歌舞伎町シャーロックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
近頃都に流行るもの。獣の落書き、ヒーロー探偵、消えない因縁。
堀の中と外に引き裂かれた、カタギと犯罪者。出会って動き出すものもあれば、取り返せないものもある。
さて、ヒーロー探偵となったモリアーティー少年、何処へ向かって漕ぎ出すか?
そんな感じの、英雄探偵のデビュー戦である。メインの事件を横目に見つつ、濃口の男男関係が唸り続けるという、このアニメの真骨頂みたいな構成。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
やっぱモリアーティが戻ってくると、画面に艶と危うさが戻ってくるな…。この2つが噛み合うと、つまりエロティシズムが生まれる。モリエロい。素晴らしい
さて娑婆に戻ってきたモリアーティを歓迎するべく、長屋の仲間は手作りのパーティを企画する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
そこに背を向け、暗号解読に勤しむシャーロック。凶悪犯が事件を起こしては自殺するとき、つぶやく謎の数列。
動物暗号が軸になる今回、実はメインはこっちだ。
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暗号は暗号であることに気づけなければ、ただのノイズだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
後半戦を駆動させる円陣として、脱獄犯達の無軌道な暴走と、それを裏から操る構造を視聴者に意識させることは大事。
そこに意味を通すために、暗号を解読することで、解読できない暗号の存在を際立たせる。
それが今回のお話の主題…の一つだ。勿論帰還なったモリアーティの複雑な視線も、丁寧に積み重なっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
ワトソンくんは”そっち”にばかり目が行く、愚かでマトモな視線を持っている。だからホームズの社会不適合を歓迎会に向けるべく、世界の謎が描かれた暗号を消してしまう。
凡人と天才、見ている世界は違う。ホームズは世界の真実を見るが、それは時に排斥や無理解を生む、危うい特徴だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
ハドソン夫人が、御存知の通りヒゲモジャのレディだ。その真実をホームズは見て、子供のような筆致で書いて、罵声を浴びる。
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稚拙さ。成長できない子供っぽさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
それは探偵だけでなく、犯人にも共通する今回のモチーフだ。
サイゾウは堀の中で止まった時間のまま、自分の衰えにも、変わり果てた世界にも、マトモになってしまった相棒にも置いていかれる。ガキが出しだす汚れたドングリのように、大人はその価値がわからない。
しかし子供が見据える世界にこそ真実があることも、またある。ドングリを一般社会で通用する貨幣に変えるために、シャーロックは探偵という職業に落ち着いた。噺家の方は、憧れたがダメだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
そんなデコボコを上手く処理できないと、自覚なき人形として踊らされ、便利に潰されたりもする。
異質性に優しく、厳しい視線を向けているこのアニメらしい展開が、ホームズの理解されない天才性、真実の孤立から見えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
同時にワトソンくんの”マトモ”さが、ホームズにとって大きな救いになっているのも事実だ。そこをどう繋げ、より善く生きてくか。
この話が見据えているのは”そこ”な気がする
ホームズが感情のない推理機械”ではない”ことは、僕らはとう知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
プレゼント一つ手渡すにも、寿芸の形を借りないと出来ない歪な人間。彼もまた、難しい暗号のひとつなのかも知れない。
しかしそれを読み解く鍵も、この作品の中にある。
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ホームズにとって寄席の芸は、人が生きる意味を教えてくれる最高のものだ。だから、それを使ってモリアーティに帰還の挨拶をした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
長屋の仲間が驚く、初めてのプレゼント。ホームズなりのやり方でそれを届けようと思ったのは、やっぱりワトソンくんとの交流があってこそだろう。
しかしながら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
当のモリアーティはワトソンくんと距離を作って、イマイチ仮面の奥を見せない。
それは1クール目も彼の属性であり、魅力でもあった。空白にされた刑務所の中で、その”質”が変わった感じがある。
…むしろ、アレクが死んで抱え込んだ卵が、羽化を始めた形か?
なんとなれば惨殺すら辞さない、仮面の奥の凶暴性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
それと同じように、ホームズを慕い、彼を支え彼に支えられた関係性は本当のことだ。
それは意味深な視線の錯綜、身体的距離感の中に埋め込まれ、読まれるべき暗号として随所に顔を出す。
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一見『いつものバカバカしいお話』をなぞっているように見えて、その主軸から外れた視線のカットに、濃厚な感情複合が宿っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
そのコンプレックスこそがモリアーティを動かし、ホームズを引っ張る。今後の展開を左右する蜘蛛の巣は、既に張られているのだ。
モリアーティはホームズに自ら身を寄せる。(ワトソンくんには寄せない。その選別に、彼の世界観がある)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
ホームズも分かりやすい形では顕にしないが、モリアーティを大切に思っている。
回復されたかに思える関係性は、しかしなにか決定的なヒビを抱え込んで、妙に危うい。そこに、今後への期待がある
バッティングセンターでの三者三様も、キャラクターの内面を上手く見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
力んで上手く触れない凡人、何事も卒なくこなす仮面少年、むしろぶつかることを楽しむ変人。
三人は同じゲームを遊びつつ、それぞれフェンスに遮られ、別個の個性を持っている。
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日常の隙間から未来の断絶が滲むような、奇妙なペーソスのあるシーン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
そこに刻まれたノイズ…サイゾウからの暗号。子供じみた拙さと、子供ではありえない邪悪さが同居した、不気味なキメラ。
サイゾウに逃されることで、”マトモなカタギ”になれたサスケにとって、それは毒でしかない。
だから拭き取る。消そうとする。幼さ、わかりにくさ、不適合の奥に踏み込んで暗号を読むのではなく、拒絶する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
それは正しい。日常の小さな幸せは、凶悪な狂人が土足で踏み荒らして良いものじゃない。
しかしそれでも、取り残されざるを得ないものの哀しみはある。
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鼻に紙詰めたホームズは、この段階でそこまで読んでいたのか。ホームズの思案顔を見つめるモリアーティは、そこまで読んでいたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
後の主役たちは、内面を語らない。それはおいおい、事件の…多分とても辛くて悲しい事件の中で、見えてくるものなのだろう。
はー…怖いなぁ…(まんこわ的な意味で)
モリアーティーは自分を助けてくれた父の部屋に踏み込み、助けになろうとする。冷たく拒絶する父は、果たして何を考えているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
”誤解”と少年が語るものは、本当に真実ではないのか。
父子の長い長い距離は、埋まりうるものなのか。
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そこら辺もまた、暗号であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
それを読み解く探偵として、モリアーティはホームズの領域まで上がってくる。肩を並べ、共に同じ条件、同じレイヤーで勝負を挑んでくる。
第1クールにはなかった、朗らかな変化。
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気まぐれな心変わり、一瞬の遊び。そう思えるものの奥を、ホームズはジロリと睨みつけているように感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
しかしただ見ているだけでは足らなくて、人間の情に的確に手を差し伸べるためには、その最善な形での”マトモさ”が必要になる。賢いだけじゃ、心には触れないのだ。
それを、自分をビンタして熱い涙を流してくれたワトソンくんから学べるかが、危うい際に立つモリアーティに手が伸びるか、大事な境になる気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
とまれ、今は目の前の暗号事件。ボンクラ共が相変わらずの的外れを繰り広げる中、探偵共はとっとと真相を読む。
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モリアーティは、自前の脳みそで頻度解析が暗算できてしまうホームズの知性と、同等の場所にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
ワトソンくんと長屋の連中は、全然そこには追いつけない。白羽の矢に刻まれた暗号も、素直に読んで釣り出されてしまう…フリを利用して、間抜けな大泥棒を追い詰める一手に使われる。
原典勢と長屋勢の、探偵としての資質の差。それは同時に、怜悧な知性が人情味の温もりを遠ざける、人間性の差でもあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
今後、そこをどう混ぜ合わせ、善い結末を掴めるのか。そこが大事なんじゃないかな、と思っている。少なくともホームズは、結構学んでる感じするけどね。
さて、過去の亡霊にも時間は平等に降り注ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
相棒が身を捨てて自分をかばってくれたからこそ、マトモに暮らせたサスケ。
あの時の気持を檻の中で腐らせ、適切に成熟することが出来なかったサイゾウ。
二人の肉体は平等に老いたが、心はそうではない。
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サイゾウをおぞましく歪めてしまった、檻の中と外の隔絶。サスケがそっちに落ちなかったのは、サイゾウが犠牲になったおかげなのに、一緒に沈んでやる情は当然無い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
”マトモさ”は老醜を救わず、サイゾウは凶相も顕に破滅へと突き進んでいく。
それが人の宿命なのか、なにかに操作されたものなのか。
それを探る前に、探偵二人舞台、ホームズの領域にモリアーティが指をかける高座である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
『待ってました!』とは、とても言えない。そこによじ登るために少年が何かを犠牲にし、何かを歪めている描写が、画面に多すぎる。
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同時に何があっても隣りにいたいと願う、切な思いもしっかり刻まれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
それが肌に熱いからこそ、遂に上がってきてしまったモリアー亭の晴れ舞台は微笑ましく、危うく恐ろしい。
対等で特別な存在でいたいと願う、美しい気持ち。その奥に隠れている、巨大な怪物。
それがどういう表れをし、どうすれ違って破滅するかを描くのが、今回の事件でもあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
サイゾウは間抜けな表情を狂気で塗りつぶし、凶器を振るう。それはもう命を奪えないが、道化に見えたものも邪悪を振りかざせる。ジャックで学んだことだ。
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『助けてやってくれ』という依頼に、ホームズは首肯し、モリアーティは動かない。同じ高座の対等勝負、しかし情への官能には、大きな違いがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
その冷たさが、二人を決定的に分かつ一撃になりそうで、なかなか怖いのだ。卒なくこなす笑顔の優等生のほうが、変人より冷たいっつー…怖い構図だ。
サイゾウはかつてのように、華やかな舞台で大泥棒絵巻を繰り広げられない。サスケが正しく認識しているように、彼らはジジイなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
つまらねぇコンビニ強盗、ネオンのショボい照明、人質は弱いガキ。
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華やかさの欠片もない舞台の上で、モリアーティは筋立てに乗っかるように不自然に前に出て、不自然な言葉と仕草を使う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
おそらく、これが死を呼ぶ暗号なのだろう。それに踊らされる側ではなく、使う側に回っているのは彼の賢さだが、極めて恐ろしくもある。
賢いつもりが、人形遣いのお人形。
そういうオチの前触れのように、ヒーロー探偵の華麗なデビューはバイラルメディアに切り取られ、世間を埋め尽くす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
それが仕組まれた脚本であることは、明瞭に演出されている。そしてその危うさは、ホームズだけが気づいている。
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ホームズが人間関係にも長けた人格者なら、見つけた真実をとっとと公表し、事件を未然に防げるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
しかし彼の壊れたコミュニケーション性能は、真実を有効活用させることなく、悲劇を生み出していく。
名探偵が事件を前に活躍するためには、何処かで壊れている必要があるわけだ。
同時に、彼は聡明であっても全知ではない。凶悪犯の自殺体が作る、謎のジグソーパズル。ようやく戻ってきた暖かな日常の裏の、謀略の蜘蛛の巣。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
その全容を知るためには、もう少しの時間と詳察が必要だ。顔に痣のある男は、そんなパズルのどのピースなのか?
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謎が深まる中、時代の寵児となったヒーロー探偵は裏通り、ビルで切り取られた狭い空を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
それはアレクと一緒に”家”に閉じ込められたとき、ジャックを殺したときも彼を覆っていた、世界の全てだ。
檻を抜けて贖罪を果たしたように見えて、彼は何も変わっていない。
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その狭く息苦しい場所から、変人探偵は少年の真実を救いうるのか。そも、彼を取り巻く灰色の檻はどんな形をし、どんな変容を遂げていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
後半戦のエンジンがかかる、明るくも暗く、愚かしくも哀しいエピソードでした。相当に、モリアーティがヤバいな…色々覚悟したほうが良さそうだ。
檻と時間に置き去りにされ、友と世界に接合できなくなったサイゾウの暴走。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
それは変人探偵にも、それに並ぶとこまで駆け上がったヒーロー探偵にも無縁ではない。鋭すぎる才気と孤立は、破滅的な結末を引っ張り込むことがある。
高い場所から落下しないためには、マトモでバカな凡人が大事。
そんな男たちの三角関係が、より鮮明に見えてくるお話でした。やっぱ”ここ”がエンジンなんだろうなぁ…おもしれぇなこのアニメ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
華やかな舞台に躍り出たモリアーティーは、舞台裏で退屈を転がす。
ホームズだけが見据える真実の先、青い空が待つか、無様に落ちるか。次回も楽しみ。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月9日
おそらく二人の探偵を持ち前の人間性で受け止め、破滅の淵から引っ張り上げる特権を持ってるワトソンくんが『キャッチャー』として、サイゾウの暴力を受け止めたのは面白い。
ちょっとサリンジャーみもある、このアニメらしいシーンだったね。
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