イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

魔法つかいプリキュア!:第5話『氷の島ですれ違い!? 魔法がつなぐ友情!』感想

不思議な世界で運命と出会うアニメ、今週はプリキュア恒例ケンカ回。
不思議な赤ん坊や学友は今回もアクセント程度にとどめておいて、メインはやっぱり濃厚に『ふたり』なアニメでした。
これまでハッピームードに進めてきた所で初めての衝突が起きたり、みらいのマイナスポイントが顔を出してきたり、色々変化もあるけど基本形自体はそこまで変化なし。
やっぱじっくり進めるなぁ、今年のプリキュア

今回は『出来る』みらいの無神経さと、『出来ない』リコの苛立ちが正面衝突……というには優しいぶつかり合いをして、お互いを分かり合うお話でした。
イラッとして激しく言い合いそうになると、クマやら赤ん坊やらが水入れに走り回る辺りが、製作者がこのお話のハードさを操作したい意識がよく見える。
反目しつつも物理的に近い距離を維持してるし、そもそもそこまでシリアスなぶつかり合いではないわけですが、それでも真っ向から衝突して離れていく展開は入れない所に、最近の女児アニらしいケアを感じます。

ぶつかり合いの方も、いつものように物事の本質を手早くみらいが掴み、彼女が先に折れる形で収束していきます。
この天才性は『おしくらまんじゅう』という最短の回り道を速攻で思いつき、実際にスタンプを回収してしまう前半と分かりやすい対比を為している。
今回お互いの個性を尊重しあうソフトな着陸をしたとはいえ、みらいの直感力や実行力はリコにはないものだし、それは根本的にポジティブな結果を連れてくる、優れた能力です。

これに対しリコは今回もまた、自分が間違っていることを最初には理解できないし、正しい方法には二番目にたどり着くという、みらいの背中を追いかける立ち位置でした。
リコが人間力的にみらいに劣っていることで衝突と和解のドラマもスムーズに生まれるわけで、この一方的な追いかけっこは基本的構図として安定感がある。
のだが、無能なリコが諦めず続けてきた『努力と根性』にも価値があると僕は思うし、合間合間の描写からは製作者もそう感じていると、受け取ることも出来る。
来週リコ最大のコンプレックスであろう『優秀な姉』が出てくるところから見ても、『みらいを追いかけるリコ』という基本構図をしばらく強調していくだろうが、個人的な好みとしてはリコの尊厳にも目配せして欲しい。

そういう意味では、たとえ苛立ち紛れの八つ当たりだったとしても、『お客さんがお祭り騒ぎに浮かれてただけ』と言い切ったリコの姿は、個人的には良かった。
それは14年間、魔法を使えることが当たり前の世界で『当たり前』が出来ないまま頑張ってきた、努力と根性の人だけが言える言葉だろうから。
確かに今回のリコは屈辱と反感に突き動かされた『悪い子』なんだけど、その暴走に含まれる一分の理をしっかり救い上げるくらいの脇目は、たとえ『子供向け』の物語だとしても(個人的な意見としては、むしろだからこそ)使って欲しいと思う。


一本気で脇目を振らない、シンプルで真っ直ぐな(もしくは単純で幼稚な)劇作というのは、まほプの分かりやすい特長だと思う。
ここ5話までこのアニメは、新キャラクターの顔見世はあっても軸は常にリコとみらいの人格の掘り下げ、『ふたり』の関係性描写にしぼり、かなり素直な物語を展開している。
それが『あらゆる場所に目配せをし、重層的に物語を連動させ、テーマ性のぶっとい背骨を入れる劇作は前作でやりきっているので、別の話をやろう』という意気込みの現れなのか
明らかに上がりすぎた複雑性と対象年齢を下げ、もう一度勝負を仕掛けるためにあえてペースを落としているのか。
そこら辺は一視聴者には分からないけど、一本気な密度の濃さを感じつつ、やはり個人的な好みからしても、もはや児童足り得ないオッサン視聴者の立場としても、もう少し早くて難しい話を求める気持ちは、正直ある。
しかしまぁ、まほプの狙いも強さも、そこには最初から無いのだろう。

一つ気になるのは、中学生という年齢設定が、シンプルな劇作とあまり噛み合っていない気がする。
前回は過剰に大人っぽかったが、今回は過剰に子供っぽいというか、実年齢も精神面に合わせて小学生で良いんじゃないかな……と思わなくもない。
プリキュアシリーズの伝統』とか、『女児の憧れを捕まえるための年齢設定』とか、『そもそもプリキュアの中学生は大概子供っぽい』とか、色々あるんだろうけども、同時期に放送が始まった"リルリルフェアリル"が、非常に上手く主人公達の幼さ(何しろ妖精なので、生まれたばかりだ)を活かしていて、不要かつ傲慢だと分かっていても比べてしまいたくなる。
比べた所で前提条件が変わるわけじゃないから、かなり詮無いけどさ……ここら辺は魔法界を舞台にしたバカンスが続いていて、中学生なりの責任や自我が大事になるだろう現実界編が始まっていないのも、結構関係してそうだな。

一年間50話以上という長い時間を走るアニメなので、その1/10が終わった段階で大きなことは言えない。
そもそも魔法つかいプリキュアというアニメがどこにたどり着きたいのか、その全体像すら僕には見えていない状態だ。
『ふたり』に拘ることで掘り下げられる緻密さやチャーミングさを見守りつつ、このコンパくとなアニメがどこにたどり着くのか、しばらく追いかけたい気持ちである。