小林さんちのメイドラゴンS を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
ガタガタの身体を抱える小林さんを、安らがせんと右往左往。
自分の献身は果たして、相手を塗り潰す押し付けなのか。
思いの外繊細なトールが辿り着いた、とっておきの居場所。
そこは弱っちい人間にとっても、求めていた安住の地で…。
そんな感じの人生お互い様劇場、ラス前はトール一本勝負なメイドラゴンS第11話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
エルマ、カンナと来たら…で待ち構えていたら、北之原孝將の繊細で静謐な表現力が力強くうねり、想定を超えた火力に全てが焼き尽くされた。
やっぱなー…思いの外内向きなトールが好き。
何かが新しく加わる話ではないのだけど、動き出した運命の裏に何があったか、そこで何を求めて何を今掴んでいるかを、言葉にして伝えることは、新たに手に入れるよりも豊かかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
第一期で辿り着いた大きなドラマに、無理くり新しい風を加えない、二期の語り口。
しかし焼き直しでも繰り返しでもない、静かに深く掘り下げられる”何か”がちゃんとあって、大変良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
前回描かれたカンナちゃんとの最高夏休みのように、隣り合って生活を重ねることだけが生み出せる分厚い地盤が、今の二人にはある。
それを確認できるエピソードでした。つええ…。
第1エピソードは無邪気な日常のスケッチで、相変わらずの社畜ぐらしで体を痛めた小林さんが、最高のプレミアムシートを手に入れるまでのお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
イルルが一緒にいるリビングも、すっかり日々に馴染んで…ありがたい…。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第11話より引用) pic.twitter.com/VcnCgiGeO4
トールは絶大な力で矮小な人間を塗りつぶして、自分に近い存在…あるいは同じ存在に変えることも出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
しかしそれは自分のしたいことではないし、滝谷が正しく指摘するように正しいことでもない。
自分と他人の線引。
溢れる愛をどの程度、どういう風に使うか。
そんな疑問は、同僚Sに探りを入れて初めてトールに湧き上がったわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
アーパー常時発情期に思えて、トールは非常に賢いし思考を止めない。
超越者である自分が、常人である小林さんとともにいることの意味と限界点は、ずっと考え続けている。
それはこっちに流れてきて剣を引っこ抜かれた時に、全てが変化したわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
イルルが駄菓子屋で過ごす”今”が、幼年期燃やしてしまった人形と切実に繋がっているように、思い悩んでファンタジー世界を流離った日々、孤独で愛を知らない過去と強く接続している。
皆かなりシリアスでヘヴィなファンタジーを足場にした上で、日常ほっこり異種間コミュニケーションを積み重ねているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
悩んで答えが出なかった異世界が、当たり前の日々が幸福に積み重なる日常のスパイスって扱いをされずに、連続性を保ったまま変化もしてる塩梅が好きである。
トールの”答え”がどこにあるかと言うと、間違いなく自分の尻尾をマッサージ椅子にする平和なリビングである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
サブタイトル回収、なんてことない毎日こそがかけがえない。
でもそれだけが、答えってわけでもない。
答えにたどり着かなかった日々も確かにあって、今も龍は人間がわからないままだ。
分からないから探し求めて、分断されているからこそ適切な距離を追い続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
ファンタジー出身の竜と現実出身の社畜という対比で分かりやすくなっているけども、これは人間と人間でも当然生まれる、悩みであり探求だ。
ずっと答えが出ずに探し続けるからこそ、誰かを大事に敬える。
そんな道に身を置いてるのは小林さんも同じで、だから”プレミアムシート”は二回出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
一回目は非常に明るいリビングの中で、日常コメディの一環として。
二回目は竜の重たい過去と、人間一人の魂に向き合う暗さを超えた場所で。
小林さんに差し出した居場所は、同時に差し出された答えでもある。
お互い均衡点を探してずっと揺らいでいる、固定された枠組みに安住しない歩み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
それが生み出すオンバランスの、永遠に続くようでいて思いの外危うい幸福。
このお話はずっとそれを描いて、境界線の上を歩く者たちを追ってきた。
トールが悩みながら川辺を歩くのは、非常に示唆的だ。
毎回大事にされてるんだけど、今回はトールの主役回、その表情がとても繊細に描かれているのが印象的である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
時に瞳の表現力が強くて、色んな色合いに変化する思慮深さが、長いまつげに飾られて良く判る。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第11話より引用) pic.twitter.com/f0vkw85IMN
彼女はずっとこの透明度と繊細さで世界を見つめ続けていて、かなり意識して騒がしくコメディをやっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
演じている、というわけではないだろう。
自分の寿命からすれば瞬きのような、掛け替えのない人と隣り合う短い日々に宿るもの。
それを輝かせるために、何が出来るか。何をするのか。
考えた結果、メイドをやって同族と共に暮らしているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
僕はトールの、そういうナイーブな思慮深さを表に出さないシャイネスが好きなので、今回多用される繊細なクローズアップは嬉しい表現だ。
エロティックコメディの主役を、こういう画角で描かざるを得ない。京都アニメーションだなぁ、と思う。
さて第2エピソードは小林さんが、日常の裏でひっそり展開しているファンタジーに、分け入っていくお話だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
構えていない所に入ったから、大きい声出ちゃったよなぁ、カンナちゃんを撫でる小林さんの絵…テオトコスじゃんどう見ても…。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第11話より引用) pic.twitter.com/Qlpj6mNp6R
第6話では翔太くんの世界をちょっと広げるだけかなと思っていた専務が、思いの外深くて暗い魔術の領域を象徴する、得体のしれないいいキャラに育ってたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
終焉帝ダディが、幼トールを想像より遥かに強く愛してたり。
父親たちの意外な顔が、もりもり押し寄せるエピソードでもある。
一期のラスボスとして登場して以来交流のなかった終焉帝が、小林さんがおっ立てた人間の証明で己を改め、スゲー率直に自分の”人間”見せてくれるの、なんか嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
同時に、本来あるべき場所に戻れてよかったね…という感覚も強い。
元々LOVEじゃん…トールも『甘える系でした』とは言ってたけど。
一個人として始まったはずの闘いは、党派を生み龍たちの在り方を固定していってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
色んな在り方があって良いはずなのに、『こういう者』と他人を縛り、自分を抑え込む見えない鎖。
終焉帝はそれを娘に伸ばさないために、色々考えて旅出せていた。ちびトール可愛いねぇ…。
トールは小林さんと運命的に出逢って、元々抱いていた疑問に答えを貰い、生き方を変えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
しかしその種子は、混沌勢筆頭と言われつつも考えを止めず、何をするべきかずっと悩んでいた父親が蒔き、継いだものだった。
思慮深く、不器用で真摯な所。
LOVEで繋がる似たもの親子だと判るの、ホント嬉しい
世界が戦争の赤に染まり、暗い闇に沈められる重たさの裏で、父は娘の真意を推察し、しかしそれが絶対の答えだと塗り潰しはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
絵画の中に閉じ込められたファンタジーと、優しい竜が辿り着いた場所。
瞳に反射する闘争のゲームと、水の中の光
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第11話より引用) pic.twitter.com/SSutSITZjs
トールが自分の適正距離を探ったのと同じ足取りで、小林さんは共にある存在の過去を考え、自分を探る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
神様が竜と人のあり方を決めてしまう、永遠の闘争に閉じ込められた世界。
それをぶっ壊そうとした、たった一人の最終決戦。
それを一方的に聞きっぱなしになんて、小林さんには出来ないのだ。
『認めんからな!』と釘は刺しつつ、踏み込む覚悟を見せたら包み隠さず伝えるあたり、終焉帝も小林さん買ってんだなー、と判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
まぁ自分が与えられなかった居場所を、酒の勢いで運命的に差し出せた英雄だし、自分自身にも答えをくれた存在だしな…そら、信頼もするよね。
ここですぐさま小林さんが我が家に戻らず、フラフラ境界を彷徨って心を固める描写が入るの、正しさを上から叩きつける感じが消えてて、とてもいいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
大事だからこそ思い悩んで、間合いを測る。
その仕草は、第1エピソードの…ここまで描かれたトールの足取りとそっくりだ。
歩んできた過去も、身に宿る力も全然違う二人が、それでも出逢って辿り着けた場所。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
そこに込められた思いを語る時、トールは明るく暖かい場所の扉を閉める。
多分カンナちゃんやイルルが、平和に寝ている場所だ。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第11話より引用) pic.twitter.com/cmz5UTvygN
例えば自分の想いを抱きしめるトールの仕草とか、凄く勝負どころの強い絵がサラッと短く、しかし確かに入りまくるのが今回の特徴かな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
滅茶苦茶印象的で象徴的なカットを、凄い瞬発力で使い倒すんだよね。
それが独自のリズムと叙情性を生んでました。凄く良かった。
無限に広がる世界と、永遠に繰り返される愚かさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
父に送り出された旅路の中で、トールは様々なものと出会い、考えていく。
親が戦争の準備に忙しくて、カンナが寂しがってると知ったのが、孤独な闘いに踏み出した一因だと思うなぁ…。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第11話より引用) pic.twitter.com/bmF1VmHGzr
龍形態があまりに雄大なルコアとか、色んなキャラの過去が見えるのも回想の良いところで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
虹とみまごう巨体は、そらー混沌だ秩序だというフレームには収まりきらんだろうから、自由な傍観勢にもなるだろうつー納得があったな。
ハイ・ファンタジー分補給、大変ありがたい。
旅の間もトールは、様々な在り方を見据え、色んな存在と対話する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
ロボットのように在り方を決められているあの世界のドラゴンとしては、ずっと変わり者だったのだろう。
色んな望み、色んな摩擦。
群れるほどに不自由に、滑稽に縛られていく。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第11話より引用) pic.twitter.com/PYfWWzcb1U
なら何も背負わず世界をぶっ壊して、全てを自由にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
それが結論だったはずなのに、たった一人になると涙が出た。
触れ合っては別れていく日々の中で、自分が求めていたもの。
それは刃に貫かれて、大地に叩き落されて…その傷に変な人間が手を差し伸べて、初めて解った夢だ。
トールが求めていたものが、混沌の龍が『そういうものだ』と定められた闘いではなく、孤独ではない自由、離れつつ触れ合える距離だったと、思い出させたのは小林さんである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
同時にそれは、ずっとトールの中にあった。
終焉帝が種を蒔き、旅と出会いが芽を出させていた。
でもそれは、たった一人の闘いという形にしか実を結ばなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
その不自由をずっと繰り返しているのが、あの世界の寂しさだなぁ、と思ったりする。
トールは敗北し追放される形で、元々噛み合わなかった宿命から自由になったのだろう。
そしてすぐさま、欲しいものをくれる人と出会えた。
トールと小林さんの出会いが呼び水になって、あの世界のルールに噛み合わないドラゴンたちがどんどん”こっち”にはみ出してくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
闘い以外の道を選んでも良い、ゲームしたり甘味貪ったりショタを翻弄しても良い自由な世界で、探していた居場所にすっぽりはまり込む。
でもそれは、ゴールでも答えでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
ずっと丁度いい場所を探し求めて、変化していく状況に合わせて、自分も位置を変えていく、活きた居場所だ。
枠にハマって固定されえば、この楽園もまた腐っていくだろう。あっちの世界の龍たちのように。
その危うさ、不誠実を感じ取ればこそ、小林さんは重いと判りつつトールの過去を聞き、又聞きで終わらせず当人から思いを受け取った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
そうやって思いを呼吸し合うことで、また新しい居場所が見つかって、一緒に明日を始められるから。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第11話より引用) pic.twitter.com/rzsVf6JS0m
トールが小林さんに頭をなでてもらえる距離は、尻尾に座れる距離。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
お互いが求めていた距離が重なっていることを確認して、プレミアムシートの物語は終わる。
それは既にあって、しかし一瞬一瞬新たに掴み取られるものだ。
色んな竜と人が、そこに挑む物語をこのアニメは、ずっと編んできた。
トールが『なりたかった』と述懐する”メイド”は、当然通り一遍のものではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
一方的な権力勾配で家事労働を簒奪される職業形態でもないし、一時期のヨーロッパ貴族社会に存在した職業文化でもない。
オタク文化でそれらを煮込んで、新手のファンタジーになったものでもないだろう。
なりたかったのは多分、”小林さんちのメイドラゴン”なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
世界でたった一人、自分の傷に手を添え家を与え隣に立ってくれた人が求める、在り方の形。
あらゆる形にはまらない、シッポが生えて時折インチキな、小林さんだけのメイド。
家族であり、恋人であり、恩人であり、戦友であり。
そのどれにも名付けられないような、あやふやでヘンテコな特別をこそ、彷徨う龍は求めていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
それは今間近にあって、自分の頭を撫でてくれる。
幸福を与えられるだけでなく、自分の尻尾をプレミアムシートとして供給できるような。
そんな当たり前の幸福を、大真面目に悩んで探っても良いような。
そういう存在としての”メイド”が、今のトールの幸福…であり、ファンタジックな世界に生まれ、旅して求めていた宝なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
龍は強欲で、一度掴んだ宝物を手放さない。
トールはずっと、小林さんの側を離れないだろう。
その生命が終わっても、溢れんばかりの思いを抱えて、ずっと一緒にいるだろう
二人それぞれ、今どういう距離感で自分と相手を置いているか書く話だからこそ、そのずっと先にあるだろう終焉と永遠の輪郭が、おぼろに見えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
そういう話でもあったと思います。
んーむ…”強い”な。皆一生仲良く、幸せに過ごしていて欲しい…。
世界の枠組みに縛られ、自由と孤独を求め抗う存在としての自分が、本当に求めていたもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
トールがそれを正確に掴み取っている描写が、この世界で小林さんと一緒に、それ以前に旅路の中で育んだものを語ってて、凄く良かったです。
ダディドラゴンがどんだけ娘よく見てたか、よーく解ったのも最高。
かくして波乱の少ない二期も残り一話、最高の満足と充実を胸に宿して、当たり前の夏祭りがやってきます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月17日
ドタバタ騒がしく、とても幸せで特別な日常が描かれて、このアニメもひとまずの幕でしょう。
一話先取りして、感想を告げておきます。
とても良いアニメでした。ありがとう。