イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

魔法つかいプリキュア!:第4話『魔法の授業スタート! ふしぎなちょうちょを探せ!』感想

不思議な図書館で友情行為したら女同士でも赤ちゃんが授かるアニメ、今週は授業開始。
とは言うものの、ヤンキー・ビビリ・のろまのダメ人間三銃士は顔見世程度で、『基本は"ふたり"』というまほプのスタンスはブレない崩れない。
徹底的にリコみらに焦点合わせて追いかけ続けるカメラの執念を、強く感じる回でした。


学友という身近な立場が出てくる回をどう取り回すのかなと思ってましたが、脇道それることなくリコみら一直線でした。
前回の商店街の人々もそうでしたが、リコとみらい以外のキャラクターは基本的に脇を固める立場であり、序盤は徹底的に『ふたり』を掘り下げるってことなのだろう。
手際良く、横幅広く目端を効かせる劇作が捉えられるものもあるし、まほプのように愚直かつ徹底的に主人公に寄せた作りが捉えられるものもある。
そこは優劣ではなく方法論の違いだっていうことは、先週も書きました。

となると重要なのは二人の関係性の描き方、その深さになるんですが、こっちはちょっと変化が見えました。
みらいの無鉄砲かつ天才的な行動主義が、図書館で迷子というマイナスの結果に繋がる所とか、一見無敵に見えるみらいがリコを頼りにしてることをモフルンが指摘したりとか、欠陥の描写がちらりほらりと。
個人的な好みからすると、『デキるやつ・デキないやつ』の役割分担を固定するより、各々の長所と短所を巧く描写し補いあったほうが望ましいので、今回みらいが持ってるマイナスが描かれたのはグッドです。
後単純に、なんでも出来過ぎる主人公は面白みがない。

とは言うものの、『デキない』リコが『デキる』みらいの背中を追いかける基本構図は変わらないし、『考えるより即行動』というみらいの行動理念をリコが学ぶ成長の描写も、これまでの四話と同じ感じだ。
ポンコツが空から落っこちて天才に助けられる出会いからこっち、ずっとリコはみらいの背中を追いかけ続けているわけで、この距離感こそがまほプ序盤の現状なのだろう。
みらいと出会ったことでリコが変わり、その背中に追いついて距離感が変わる瞬間が来るのか来ないかは、先を見てみないと分からない。
劣等生が憧れに追いつき、引っ張られてた関係が肩を支え合う距離感に変わるドラマは面白そうなので、こっちに転がって欲しいけどね。


不公平なバランスをしかし楽しく見れているのは、ひとえに追いつく側であるリコが魅力的に描かれているのが大きい。
ゆったりと進むこのアニメのペースは、リコの感情描写において最大限活用されており、人見知りで見えっ張りな彼女が初めて運命的に出会ったみらいに、戸惑いつつも惹かれていく距離感は凄く良く描写されている。
魔法界の人間は苗字がないので未だに『あなた』呼びな所とか、みらいへのコンプレックス故に彼女の強がりに気づかない所とか、モフルンに諭されて『デキる』みらいの『デキない』部分(それはつまり『デキない』自分との共通項であり、これを足場に共感を作っているわけだが)の発見であるとか、非常に人間臭く揺らいでいる気持ちの色は、とにかく鮮やかだ。
現状物語の主観はほぼリコで進んでいる……というか、もはや大人である僕が共感できる愛憎矛盾した感情を抱くのがリコだけで、みらいはとても無邪気に魔法世界を楽しんでいる状況なので、リコの心を解剖している繊細な筆致を、みらいにも別けて欲しいなぁと思ってしまうほどだ。
ここら辺は、ヒネたオッサンのクサレ意見でしかないけども。

こういう描写の蓄積があって、魔法図書館の移動書架という小道具を最大限生かした再開がキラリと輝くわけだが、感情の温度に流されず、二人の間にある才能の差、センスの差はブレることなく描写され続けている。
これは勘を頼りに当てる今回の戦闘において、初撃でクリティカルを出すミラクルと何度か試行錯誤するマジカルという形で、わかりやすく提示されているところだ。
感情描写の細やかさと、才能の差をしっかり描写することは実は相補的で、『気になるけど劣等感を覚える』『好きだからこそ追いつきたい』という複雑な感情複合を、説得力を込めて織り出すためには大事なポイントだろう。

自分は結構リコを好きになりながらこのアニメを見ているので、リコが代表する思考主義や分別、知識という美点を、みらいが代表する行動主義、直感、感覚という美点の下には置いてほしくないなぁ、とは感じている。
今回みらいの直感が迷宮に迷わせたとはいえ、それは妖精の赤ちゃんという新しい出会いを連れてくる貴重な回り道でもあり、完璧な失敗としては描写されていない。
『リコがみらいの背中を追いかける』という基本構図を視聴者に焼き付けるためにも、しばらくはリコはポンコツでなければいけないわけだが、今回少し目配せしたようなみらいの傷にも、しっかり光を当てて欲しいなぁなどと思う。
その傷を埋めるリコがいてこそ、『ふたり』が『ふたり』でなければいけない理由もより鮮明になるだろうしね。
主軸をしっかり据えてじっくりどっしり描写するのがまほプのスタイルであり、今は細かく両義性を描写するより、メインテーマを分厚く描写するタイミングだという見切り故だろうけどね。


学友たちは顔見世程度だったけど、まーリコに負けず劣らずの曲者共であり、『ふたり』の描写が落ち着いたタイミングでエピソードが欲しくなるキャラだった。
ああいう面白キャラが図書館探索に協力せず、スーッと舞台裏に下がるところがまほプっぽいなと思う。
敵さんのBOSSも顔見世してたが、ヤモリが通訳やってる姿がどうしてもSSのゴーヤーンを連想させ、『フードを取ったらガチ骨であり、全部ヤモーの自演』というオチを幻視してしまう。

魔力と百合シチュを嗅ぎ分け、「甘い匂いがするモフ~」と言いながら主役たちを物語のホットスポットに誘導するモフルンは、今週もいい仕事していた。
みらいの心細さを代弁するところとかは、非常に正しいメンターの仕事をしていて『信頼できるぬいぐるみだ、モフルン……』という気持ちになる。
しかしあまりにも的確にリコみらを百合シチュに誘導する姿に、質の悪い百合男子(いや女子かもしんねーけど)のオーラを感じ取り震える……結局子供まで出来たしな。
今後もドシドシ友情行為の種を作って、お話を整える仕事をがんばって欲しいものだ。

そんなこんなで、魔法世界の学園部分をざっと見せつつ、『ふたり』の複雑で濃厚な関係を切り取る話でした。
正直お話との距離感を掴みかねていたまほプですが、ここまで『ふたり』に徹底してカメラを向け続けられると、やりたいことも見えてきた印象。
まず『ふたり』の基本構図を描ききる意図と、そこから発展していく未来が気になる、魔法つかいプリキュアの第四話でした。