イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブブキ・ブランキ:第9話『拳と拳』感想

巨人と少年という、考えてみるとかなりあざといパーツで構成されてる3D変速戦隊モノアニメ、今週は東の奮起と愉快な仲間たち。
アメリカもロシアも礼央子組も良いトス上げをし、自分のキャラ立てに余念がないのだが、やっぱり主人公チームの受け方が惜しすぎる。
余計ごとを台詞にして、心停止の理由を明言しないバランスの悪さもそうだし、静流の復調にロシアの双子(と背後にいる先生)だけが関係し、主役チームの誰も関わらない繋がりの悪さも気になる。
脇役は自己主張と他キャラへのワッショイが良いバランスなのに、なんで主役周りだけがこうも致命的なのか……ブブキだからか。

思うに、東周りは凝った表現をやろうとして伝わらない感じが強い。
例えばエピゾの過去(≒戦う理由)は直線的に回想で示されるのに、東の心臓が止まった理由(≒戦えなくなった理由)は台詞でも映像でも説明されず、硬い心境説明ゼリフを積み重ねて推測してくれ、という造りになっている。
いるのだが、柊以外がそんなにリーダーを大事にしなかったおかげで、絆パワーで立ち上がる展開に熱気と説得力が足らないと感じてしまう。
心停止してもエピゾを慕うアメリカチームとか、部下に『ありがとう』が言える礼央子スタイルとか、脇役は真っ直ぐやって真っ直ぐ成果を出しているだけに、主役周辺だけ効果の無い迂回路で表現するのは惜しくなる。

『Heart』とは『負けん気』や『最も大事な中枢』も意味する言葉で、そういう意味で「お前のハートを見せてみろ!」と吠えたエピゾの台詞は、心臓でブランキが動く世界設定を踏まえた良いトス上げである。
いい子ちゃんで面白みのなかった東が、真っ向からステゴロする展開もキャラの地金が見えて良い。
そういうお膳立ては良いんだが、このアニメ助走をすました後の跳躍が主人公周りだけ良くなくて、視聴者(ていうか僕)に納得出来ない流れで問題を克服し、力をつけて成長してしまう。
他のキャラクターはそうでもないのに、東の人格的跳躍だけ納得がいかず、彼が主人公である以上その跳躍に物語全体の盛り上がりが依存するわけだ。
惜しい、極めて惜しい。

ここら辺は、『察しが良くて的確に行動を取れる、非言語型天才主人公』という東のキャラ付けを、劇作の中で活用しようとして逆に足を引っ張られている部分な気がする。
東は言葉に頼らなくても大事なものが判るキャラクターなのだけど、それを出力する回路が胡乱にすぎて、あまりうまく機能していない。
少なくとも僕には、勝手に納得して勝手に進んでいってしまう、あんま視聴者を乗っけてくれない主人公になってしまっているように思う。
『キャラクターは完璧な存在ではなく、傷つき痛みそこから立ち上がる存在なのだ』という事実を見せることはとても大事であり、今回の心停止は東に視聴者を背負わせるチャンスだったと思うのだが、やっぱ僕にとって東は遠いし、好きにもなれない。

東に関しても、もっと最短距離の、真っ直ぐな表現をしてしまって良いように思うのだ。
他のキャラクターで炸裂している頭の弱さは見ていてとても楽しい、このアニメの強みなわけで、東だけが冷静で賢いまま祭りに乗り遅れてしまっているのは、アニメの一番美味しいところを、一番美味しいキャラクターに分け与えない行為だと思う。
せっかくエピゾという良いトス役がいたというのに、惜しい、極めて惜しい。


惜しいといえば、静流がロシアの双子とだけ絡んで復活したのも惜しかった。
今後話をふくらませていく上で双子と因縁を作りたかったんだろうが、静流が抱えている悩みや傷は、一応チームメイトであるはずの主役たちとは共有されず、敵であるはずの石蕗やロシアと『だけ』共有され、解決してしまう。
キャラクターの傷は視聴者だけではなく、他のキャラクターとの共感を生み出す足場になるはずで、それを一番絡みが多い(はずの)チームメイトと共有しないのは、惜しい、全く惜しい。

話が外に広がっていく事自体は大歓迎であり、例えば柊は間やリュイスなんかと上手い絡みを見せつつ、東との絆を深める動きを上手くこなしている。
しかしそれはやっぱり、一番大事なもの(として作中で描かれている)であるチームメイト、東との交流をしっかり果たしているからこそ機能する脇道であり、現状自分の問題をチームメイトのだれとも話せていない静流の孤立は、『五人の気持ちと繋がりで動くブランキ』という設定と、かみ合わせが悪い気がするのだ。

双子との戦闘で黄金なり木乃亜なり助太刀にすれば良かったんだろうが、『異質な天才児』というキャラクターを大事にした結果、特にピンチに陥ることなく静流は状況を切り抜けてしまう。
東の『穏やかな天才』と同じように、キャラクターの持っている要素を大事に話を展開させた結果、オーソドックス(ありきたりと言い換えても、価値は減らないだろう)な展開が持っている熱量や収まりの良さが、メインキャラから逃げている感覚を受ける。
静流のホワホワしたキャラと、完全無敵に超俺つええええっぷりは見てて気持ちいいんだがな……だからこそ、惜しいか。

双子のアホアホブラコンっぷりとか、石ころ共のマジつええっぷりとか、人種構成が豊かなアメリカチームとか、ハートの話になった時静流が腰につけてるハート型のアクセサリから画面に入る所とか、好きなポイントは本当にたくさんある。
つうか、主役サイドでも柊は真っ直ぐで良い動きしているし、礼央子もアメリカもロシアも、ブランキの設定からして一番大事な『チームの信頼感』が小さな描写で伝わってくる強さもある。
ホント、東という主人公、『作品の心臓』が生み出す鼓動が弱いことが、勿体無いアニメである。

今回の心停止でうまーく波に乗っかり、作品の温度に相応しい活きたキャラクターになってくれるかと思ったんだが……正直僕は上手く行かなかったと感じた。
このままどうにも鼓動が合わない主人公を真ん中に据えて進んでいくのか、はたまた歯車が噛み合って最高の速度を出し始めるのか。
好きな部分と乗れない部分がかなりハッキリしてきた、九話目のブブキでした。
……1クールなら残り4話だけど、収まるどころは話広げてるな……。