イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブブキ・ブランキ:第5話『剣と指輪』感想

血縁と魔器に運命を縛られた少年少女のお話、今回は面白オジサン新走さんと狂獣の革を被った乙女木乃亜ちゃんのブブキバトル。
甘酸っぱい回想シーンと現代のブブキバトル、その周辺で展開される状況説明、東と柊の交流シーンなどなど、カメラがすごい勢いで触れて軽く場面酔いする展開でした。
このアニメを『勢いで押し切るタイプ』と認識してたんだけど、そのワリには一直線に走って行かないアニメなので、『勢いで押し切る』ために必要な勢いだよりではない計算は、あんまやっていないんだと思う。
かなりナチュラルな作りというか、天然というか、そこにチャーミングな部分があるのはグッドよ、とても。

今回のメインは眼鏡のおじさんと眼鏡の女の子の鞘当でして、綺麗な新走くんと綺麗な木乃亜ちゃんの過去回想を挟みつつ、露悪的に煽り倒すゲスおじさんをスケバン木乃亜がぶっ飛ばす流れ。
おじさんの真似して眼鏡は付けるし、不良ぶってみるし、まったくもって未練が断ち切れていない様子がよく見えたのは、可愛くてよかった。
木乃亜はナチュラルクレイジーかと思っていたが、過去のおどおどした様子と対比することでスケバンムーブは半分演技だってのがよく分かって、これまで感じられた育ちの良さに得心がいった。
ナチュラルシグルイは黄金ちゃんだもんな……キレても弱いけど……。

新走おじさんの動きでだいたい確定だと思うけど、四天王は子供チームを成長させるべく、露骨な敵役を演じている。
過去の綺麗なトス上げも、現在の露骨な煽りも、全部木之亜のためだもんなぁ、どう考えても。
どう考えても過去のロマンスのほうが本心なピュアおじさんっぷりは、なかなか可愛くてよかった。

……とまぁ、キャラ単位の描写はいいんだけど、回想シーンが無駄に長かったり、セリフでやんなくて良い説明をしっかり喋っちゃったり、このアニメらしいモタっとした展開で、ブブキバトル自体にダンドリ感が出てきているのは、ちょっと困った所。
ブブキ戦の『見てても手出しは出来ないし、任せてブリッジとか行こうぜ』という緊張感のなさは、正直かなりの量の冷水をぶっかけている気がする。
ここら辺はオモシロ四天王の不自然な試練を際立たせる意味合いもあるんだろうけど、それはあくまでスパイスとして機能するべきポイントであって、アクションやドラマ自体はゴロゴロと転がしてくれたほうが、無責任に観ている側としては当然楽しめるわけだ。

また露骨な悪役ムーブで女四天王・間さんが正体を表したけど、シーンセットは変わらず電車の上で変化がなく、なんというか『見せられている』という強制感が拭い切れない。
的場井おじさんの終盤辺りから感じさせた『四天王、結構いい人じゃね?』疑惑は十分視聴者の気持ちに入ったと思うわけで、あと二回おんなじ構造のブブキバトルを見せられるのは、ちとしんどいか。
四天王がおもしろオジサンの集合なのは、悪役からおそらくターンさせるだろう展開の予兆としても、単純にキャラを好きになる意味でも、とっても良いんだけどね。
この『キャラの成長のために用意されたステージが、順繰りに出てくるダンドリ感』はすごーく"シンフォギアGX"の中盤に似ていると思う。


んで、それと並列する東と柊の掛け合いは、正直あんま面白くない。
東が分かりやすい優等生からはみ出さない、人間味と面白みにかけるキャラであることと、柊が主張する『ブブキ道具説』が作中の描写で既に説得力を削られていることが、『この描写いる? 結論もう出てるでしょ?』という感覚を与える主因だと思う。
ブブキの人格というのはお話のコアであろうし、サブカメラで地道に捕らえて発展させる余地を作ることそれ自体は、とても巧い物語操作なのだが。

東くんは例えば今回木乃亜が見せた愛憎と屈折みたいな要素が少しまじると、もっと魅力が出てくると思うんだが、基本的に『綺麗な主人公』に要求される仕事を淡々とこなしているだけで、両親や宝島、礼央子やブランキに対する泥臭い感情が見えてこない。
キャラを加速させてドーンとはじける表現が面白いのは、四天王のオジサンたちや木乃亜・静流の描写で分かっているので、主人公にアニメの強異部分が適応されないのはもったいなく感じてしまうのだ。

優等生的立ち回りをしているのは柊も同じで、否定されるための対論をライバルとして全面に押し出しつつ、それが否定される準備をどんどん整えているお行儀の良さが目立つ。
右手ちゃんやら今回の木乃亜ブレードの描写やらで、足場にしている『ブブキ道具論』にはどんどん説得力が無くなって、決定的な事件が起こる前から『いや、東が正しいでしょそら』という印象が視聴者(というか僕)には生まれてしまっている。
このまま東(というか柊以外のキャラ)が主張する『ブブキ友達論』が証明されるイベントが起きても、『そらそうでしょ。そうとしか取れない描写ばっかだったんだから』というインパクトのない反応になるし、逆に『ブブキ道具論』が正しい展開になっても『え? あんだけブブキを可愛く描いておいて、踏み出しにすんの? 俺の共感はどうなんの?』という気持ちが先に出る。
『ブブキ道具論』を仮定的にでも支持するような何らかの描写(単純だが、自殺的な命令にも従うとか)があれば視聴者の中に迷いも生まれたんだろうが、全体的にブブキとのアット・ホームな雰囲気(それ自体はとても良い。モノ言わぬブブキの忠誠は見ていて楽しい)が巧く出されすぎていて、対論が対論として、ライバルがライバルとして機能しない状態だ。

ココらへんの『落ち着かないお行儀の良さ』を次回、間さんがぶち壊しにしてくれるとなかなか面白いキャラに育つと思うんだが、どう転がるのやら。
正体を露わにした時の柊のうろたえ方が尋常ではないので、うまーく突っついて心を丸裸にし、柊というキャラクターの地金が見れるとまた面白いと思うのだが。
とりあえず、弾丸列車に乗っているのに変化と疾走感が薄い印象を、そろそろ変えてくれると嬉しい……せっかく美術にパワーあるアニメなんだし。