イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

デュラララ!!×2結:第30話『乗りかかった船』感想

地獄の釜のように思惑と情念が煮こまれていくケイオス・シティ・テイルズ、今回は三人それぞれの立ち居姿。
超人たちが自分の物語をどんどん加速させる中、帝人・紀田・杏里の(元)仲良し三人組が、話し相手を用意して自分の状況をまとめる回でした。
紀田くんと杏里のライトサイド組はかなり良い方向に転がったが、ヤのつく自由業から面白いおもちゃを貰った帝人くんには、サイコでアウトな破滅しかみえねぇ。
混乱していた要素を取りまとめたことでお話のテンションは高くなったけど、同時にいつ落ちるかわからない緊張も孕むような、クライマックス前の準備回でした。

三人組のトップを飾った紀田くんですが、ろっちーパイセンが溢れる人間力で要点をまとめ、バカ正直な真っ向勝負でグダグダした部分を全部ふっ飛ばしてくれました。
高校生三人だけで話進めると、ずーっとおんなじ所をぐるぐるぐるぐる回るだけでダルいので、人間力のあるバカに話をまとめさせるのは大事だ。
ろっちーが言っていた『全部紀田が悪い。グダグダ言わず行動しよう』というまとめは本当にそのとおりで、しかしこれを真正面から正臣に突き付けてくれる人がこれまでいなかった。
必要なタイミングで必要な聞き役が出てきて、ようやく状況がまとまって話が先に進む地ならしが住んだ感じがあり、紀田パートは大満足であるなワタシ。

良い聞き役がついたのは杏里も同じで、紀田くんの彼女が覚悟を持って乗り込んできて、三人の関係を見つめなおすトスを上げてくれた。
杏里にとっての『罪歌とワタシ』を鯨木さんがまとめたくれたように、『男の子とワタシ』を沙樹がまとめてくれる辺り、ほんと杏里は良い女にモテると思う……全体的なケアは狩澤の姉さんがしてくれるし。
こっちの結論も、紀田くんと同じく『大事なんだから、グダグダ悩まず即行動』というポジティブなもので、これから色々あるだろうが全体的に良い方向に転がるんだろうなと、楽観的な予測が立つ展開だった。
この二人がグダグダ悩む時間マジ長かったので、今回ブレイクスルーの兆しを確かにつかめたのは、地味な爽快感があったぜ。


一方、演出的にも状況的にもズッポリ闇の中な帝人くん。
リアルな光量としては紀田くんところとあんま変わらないだろうに、帝人の周りだけはイン・ザ・ダークネスって感じの真っ暗ライティング過ぎて、演出意図が非常に分かりやすくて良い。
青葉くんと話したり、泉井さんと話しておもちゃを貰ったり、前向きになる要素が全然ないまま事態だけが先に進む、止めようのないクレイジー・ナウ。
杏里や紀田くんに比べ帝人の未来が真っ黒なのは、彼自身のサイコっぷりとか、ブルースクエアという『仲間』が周りを固めて外界と交流しにくいとか色々あるけど、一番の理由は青葉のヤンホモ力だと思う。

更生を促すどころか『普通に見えたアンタがどうしようもなく泥まみれで、それがあんまり俺に似ていたから憧れすぎて、地獄の底まで一緒に堕ちていこと思えた』とばかりに、どんどんダメになっていく帝人を見守り、交流の緒を切りまくってる青葉は、確実に話を停滞せている戦犯。
しかしその生ぬるい泥の暖かさこそが、常人ぶった最悪の狂人・竜ヶ峰帝人のキャラを熟成し、いい塩梅のサイコっぷりを加速してくれたのも事実。
実際の話、青葉とつるんでからの帝人くんの腐り方とかマジ大好物であり、そういう個人的な好みはさておいて、帝人が深く落ちれば落ちるほど、そこから引き戻そうと頑張る杏里と紀田くんの障害は厳しくなり、達成した時のカタルシスもまた強くなるわけで。
混乱と迷妄こそが作者の狙いなんだから、ぶっとい情愛を抱え込んだまま帝人を地獄に引きずり込んだ青葉は、お話を支える功労者でもあるわけだ。

そんな青葉のニーチャン泉井さんだが、再生怪人とは思えないくらい良いキャラに仕上がったと思う。
ヤクザとウザヤの間をヘロヘロと泳ぐチンピラっぷりもいいし、狂犬と策士を使い分ける性格面も好きだし、なんだかんだ人間の値踏みも出来る目の良さとかも好きだ。
各勢力を行ったり来たりしつつ、展開に必要な要素をしっかりバラまき、ついでにメガバイオレンスで場を盛り上げてくれるところもあって、この兄弟はお話的な功労者なのだな。
今後も時にどチンピラとして、時に空気読める常識人として頑張っていただきたい。
あと波江さんな……今回三人の前に立ったキャラは全員『グダグダ言ってね~で行動し、お話を終わらせろ!!』って叫んでくれてんだけど、よりにもよってキチガイブラコン女が相手で、しかもウェブ越しってあたりに帝人の人徳のなさが伺える。

ウザヤといえば、腹筋女が『折原臨也の軍勢……まっこと少なくなり申した』と虎眼流門弟みたいなこと言い出して耐えられなかったが、あのシーンのタロットの演出は印象的かつ分かりやすかった。
よりにもよってイザヤの狙いが『塔』だとか、各種人外をタロットに見立てるところとか、あいつの腐れ中二病を巧く表現しつつ、混乱しがちな現状を巧く暗示していたと思う。
セルティは暴走、シズちゃんはヴァローナとセルティのために疾走中、杏里は決意を固めたわけだけど、そういう人外の介入を避けたい腐れヒューマニスト(人間中心主義者)折原は、少なくなった手駒でどういう手を打つのかね。
士気取りを最後まで貫くのか、因縁のマッチアップ相手と真っ向勝負に持ち込むのか。
拘ってんのはイザヤだけで、シズちゃんの方は世界が広がった感じあるけど、シズちゃんの根本にある『怒り』を無条件で叩きつけられるのはウザヤだしなぁ……。

そんな感じで、三者三様のDepartureを準備しつつ、期待と不安が高まるお話でした。
なんか話がまとまりそうな気配はありつつも、けして一筋縄では終わらないきな臭さもあって、最高にデュラってて良いなと思います……何しろサイコにチャカだからなぁ……。
今回メインをはらなかった人々も含め、クライマックスに向けてどんどん温度を上げているデュラララ結。
導火線にそろそろ火がつく頃だと思うわけですが、さてはてどんなことが起きますかね。