イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第104話『LOVE! デビル色! 魔力があればなんでもデビル!』感想

マーシーズン到来!! つーことで、赤ん坊と神グランプリと妹に続く三年目の柱、ガァルマゲドンの個別エピ。

濃いキャラしつつも根っこは凡人なあろまを主役に、相方たるみかんとの約束、そこから踏み出して広がった絆を巧く描写した、非常にストレートな成長物語でした。
『どーいう狙いの賑やかしだよ』と思っていたメガ兄VSパリ兄が、最後の逆転を生み出す伏線になってるところとかも、ふでやす脚本らしい細やかさ。
すげーいい話なんだけど、そのサブタイトルが松浦亜弥アントニオ猪木の融合ってのが、流石のプリパラよな。

ガァルマゲドンのお父さん担当・黒須あろまは濃い目の中二病キャラで才能の無さを覆い隠している、もしかすると作中随一の凡人です。
タイプとしてはみれぃに似ているんだけど、キャラ作りが徹底していることと、常にみかんという天才が隣りにいることで、彼女の才のなさはより際立っています。
今回のお話が『挑んで、負けて、また挑む』挑戦のお話になっているのも、彼女の凡人っぷりを強調しつつ、それがけして悪いものではないと確認するためなのでしょう。

ギャグで味付けしつつシビアな目線を入れてくるプリパライズムは今回も健在で、凡人であるあろまはヘロッヘロになるまで自分を追い込まないと、コーデを仕上げることが出来ない。
仕上がったコーデ案は強張りすぎで評価に値しないし、頑張りすぎた結果コーデ案とレシピを取り違えてしまう失態も演じる。
笑いでソフトになってはいますが、『才能のないものは、簡単に成果をつかむことが出来ない。無駄な努力は無駄に終わる』という見方は、最後まで徹底されています。

優しい世界の中にそういう厳しさがしっかりあればこそ、笑いに満ちたあろまの頑張りは僕らを楽しませつつ引き込み、彼女の苦闘を自然と応援してしまう。
ふざける時は徹底的にふざけつつ、成長物語に必要な根本的な真面目さはしっかり守り切るプリパラらしさが、今回非常に強く出ていたと思います。
まぁおふざけ魂がモロっと飛び出して、諏訪部VS諏訪部のみにくい嫉妬合戦とか、カレーうどんとかが合間に挟まれんだけどさ……なぜカレーうどん……。


今回はじっくりあろまを掘り下げる回だったので、普段の道化師っぷりに隠された優しさや真面目さが丁寧に描かれていて、凄く良かったです。
自分の非才が世間に評価されることを恐れる臆病さだとか、そこを乗り越える原因になるのがあろまとの過去の約束である優しさとか、才能の無さを自覚しているからこそ自分を追い込む必死さだとか、分厚いクマが真っ赤になるまで泣きはらしちゃう弱さとか、『黒須あろま』がみっしり詰まった30分であった……。
極端なキャラ付けをした異形の道化師が、ふとした瞬間に見せる人間らしい体温というものに僕は異常に弱くて、今回あろまが見せたマジっぷりと繊細さは、彼女がもっと好きになれる良い描写でした。

そんな『彼女らしさ』を引き出すパートナーとして、みかんも非常にいい動きをしていました。
普段は食欲モンスターとして場を引っ掻き回してばかりですが、長年の相方を見守る優しい目線とか、精一杯彼女をケアする献身とか、脇役に置いたからこそ見られる良さが全開で、これも素晴らしかった。
キチッぷりを活かしてお話を引っ張る主役だけではなく、お話の円陣になった相方をしっかり支えるサポート役も十二分に演じられるのは、エピソードを積み重ねてキャラが豊かに育った証拠だと思いました。

失敗に傷ついて道化師が流す本気の涙を土鍋の蓋で隠してあげる優しさとか、幼くて愚かであまりにも輝いてる『キミを世界で一番綺麗にしてあげる』という約束とか、ほんと今回はピュアピュアで殺しに来てたなぁ。
『全く知らない世界に飛び込んで、新しい友達をつくる』ことが仕事のらぁらでは掘り下げきれない、『過去から途切れず繋がる濃厚な感情』をキャラの真ん中に据えているだけあって、約束という時間にまつわるネタはあろまげが一番火力だせるかもしれん。
『なんで土鍋なん?』って疑問は当然あるけど、あろまの弱さだけではなくプライドも守ってあげる受け止め方が想定してるより成熟してて、キチキャラをエモさで押し流す造りは強いなと感じた。

あろみかはあまりに完成度が高くて、なかなか余人が入り込む隙間がないカップルなんですが、今回はそこにも踏み込んでいて。
凄く小さな時からずっと一緒にいて、お互いがお互いを補い合う強い関係を持っていることは、とても綺麗で尊く、大事なものです。
それを足場にあろまは踏み込む勇気を出すんだけど、それだけでは答えには辿りつけない。
二人を見守る大人であるネコさん、成長した二人が守らなければならないガァルルという、新しい出会いを思い出し、過去の尊さを維持したまま現在の変化を大事にしていくことこそ、凡人が成功に辿り着く鍵であるという話運び。
二人きりで完結していると思い込んでいた関係に、プリパラは何を与えたのかというのがよく見える、キャラと真正面から向かい合ったエピソードだと思います。


二人のお姉ちゃんによく懐き、そのピュアさで元気をくれるガァルルも、非常に良い描写をもらっていました。
『負の想念の集合体』という出自を持ち、林原声で世界を恨んでもおかしくないガァルルですが、気付けば作中随一のピュアピュアガールに育ち、その真っ白な眩しさに俺の意識はホワイトアウト寸前。
あろまの努力の結晶を届けるべく、小さい体で階段を登るシーンは『おいおいふでやすー、その玉速すぎ真っ直ぐすぎで、俺の胸貫通してんよー』ッて感じだった。
ベタな感動力で勝負するべき所を読み間違えず、茶化さず、きっちりやり切るのはホントプリパラらしい強さだ。

『全力で走るあろまを、信じて支える仲間』という関係性描写も、セットで描かれるシーンもりもりで凄い破壊力だった。
甘噛という彼女なりの愛情表現があろみかに受け入れていられる姿もヤバいし、ガァルマゲドンの末っ子としてみかんに抱きしめられ続けている姿もやばいし、つーか二人でけんけんぱして遊んでいるところの純粋さヤバいし、あろガァルマジやばかったなぁ……。
あろみかはらぁらより自分を抑えられない子供なんだけど、ガァルルっていうさらに幼い存在をケアすることで、相対的で絶対的な『大人らしさ』みたいのが強調されて、成長がしっかり見えるのが強いよね……他メンバーにはジュルルのお世話で同じ効果出しているので、ガァルマゲはプロト三期と言えなくもないのか。


んで、そんな四人が必死に頑張った結果神コーデを手に入れるんだけど、それはあろみかだけに与えられる。
散々『負け』と『負けからの勝ち』を描いてきたエピソードでガァルルを『負け』させて次回につなぐ構成の巧さに失神しかけましたが、『勝ち』と『負け』を受け止める三人の表情が圧倒的に凄すぎて。
神コーデを手に入れたこと、ひたむきさが無駄にならなかったことを喜びつつ、ガァルルというかけがえのない仲間に報奨が与えらなかったショックをまず露わにするあろまげ。
自分が報われなかった痛みより先に、仲間が報われた喜びを最大限発揮し、『負け』から生まれた故に『負け』を前向きに受け止める強さを見せるガァルル。
三人がどういう関係を作り上げて、そこにはどんな真心が詰まっているのか、最高によく分かる描写を積み上げてくれてマジ感謝しかねぇ。

世界の残酷さをあろまが乗り越えてハイおしまい、というわけではなく、そこからさらに発展させ彫り込む意思を強く感じさせる、良い引きでした。
あろまが『勝つ』過程をしっかり描いたことで、結構ショッキングな展開なんだけど『まぁ勝つだろ。負けの先にある価値をないがしろにしないアニメだろ』という信頼感が視聴者に生まれてて、来週を楽しみに待てるのが凄いね。
『ボーカルドールはパキると死ぬ』という、一期のエモさを支えた設定をしっかり絡めて状況を作ったのも、見事な設定活用としか言いようがない。
あそこで見せた『死』への真剣な態度を視聴者は覚えているはずで、それを再演することで『あそこで感じた物語的高揚がもう一度……!』て気持ちにもなるし、適切な期間をおいての再利用だから驚きもあるしで、マジうめぇ。
あとユニコンが反対するのはマジ判る……もう二度と、目の前で娘が死ぬのとか体験したくねーわな母としては。

ガァルルが健気でひたむきな子供だからこそ、お商売の都合とかアレソレでステージを共有できていない現状は、ファンとしては結構しんどくて。
今回のステージで3Dモデルをチラ見せしたのは、『判る……お前らの気持ちはよーく判る。コッチも商売だから! 今までそれに答えられなかったが!! 大丈夫俺達もあの子ら好きだからもうちょい待て!!!』というメッセージを強く感じました。
あれは『ガァルル用のでびえんモーションを作る手間はかけられなかったけど、モデルが有ることは分かったので、新曲来たら待望のガァルル3Dステージが見られるぞ!』っていう予告でもあって、徹底的にタメた展開といい、もう盛り上がるしかない状態を巧く作るなぁ。

あとねー、今回はじめてジュルルのお世話しないのに神コーデが与えられたの、結構大きいと思っていて。
ガァルルと同じように、健全な発育を段階を踏んで描写されているジュルルだけど、今回あろみかという『自分の延長線上にいない他人』の必死さをしっかり受け止めて、それに報いる姿勢を見せたってのは、大きな成長だと思うわけよ。
第100話でレオナと一緒に掘り下げたラインが、ついに一つの結果に結びついた感じがして、非常に良かったです。


というわけで、三期のガァルマゲドンサーガ序章として、非常に良い滑り出しでした。
あろまの必死な努力、みかんの優しさ、ガァルルの健気さと猫姐さんの包容力。
彼女らの良さを最大限称揚しつつ、笑いでくるんだ厳しさを愛情込めて本気で投げつけ、成長を促す見事な展開。
次回語られるだろうガァルルの物語にもしっかり繋げて、一切文句なしのテクニカルでエモーショナルなエピソードでした。

ガァルマゲは二期で掘り下げきれなかった分、物語的なリソースが結構残っているキャラであり、じっくり時間を使って盛り上げてくれています。
まさかのディープさで『死』と向かい合った名エピソードの流れを組んで展開される次回は、ただの健気な子どもではない、ボーカルドールという宿命を背負ったガァルルの物語です。
今回輝きに満ちて描かれた『負けからの勝ち』を引き継いで、ガァルルがこれまで見せてくれた純真と努力にしっかり報いる、素敵なお話になってくれると最高ですね。
まぁ神回確定だろうなぁ下世話な言い方すると……この流れで外せるほうがおかしいってアツさだもん今。