イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うしおととら:第27話『風が吹く』感想

三ヶ月ぶりのご無沙汰でございます! 週替りの奇跡の神話、今ここに現臨ッ!!
というわけで、うしとら後半クールの開始は『たっぷりうしおと麻子のキャイキャイシーンで楽しんでね! 五分経ったら全部ぶっ飛ばすからね!!!』という、ジュビロ式希望と絶望の相転移エンジンから開始であります。
なんの説明もなくしれっと西の妖怪が出てきたり、記憶消去の激浪に隠して設定説明を一気に済ませたり、色々無理も押し通しつつ、ヒーローが戦う理由から奪う白面の悪辣さ、そこをくぐり抜けた助力者たちのありがたさが光る出だしとなりました。

今回はとにかく序盤が良くて、気合の入った桜景色の中で幸せなじゃれ合いを展開し、それを前フリなく一瞬で全てを奪う落差が素晴らしかったです。
麻子の表情変化や仕草の芝居も凄く可愛くて、マジヒロイン力高かった……後半真由子の告白を受けるシーンもにゅるりと動いていて、愛されてんなぁマジって感じだ。
『潮は槍や肉体で戦っているのではなく、背後に背負った色んな人との絆、記憶でもって戦っているただの中学生』というのはこれまで何度も描かれていたわけですが、麻子という一番大事な存在を使って、最高にいい感じのラブでコメな桜吹雪でムード出して、その原理を説明ではなく描写する。
骨身に染みて『ああ……こいつらイイなぁ……本当に良い』と視聴者が実感した所で、それを残忍に奪うことで、潮の足場が崩れたショックと、白面の悪辣さを一気に理解させる。
この追い込み方が本当に容赦なくて、素晴らしかったです。

桜吹雪はただ綺麗なだけではなく、その鮮やかさが一瞬で失われることで麻子の変化と、それによって砕かれた潮の日常がよく分かる、良く出来た舞台装置でした。
今回吹いたアムネジアの風は、ヒーローのパワーソースを根こそぎ奪う、ストーリー上とても大きな転換点なので、印象的に演出してくれたのは良かったなぁ。
そこで終わらせずに、麻子を追いかけてストーカー扱いされたり、あれだけ優しかった麻子の親父さんも潮のことを忘れてしまっていたり、きっちり追い討ち入れてドブに沈めたのも良かった。
見知らぬストーカー少年にも暖かいメシを出してくれる辺り、ホント麻子の親父さんは出来た人なんだが、今はその優しさが痛い……。


そして、そんな風に潮をボッ叩きにして追い込んだからこそ、最高の相棒がしっかり潮を覚えている展開が、最高に響くわけです。
ヒーローにとって逆境とは、理不尽を押し付けられて苦悩するだけではなく、人間の底力を確かめる試金石でもある。
しかし今回の追い詰め方は『記憶を奪う』という間接的な搦め手……であると同時に、潮の根本を攻める急所手でもあるわけで、一人で乗りきれるものではない。
そこで『記憶を失っていない』存在としてまずとらちゃんが出てきて、潮が戦う理由が完全には消滅しておらず、まだ逆転の目があることを確信させてくれる一連の流れは、やっぱ最高に気持ちがいい。
とらちゃんは1クール挟んでも最高のツンデレアーツ使いでして、相変わらずの『べ、別にあんたのために励ましてるわけじゃないからね!』が一番似合うケダモノだったね。

とらちゃんとキャイキャイして心の平穏を取り戻した後も、圧縮された展開は凄い落差で進む。
仲間だったはずの妖怪軍団がヒロインズを浚いに来たり、追いかけて即座に墜落してみたり、小夜に拾われつつ状況説明を受けたり、槍がぶっ壊れるという予言を貰ったり、イベント盛り沢山だ。
ここら辺は圧縮したり、飛ばしたり、飛ばした描写をしれっと『あったこと』として演出しないと、尺が取り回しきれない哀しみやね。
でもギューっとお話が詰まった話がクール頭に来ると、視聴者側も緩まないですむので、個人的には悪いコトばっかではないと思った。

トチ狂い妖怪軍団に攫われたヒロインズですが、良い作画でメスの顔したり譲り合ったりして、ヒロイン力を貯めておった。
序盤非常にシビアに潮を切り捨てて、『ヒロインズ、やっぱダメかぁ~』という気持ちを生んでおいて、かすかな希望と絆をここで見せることで『もしかしたらイケるかも~』と上げ調子に切り替えるところは、『落差』を演出の基調に据えた今回らしいお話でした。
下げっぱなしだとマジ心が持たないので、『潮-とらラインだけではなく、潮-麻子&真由子のラインもまだ切れてないよ!』と教えてくれるあのシーンは、面白いだけではなく有り難いねホント。

真由子の切ない心情が語られてましたが、これは潮が同じシーンにいないから、記憶を失っているからこそ成立していると思います。
あと開幕五分で濃厚に麻子とラブコメして、お話全体が恋の桜色に染まってたのも大きい。
恋バナする空気だったというか。
まともな状況であれ言ったら、結構恩着せがましい女になっちまうわけで、『記憶消去』という異常状況に乗せて、普段は覆い隠している真実を告白してきたのは、良いタイミングだと思いました。


そんなわけで、うしとら復帰第一発目はどどーんと状況が動く、落差のある回でした。
この記憶消去が潮だけではなく、視聴者にとっても『や、やべぇ』となるのは、『身体的な強さではなく、他人との繋がりと精神的な正しさこそヒーローの条件』というのを、しっかり描いてきたからこそだよなぁ。
『状況を整理し反撃の準備が整う!』という上げ調子で今回は引いてますが、この後また人間の脳みそでは想像もつかないようなエグい絶望(褒め言葉)が待っていて、アニメでしか出来ない表現力でしっかり描いてくれると思うと、今から楽しみで胃が痛いです。
麻子ほんと可愛かったなあ……ジュビロ絵の圧力を最大限生かしつつ、必要なところにアレンジを入れて今食える絵になっているのは、ホントアニメが頑張ってくれているところだと思います。