イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~:第10話『ジャバウォックの鑑札』感想

キュートガールがぽぽけーっと日常を謳歌するアニメ、今週は吹奏楽部地区予選!
という盛り上がるイベントにも関わらず、尺の殆どが飼い主探しとチカちゃんのキュート描写に費やされる辺り、このアニメらしい展開だった。
『草壁先生の過去』という本ネタを効果的に開示するために、その輪郭線を一話かけてなぞるような話だったな、今回は。

ハルチカにはよくあることで、世間的には大事っぽい予選の過程と結果だとか、犬泥棒(未遂)への社会的制裁だとかは、今回殆ど描かれません。
んじゃあ何を描いていたのかというと、まずは草壁先生。
ハルタが最後の一歩で詰め切れない真実を登場後五秒で詰めて、一気に事件を解決まで引っ張り上げる豪腕は、メンターであり恋の対象でもある草壁先生の強キャラっぷりをよく見せていました。
そんな彼が抱えている過去、クラシックに指揮者をやめることになった『あんなこと』とはどういうことかを仄めかすのが、今回のお話の一つの軸です。
強キャラであるがゆえに、先生の抱えているミステリを解くことが一つのクライマックスになる構造になっていて、お膳立てもじっくりやりますね。

今回の事件は部員探しにも関係しないし、解決も結構サラッとしています。
勿論『母親が親権取れないほどの重事情って何があったの?』とか、足を止めて考えれば色々重たいわけですが、しれっと逃げた偽飼い主含めて、事件への関り合いはかなりあっさりしている。
これは、事件を通して草壁先生の事情を予感させる事が大事であり、事件それ自体を重たくしたくなかったからかなぁ、などと考えました。
女の子が置かれ、ハルタと先生が解決の緒をつけた『二度と会えないような別れ』が先生にもあって、それが『あんなこと』に深く関係している、もしかしたら結婚関係のトラブルの果てにこうなっている。
そういうサインを出すのが、今回のエピソードの狙いかと思います。
善人なんだか悪人なんだかよく分かんない諏訪部声の記者も、過去をほじくり返す役として再登場するのかしらね?


もう一個の軸はチカちゃんでして、まぁいつも軸といえば軸なのですが、元気に明るくお馬鹿に人生を楽しむ高校二年生が、よく切り取られたエピソードでした。
やっぱチカちゃんのバカっぽい動きの数々は見ていて楽しくて、彼女を主人公兼ヒロインに据えたのはこのアニメの成功に大きく寄与しているなぁと思います。
アバンに五歳児救出シーケンスを置くことで、ただのアホの子ではなく善人のアホの子であることを再確認する所とか、好きな味付け。

部員があんまり事件に絡まない展開でしたが、勝負の場を控えてなお賑やかに、楽しく暮らしている陽気な面々の日常がよく見えて、そこら辺の描写も良かったです。
練習も結果も描かず、弾みまくる彼らの青春を切り取ることに注力してるのを見ると、吹奏楽で優劣をつけることそれ自体よりも、部活という場所に色んな連中が集まって青春することが、このアニメでは大事なんだなぁと思う。
部員じゃないのにチカちゃんの面倒を見まくる芹澤さんを見ていると、『ああ……この子も成島さんのように、ただのかわいいいきものにそろそろチェンジするんだな……チカちゃんのメガネ女子陥落粒子の餌食になるんだな……もうなってるな……』という気持ちが膨らんで、とても穏やかな気持になれますね。
今週は後輩と双子の描写が好きだったなぁ……吹奏楽部内の居心地良さそうな空気の描き方も、このアニメを見ていて楽しいポイントだわな。

というわけで、肩の力を抜いてじっくりと展開したエピソードでした。
今回作った土台で草壁先生のミステリがどういう飛躍をするのか楽しみであると同時に、ゆったりと切り取られた彼らの日常を浴びるのが幸福な回でもあったなぁ。
作品やキャラクターを好きになって、フィクションがまるで隣人の物語であるかのような親しみやすさを覚え始めると、アニメをすごく素直に楽しみ、喜べる。
そういう感覚を思い出させてくれるハルチカが、僕はとても好きです。