユニットでキャラを処理していく構造であり、チーム外のメンバーとの交流は薄めで展開すんのかな? 安定性高いな、そっちの方が。


こはるチームはついに最強能力が具体的描写を伴って発現したり、メインヒロインである駆くんとイチャイチャしたり、千里くんが面倒くさかったりした。
まぁこの亜に目のイケメン、ほとんど面倒くさいんだけど。
こはるの能力発現はオレンジ謹製のエフェクトがとても綺麗で、純粋な能力アニメとはまた違う表現であり、とても好きです。
あそこでも超立体が展開してるから、やっぱ子供たちの能力は時間にまつわる根源から生まれてるんだろうなぁ。

こはるが桃にこだわるのは如何にもなブリっ子演出に見えて、モノを焼きつくすことにしか使えない『死』の能力と、メシを作ったり穴を修復したりといった『生』の能力を、主人公とヒロインが分け合っている対比に見えました。
『燃やす』という非生産的な単機能を背負っているからこそ、手を汚して焼け跡を直すシーンに少し希望が埋め込まれているというか。
あくまでこのアニメ乙女ゲーなので、イケメンとキャイキャイするのに忙しくて能力方面を深めていく余裕はないかもしれませんが、如何にもハイランダーなこはるが背負っている無常さと矛盾は、掘り返すと面白そうだなぁと思いました。
あとまぁ、イズンの林檎とかネクタールとか桃花源とかヨモツヘグイとか、神話伝承系のモチーフとも当然重ねてるんだろうな、桃プッシュ。

駆くんは超ストレートないい人リーダーなんだけど、思いの外この船薄暗いことが分かったのでついつい裏を勘ぐってしまう。
能力バトリしたり疑心暗鬼したりと忙しい中、ちゃんとトゥンク……するイベントに時間を使う辺り、メイン攻略対象だなぁと感じる。
ヒッキーアピールして少し目立ってた千里くんはさておき、ただの司会進行だった正宗さんにも少しは出番別けてやれや。


黒髪ロングストレートの概念存在、深琴CHANGと仲間たちは能力説明したり、運命に出会ったり、すっげー面倒くさそうなオーラを斎賀声から感じられたりした。
こはるが火炎発生という『攻め』の能力なのに対し、ノルン全域を保護できるほどの強烈な『守り』の能力を深琴が持っているのも、なかなか面白い。
結界能力はノルン防衛の要なので、深琴が前線に出る機会は多く、ということは夏彦さんとキャイキャイするチャンスが増えるってのは、なかなか理にかなったお話の作りだ。
『空』という絶対的な障壁で俗世から隔絶されたノルンを、更に守る結界を担当する深琴がそこをぶち破って侵入してくる夏彦さんと出会うってのも、こはるチームにはない捻り方ですね。
……結界が何のメタファーなのか考えると、この段階ではまだ夏彦さんに破られてないってのは、意味深よね。

夏彦さんは駆くんとは対象的な『イヤなやつ、だけど気になる』系の攻略対象でして、何しろビーム撃ってくるからな、ビーム。
『殺し合い、分かり合い、愛し合う』ようになるかってのは今後の展開次第ですが、ノルンや『世界』に胡散臭い部分が沢山あるため、夏彦さんという『外部』からしか出てこない情報や視点ってのは、確実にあるでしょう。
ここらへんをノルンに空いた風穴(物理)として活用できると、あまりに隔離され保護されすぎた感じがあるノルンの空気も、良い感じに撹拌されそうだ。

『敵』との交流を邪魔するのは『味方』ってのが定番なわけで、幼馴染というハンデを背負って闘う朔夜くんにかかる期待は大きい。
深琴ちゃんと意味深な会話していましたが、彼らが共有しているミステリが何かってのも、こっちのチームのお話が進む大事なエンジンなんでしょう。
「コンビになっても、二人の関係は変わらない」と念を押している辺り、『押すなよ! 絶対押すなよ!!』という恋愛ダチョウ倶楽部のイズムを感じ、今後拗れそうでとっても良いと思います。
朔夜の能力が実は伏せ札のままなので、ここらへんに関係して分かってくるのかな?
あ、加賀美さん? 出番少なくて、よく判んねぇ。


三人目のヒロイン七海CHANGは、ダウナーで非協力的という変則主人公でした。
モノローグを巧く挟み込んで、ただNOというだけのキャラではなく、内心色々感じるところがあるナイーブな子だとと伝わってきたのは、とても良かったです。
この人も能力伏せてる勢でして、暁人くんと敵対関係から始まってるのも、ここらへんと関係があるのかなぁ。
彼女が暁人くんから『奪った』もの、能力に抱えている『恥』の理由を知っていくことが、このチームがお話を進めていくエンジンになる気がします。
能力系乙女ゲーとして、恋愛要素と超常能力を巧く絡めてお話を作っているのは、自分の強みをよく解っているように思いますね。

暁人さんはガミガミ喧しい、夏彦さんとはまた違った『イヤなやつ』なわけですが、料理はちゃんと作ってくれる辺り良い人だ。
アシスタントであるひよこちゃんが可愛らしいので、もっと出番があると良いですね。
この亜に目のイケメンと女の子たち、何かとシリアスな方向に滑って行きがちなので、ひよこちゃんが巧くコミカルな空気を出してくれるのって見た目以上に大事な気がするね。

何しろ人数が多く、謎とその解決用ヒントもばら撒かねばならず、ノルンの平和な日常も描写しなきゃいけないってんで、やることたくさんあるのがこのアニメ。
そのしわ寄せが主人公+メイン攻略対象以外の男の子におっ被さるわけで、ぶっちゃけロンさんはグラサンして酒飲んでるだけ、乙丸くんは吉野声なだけだった。
一応、乙丸くんは能力が『テレパシー』だって情報が公開になったか……秘密の公開が話しの大事なところに絡んでいる辺り、この乙女ゲー"シノビガミ"で運営されてる気がする。


というわけで、襲撃者と内通者の存在を公開し、三チーム三様の人間模様を見せ、新たな客人が状況をさらにややこしくする、中身のみっしり詰まった第2話でした。
こうしてまとめてみると、ほんとに要素多いな!
必要な情報を公開したり、謎の存在を明示したりする合間に、ちゃんとキュンと来るイベント(もしくはイベントのタネ)を起こしてくれてたのは、『お話には感情のうねりが必要だ』と思っている立場としては、とてもありがたいです。
この話の『現在』が1919年だってことも公開されてましたけど、まさかの平成世代が迷い込んだことで、登場人物全員の時制がアヤフヤになったなぁ……一応、深琴&朔夜は1919時間軸の人間で良いのか?

謎が謎を呼び、人間関係は複雑に交錯し、かなり視聴者が振り回される展開なのですが、同時に三人主人公によるチーム制、的確な伏線描写などなど、お話運びの手練手管を上手く使い、結構キッチリと展開されています。
強みであるノルンの不思議な空気も崩れることなく、内通者のサスペンスとも面白い化学反応をしていると思うので、意欲的に盛り込んだ様々な要素を今後どう活かしていくのか、とても楽しみです。
運命の船がどこに向かい、どう進んでいくのか、楽しく見守りたいと思います。
……『ノルン(運命の三女神)+ノネット(九重奏。クインテットの九人版)』で12人、夏彦さんはノルンにいないから11人のなかに裏切り者が1人いるSF……萩尾望都リスペクトだったのか、この作品。