イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

僕だけがいない街:第10話『歓喜』感想

時を駆け抜けて理不尽に抗する時空ミステリ、第10話はまさかの、そして納得の結末。
『ああ"僕だけがいない街"ってそういうことかぁ……あとOPの水流』と、呆然となりながらも納得してしまう、ヒーローの敗北と勝利のエピソードでした。
生け贄の供犠台に自分から乗っかっちゃう悟の浅はかさを悔しく思いつつ、同時に『まぁ、そうなるな……』と頷いてしまう作りの上手さは、やっぱ各キャラクターが見ている世界を厳密に管理してきた蓄積のおかげだよなぁ……。

というわけで、やっぱり先生が犯人でした!
土下座回避出来てラッキーって感じですが、同時に見事に勝ち逃げされ主人公は殺され……てないまでも、手痛いダメージを追ってしまったわけで、推理が当たってありがとうって感じではない。
元々半分くらい犯人を特定させた上で、『何故ここまで巧妙な計画が可能なのか』という『WHY』の部分に興味を集める造りではあるので、悟の裏をかいて罠を張り巡らせた手際の良さを褒めたいやら、やっぱ死ねっッて思うやら、複雑だ。

このアニメ印象を作るのが巧いアニメで、露骨に強調される手袋の不気味さだとか、すっと切り替わる宮本さんの演技だとか、タメにタメた先生への疑念が確信に変わる分岐点に相応しい、良いムード作りでした。
車に乗ってからの風景変化が特に印象的で、まだぬくもりを残す夕焼けの街から、トンネルという境界線の中での告白、一瞬で死の闇に包まれている夜の世界という切り替えが、悟の絶望とシンクロしてて良い。
ここら辺の印象変化は今回の中だけではなく、少年探偵団が順当に事件を解決している時の安心感と、それを手助けしてくれる『良い大人』八代への信頼が、的に致命的な情報を流す油断に変化する構図にも使われてます。
必要なショックを的確に与える手際ってのはサスペンスに絶対必要なわけで、これが巧いってのはこのアニメの強いところよね。

思い返してみると、先生の怪しいポイントというのはうまーく悟の目に触れない所で開示されていて、全ての情報を統合して見る『神の目』を持っている視聴者には真相を暗示しつつ、一度罠に噛み砕かれないといけない悟には気づかれないという、情報格差を巧く生んでいました。
容疑者候補の数が少ないので、メタ的な消去法で犯人わかっちゃうといえばそうなんだけど、このように情報を的確に絞りこみ必要なタイミングで出すことで、良い具合に視聴者を誘導してきたことが、今回の告白のショックに繋がる気がする。
完全に情報を遮断して展開すれば納得出来ない展開になっちゃうし、情報を開示しすぎれば緊張感がなくなるしで、ここら辺の塩梅は難しいわけですが、今回これ以上ないほどに犯人の告白がクライマックスとして機能していたことから見ても、良い運び方だったと思います。


しかし、悟は惜しかった……友達の助けも借りつつ中西さんを攻略した時は、希望が見えたと思ったんだがなぁ……。
リバイバルによってレールが切り替わったことは、お母さんや雛月を襲う悲劇を回避する希望でもあるんだけど、先の展開が読めなくなって焦る原因にもなる諸刃の刃。
リバイバル使ってもしんどい状況にしかならないことといい、能力を生死に関わらせつつ、それを不公平に感じさせない工夫が良く効いている展開だ。

悟がかつて失い、守りたかったものは一応守れたが、悟自身がそのための生け贄となってしまう今回の展開。
まだ二話ある(……後二話しかないの? マジ!? 終わんの!?)ので、ここで悟がぶっ死んでオシマイ、とはならないと思うけども、苦さと達成感が入り交じる良い『第一部・完』だと思います。
八代がサイコ口調で言ってた餞の言葉は八割煽りなんだが、二割ほど真実も混じっていて、悟が頑張って頑張って辿り着いた一つの結末として『僕だけがいない、平和な街』がやって来て、死人の数が三人(死刑囚であるユウキさんも含めれば四人か)から一人に減ったのは、なんとかもぎ取った苦い勝利ではあるのだ。

しかしまぁ、善人の皮を被ったクソサイコが勝ち逃げしたのは事実であり、人知れず戦ったヒーローが川に沈んだ結末に納得がいくわけではない。
これから話がどう転がるのかサッパリ読めないが、走馬灯の中で思い描いていた悟の守りたかった大事なものたち、そして悟自身が幸福になれるような展開が来てくれないと、やっぱり納得できんわけで。
八代の手強さ、底の知れない邪悪さが公開情報となった今こそ、キッチリケジメを付けヒーロー大勝利となる次の幕に期待が高まります。
正義を試す蹉跌の厳しさに妥協がないからこそ、このお話のヒロイズムって公平なんだとは思うし、そこを厳しくやってるってことはヒーローに勝たせるつもりのある、希望に向かっているお話だってのも理解してるんだが、やっぱ頼れる主人公の敗北は苦いわけさ。
俺、悟の事好きだしね。