イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

チア男子:第2話『始まりのチアスマイル』感想

大学生で男子チア! ニッチを徹底的に攻め倒すトンチキ日常部活青春アニメ、エンジンかかってきた第二話。
状況やキャラクターの説明が多めだった第1話でしたが、キャラが揃って話が回り始め、第2話でかなり勢いがついてきました。
トンが入ったことで人間関係の四角形が生まれ、キャラクターがよく見えてきたし、チア部に何が出来るのか、新入部員加入という形で具体的に分かってきたのも嬉しい。
コミュ力お化けのカズがグイグイ引っ張ってくれるおかげで、人見知りな主人公でも話が停滞しないし、作品のポテンシャルが見えてきた第2話でしたね。

色んなモノを借りて話が転がる土台を作った第1話に比べ、今回は主人公たちだからこそ出来る、BREKERSの小さなオリジナリティが的確に表現されていました。
ユニフォームはないし、演技はやりきれてないし、色々足りないところはあるけど、それでも自分たちなりに精一杯やって、それが結果を引き寄せてくる。
非常にポジティブな行動と結果の連鎖が今回の話しにはたくさんあって、見応え充分な仕上がりでした。

決意を込めて踏み込んだ一歩が、どんどん頼れる仲間を連れてくるという『出会いの物語』がすごく気持ちよくて、ベーシックに攻めきる安定感がたまらん。
見知らぬトンが入ったことで、幼馴染のカズ、トンチキ人間のミゾとでは描ききれない、『知らないモノ同士がお互い歩み寄り、知り合いになっていく』過程がかけてたのは、すげー好き。
そうやって一歩ずつ分かり合うことで、チームスポーツであるチアーが成り立っていく足場が生まれるわけで、競技とドラマが支えあっているのが良いのよ。

三点倒立しか出来なかったトンが倒立できるようになったり、最初バラッバラだったユニフォームがなんとなく似通った感じになったり、遠慮がちだった呼び名がアダ名予備になったり。
始まったばかりの素人集団にふさわしく、成果一つ一つは小さいけれども、非常に具体的で手応えがある描写でした。
こういうコンパクトな『勝ち』を積み上げていくことで、エース二人が加入するクライマックスがしっかり盛り上がるし、お話にも生っぽさが生まれてくる。
地道な努力を地味に演出し続けたおかげで、タンブリングが入った時のケレンが非常に気持よく仕上がっていて、抑えるところと飛び出すところのバランスが非常に良かったと思います。

『出来る』ことを見せるためには、惨めでかっこ悪い『出来ない』部分をちゃんと見せるのが大事でして。
キャラで言うなら、メンタルお化けとしてどんどん前に出て部を引っ張っていくカズが『出来る』担当で、引っ込み思案なハルやデブなトンは『出来ない』担当でしょう。
カズが正解を弾き続けるから話は停滞せず進むわけですが、あらゆることが順風満帆に進んではドラマは生まれないから、『出来ない』奴が『出来る』ようになる過程は丁寧に、バカにせずしっかり描く。
カタルシスのある成長物語を作っていくうえで大事な基礎が、しっかり詰まっている展開でした。

あと、競技としてのチアーがどういう特性を持っていて、それぞれのポジションが何を必要としているのかしっかり説明したのは、とても良かった。
どんなスポーツでも固有のルール、固有の表情を持っているもので、その色合いの違いがわざわざそのスポーツをやる時の喜びに繋がってもいる。
競技が持つ固有の顔を蔑ろにせず、魅力を分かりやすく伝えたDVD鑑賞のシーンは、地味ながら巧くて大事な見せ場だったなぁと思います。
こういう凸凹なキャラクターが寄り集まる話では、ポジションごとにハードな仕事があって、それをこなすことでチームとしての成果が出るっていう住み分けが大事よね。


ハルが恥ずかしがり屋なのは、『男子チアは、なんか恥ずかしい』というパブリックイメージをしっかり作品に引き寄せていて、大事なところだと思います。
扱うモチーフが世間的にどう思われているのかをちゃんと描写することは、作品内部の描写を視聴者に引き寄せ、親近感を与える上でとても大事です。
実際BREAKERの初演技は遠巻きに見られ、ヒソヒソと噂される『恥ずかしいこと』なんだけど、その偏見をぶち破って真実に辿り着くカタルシスを強調する意味でも、『男子チアは、なんか恥ずかしい』という偏見を主人公が背負うのは、大きな物語的意味があると思います。
そればっかりだと話が先に進まないから、カズを行動力モンスターに設定して展開自体は彼が引っ張る構図にしてあるのが、非常に巧み。

ハルが感じる恥の感情は、他人の視線を気にする外面的なものであると同時に、彼が抱え込んだ内面的の限界でもあります。
しかしそこを乗り越え、しっかりやりきらなければチアーという競技は成立しないわけで、仲間と一緒に努力を積み重ね、自分の壁を破って笑顔を作り始める過程が今回丁寧に描かれていたのは、キャラクターの成長描写としてもとても良かった。
外面的な視線と内面的な感覚を、ハルという主人公を通して実感を込めて描写できているのは、作品がどういう風にチアを捉え、どう表現していきたいのか伝わりやすくて、とても良いですね。

恥ずかしさを乗り越え、一歩踏み出したその先にちゃんと報いがあるのも、見ていて気持ちが良かった。
特にカズのアツさを茶化さず素直に結果に繋げているところは、作品のまっすぐな印象をより強くしていて、非常にいいところです。
彼の熱意はちゃんと他人に伝わっていて、部員は精一杯努力して出来ないことが出来るようになるし、関西弁コンビも最高のタイミングでの乱入をキメて演技を成功させてくれる。
こういうポジティブな関係が繰り返されることで、作品全体が明るく前向きな雰囲気を帯びてきて、見てて『なんか良いな』って気分になれるのは、やっぱ大切よね。


キャラが増え話が回ってきたことで、役割分担の楽しさが浮かび上がってきたことも、人数の多いお話としてはグッドなポイント。
人間力で話を引っ張るカズ、行きつ戻りつしつつ『恥』と戦うハル、トリックスターとして場を盛り上げるミゾ、最後尾から健気に付いてくるトン。
キャラクターの四角形が非常に良いバランスで構築されていて、見ていて安定感がありました。
この上に新キャラが乗っかっていく展開が、16人集めきるまでは今後の基本になると思うので、土台が安定しているってのはすごく大事だ。

特に溝口の飛び道具的キャラ立ちは最高にズルくて、杉田さんの怪演で面白いこと言い続けるだけで、見てて面白くなってしまう。
ズレた道化野郎なんだけどチアーに対する思いは本気ってのも、笑いの合間でしっかり垣間見えて、一番大事な所をグズグズにしないのも良い。
わりかし地味めな話なので、出てくるだけで場が弾みだすキャラクターが一人いるってのは、中々に強いところですね。

あと地味にお姉ちゃんのヒロイン力が高くて、キャラ造形地味だけど上手いなって思った。
お姉ちゃんは『柔道をしているハル=過去』に固執することで、『チアをしているハル=現在』を試す役割を持っていて、ハルが胸を張って『チアをやるんだ!』と言えなかった今回は、彼自身過去を吹っ切れていない状況が良く見えた。
お姉ちゃんをチアで納得させることで、ハルが過去の敗北を振りきって前向きに歩き出したことがクリアに判るわけで、今後目指すべき一種のクエストとしてお姉ちゃんに存在意義がちゃんとあるのは、これまた堅牢だなぁと思います。
そこら辺の構図を台詞ではなく、表情と演技で見せてたのも今回良かったな。

あと『大学生』という特異なセッティングを活かして、独特の雰囲気を加速していたのも良かった。
お酒も飲めれば女の子と自由恋愛も出来る、4000円位なら懐から出せる『高校生』より自由な立場。
それ故いろんな事を自分でやらなければ結果がついてこない、責任のある立場。
それでいて『自分はこういう存在である』と胸を張っては言えない、思春期の影を振りきれない存在。
飲み会やサークル活動という日常描写を通して、キャラクターたちがどういう立場にいて、どういう物語が展開できるのか自然と予感できるのは、なかなかスマートでしたね。
部活モノなんだけど導き役になる大人が現状いないのは、大学生っぽくて面白い。
素人集団では限界が来た時に、スポットで参戦する感じなのかなぁ。


というわけで、ググッと話が転がり出す第2話でした。
やっぱ具体的な描写が積み重なり、作品内の報酬系が機能しだし、キャラクターが掛け合いをしだすと一気に物語は加速するなぁ。
成長物語としての手応えを十二分に感じさせる、手堅く面白いエピソードであり、今後の展開にも期待が膨らみます。

各々のポジションも定まり、タンブリングというキメ技も手に入ったBREAKERS。
思っていたより手際よく、かつキャラクターの個性を立てて人数を捌けていたので、キャラ数の多さに戸惑うことはなさそうです。
来週もまたトンチキな仲間が加わりそうですが、そこからどう物語が伸びていくのか。
非常に楽しみですね。