輪るピングドラム 第14話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
新たなレールに進みだした運命が、時籠ゆりの仮面を剥ぐ。
艷やかな裸身に震えるは、赤黒いエゴとエロス。絡みつくは、情念と因縁。
恋に破れ、涙に濡れる少女に伸びる毒牙は、夜闇に照らされて妖しく光る。
その爛れた成熟が、彼女の全てなのか?
そんな感じのアクセルベタ踏み伊豆までレッツゴー! 山崎みつえの艷やかな筆致が暴れるエロティシズム回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
今まで変人でいいお姉さん、恋敵であり庇護者でもあり…みたいなポジションに収まっていたゆりが、抱え込んだエゴとエロスを大爆発させるエピソードである。
終わりまで見通した立場からすれば、仮面の奥には素顔があるわけではなく、残酷な世界から魂を守るために積層したもう一枚の仮面があるわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
初見時は大変ショックな変貌であり、またエピソードに漂うエロスの毒気にも当てられて、まんまとサスペンスに乗っけられた覚えがある。
何しろ初手からレズ不倫暴露、暴れ馬に乗って首都高爆走して、重い感情を吐露しながら号泣である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
『ゆりさんそんな人だったの…』という衝撃が抜ける暇もなく、ウテナ第33話を彷彿とさせるリッチで悪い大人っぷりで傷心の苹果ちゃんを飲み込み、性と愛にまみれた地平まで引きずり込んでいく。
苹果ちゃん主役の物語が一段落つき、彼女の幼年期が終わった所で、そこでは端役だった者達が実は、主役級の因縁と感情を見せてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
このエピソードは、美しくも扇情的な裸身でもってお話をひっくり返し、世界の裏側に在るもの…在る者にとっては秘めた表側だったものを暴いていく。
酒に車に女に金。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
清純な娘役のペルソナに隠した、荒廃した”大人”に溺れた顔でバコバコ殴りかかってくるゆりさんだが、その奥には愛されないことへの恐怖、愛された記憶の傷跡が深く、深く突き刺さっている。
桃果の死によって、ゆりの時間は止まり、永遠の幼年期に閉じ込められている、ともいえる。
愛着ゆえに歪んでいく己を、そこに反射する世界を、どう革命し乗り越えていくか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
第1クールにおいて、晶馬の助けを借りて苹果ちゃんが駆け抜けた物語に、ゆり(と、他の”大人”を自称する全ての存在)は囚われている。
あるものは傷だらけに自分を晒し、欲望と向き合ってその物語を終える。
あるものは己を犠牲に世界を変え、あるものはそれによって新たな場所に押し出され、あるものは永遠の停滞に再び取り残される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
皆根源は似通っているが、答えに至るまでの道のりと、掴み取った真実はバラバラで、しかし確かに繋がってもいる。
そういう、愛と青春の物語である。
『待ってたんだゾ☠』が本当に可愛い、恋を自覚した幼い苹果ちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
自分が終わりなき咎人であることを思い出し、背中を向けてふさぎ込む晶馬にひぐひぐ泣く彼女は、大変純情で純粋だ。
人生に擦れはて、誰かを踏みつけにするのを躊躇わない大人…ゆりとの対比がエグい回でもある。
苹果ちゃんが多蕗相手に蹂躙仕掛けた生の決定権を、もっと巧妙で悪辣なやり方でもって、ゆりは玩弄する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
誰かの代用品として、相手の思いを確認せずに願いを成し遂げる。
『お前初犯じゃないだろ…』というスムーズさで進行する性犯罪は、ここまでの苹果ちゃんの犯行、その反射でもある。
苹果ちゃんがそうであったように、ゆりも求めるものは目の前に在る美しき肉塊ではなく、思い出の彼方にある誰かの代理でもなく、ただそこにある何者にもなれない自分、その肯定である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
苹果ちゃんには、晶馬が寄り添い欲しかった答えをくれた。あるいは、これからくれる。
ではゆりには、誰が何を差し出すのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
変貌と犯行があまりに衝撃的すぎて、リアルタイムでは思いが及ばなかった所を、今の僕は微視する。
力づく、大人びた奸智で誰かを噛み砕いても、それはかつて自分を傷つけた存在と同一化するだけで、けして救いは訪れない。
そんなことはゆりも解っていて、でも自分を見出してくれたものの不在があまりにも悲しいから、幾度も暴走を繰り返す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
かつて嘘つき姫だった存在を食い荒らして、嘘つき姫でしかない自分が世界を、自分をよく解っている大人なのだと、(性)暴力的に思い込もうとする。
暴走するエロティシズムの奥には、そんなやけっぱちの崖っぷちがひっそり、焼け焦げている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
運命の至るところまで走り抜けなければ、ゆりに憑依した悪霊は祓えない。
荒廃も暴走も、彼女の魂が吠える必然であり…だからといって、その犠牲になるモノの傷が癒えるわけでもない。
自分にとっての必然が、誰かにとっての理不尽となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
これは例えばこれからの冠葉にも共通するテーマで、自意識と公意識のギャップが擦れて生まれる摩擦熱が、テロルという形で発露するわけだが。
それでも、求めてやまないものがある。
それこそが、人を活かす。
それだけが、人を殺す。
まぁ、多分そういう話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
ピングドラムのサブタイトルが、全て多層的に活用されているとこの再視聴で気づき始めたわけだけど。
”嘘つき姫”は、複数の女性が自分のレールを走る今回、当然複数いる。
誰も求めていないと、手編みのマフラーを投げ捨てた陽毬。
あるいは、冠葉に執着と襲撃を投げつけた真砂子。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
その問いかけに、『あくまで家族を助けたいだけだ』と返した冠葉。
皆、自分を黙らせる嘘に毒され、踊らされている。ぶりっ子を演じた苹果ちゃんもね…可愛いね…。
善人ヅラで陽毬にすり寄る、眞悧もまた”嘘つき姫”か。
陽毬への愛を指摘され、跳ね除けられた真砂子が投げかける『私ではダメなのね』は、この段階では”恋人”にかかっているように思うわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
彼と彼女の真実を見知った後だと、実は”家族”にもかかっていることが、後出しで判る。
あのブリコラージュの家に住めない、もう一人の妹。
高倉ではなく夏芽であり、だからこそ拒絶される真砂子が果たして、冠葉に”恋人”を求めていたのか”家族”を求めていたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
その答えは、冠葉が陽毬にそうであったように、その境目が溶けるほどに熱く強い関係性をこそ、求めていたのだろう。
引き絞ったスリングに添えた、真砂子の震える手。
それは謎めいた襲撃に満ちる暴力のサインに見えて、実は彼女の柔らかな内面、隠された関係性の証だったりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
けして表にはしない、秘めたる思いの更に奥。
そこにたどり着き素直になれば、全てが決着するような真実。
だからこそ、嘘つき姫たちはそれに向き合えない。
ゆりの暴走…あるいは暴露は、ペンギンマークに満ちた”人鳥荘”で行われる。(人鳥はペンギンの和語)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
それはひっそりと地下で息づく悪霊の手のひらの上であり、抑えきれないリビドーの発露に思えるこの個人的な行為は、仕組まれた檻の内側、約束された暴発である。
己の中から溢れるようでいて、誰かが遠くで見張る欲望、あるいは運命。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
それに押し流されている間は、ゆりはけして大人になれない。
どれだけ車を走らせ、女を抱いても満たされず、誰かの思いを噛み砕く怪物に…かつての自分を噛み砕いた存在になっていくだけだ。
苹果ちゃんが1クールもグダグダ悪戦苦闘していた”M”を、世知に長け薄汚れたゆりはあっさり遂行する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
薬と縄で縛り、肉欲に溺れて、取り戻したい何かの代用を掴み取る。
踏み出せばもはや戻れぬ、エゴとエロスの崖っぷち。
そこにクリフハンガーした所で、今回の物語は終わる。
こっからまた二転三転、堕落と救済、欲望と愛の物語はゴロゴロ転がるわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
1クールを折り返し、物語の方向性が切り替わった事をしっかり暗示した上で、最初の物語としてあの鮮烈な裸身、上ずった吐息が来るのは、やっぱり力強い語り口だな、などと思い返す。
苹果ちゃんが甘っちょろく接近し、ビビって踏み出せなかった、成熟し性徴した世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
セックス程度で心が通じ合うことはなく、一度飽きた男役とは二度と寝ない世界。
社会的成功も、爛れた性愛も、残酷にもぎ取られた救済を埋めてはくれない、氷の世界。
そこに大人たちは佇み、動き出した欲望に乗っかって突っ走っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月13日
その先陣を、時籠ゆりは力強く駆け抜ける。
身勝手で、汚くて、切実で、美しい。
そのやけっぱちな疾走、燃え尽きる流星のような裸身は、10年前と同じくショッキングで、瞳を奪う。
星の落ちるところは何処か。次回も楽しみ。