ブルーピリオドを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
世之介のいない予備校で、八虎は新たな難題に悩む。
縁は果して、どんな形をしているのか。
”すべき”な固定観念に囚われ、誰かの助けでそれをぶち破って、成し遂げた喜びがまた、自分を縛る。
幾重にも折り重なる、ぬか喜びと苦悩は果して、八虎を錬鉄するハンマーなのか!?
そんな感じの超絶身悶え青春絵巻、分け入っても分け入っても青い季節な第5話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
今週も八虎は、こんな感じの表情を随所に炸裂、ウンウン唸りながら描いては苦しみ、苦しんでは描く。
ホント、美青年の苦悶顔が見たいサディストのオヤツよ、このアニメ。
(画像は"ブルーピリオド"第5話より引用) pic.twitter.com/3SeMomjMpU
寝言はさておき、技術を身に着けある程度以上描けるようになったが故の悩みが、今回も八虎を苛む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
『見れば描ける』って所まで自分を引っ張り上げたら、今度は『見ないで描け』という課題が来て、それを超えたと思ったら『自分の成功を横目で描いてんじゃない』と言われる。
何処まで行っても正解なし、悩んだからって点数稼げるわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
青春の檻は八虎を捕まえて、なかなか出してくれない。
しかし一つ苦悩に答えを出す度、確かに一回りデカくなってる感じもあり、その実感が足枷になっちゃう皮肉もよく解る。
もどかしくも爽やかな青春味は、今回も特濃油マシマシだ
秋も深まり受験も本格化、クラスも少人数制に移行する中で、八虎に突き出された課題。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
『大事なもの』と言われて、一番最初に”縁”がでてくるのが、周囲がよく見えてそれに感謝できる八虎の、大変良いところである。
(画像は"ブルーピリオド"第5話より引用) pic.twitter.com/dJJxUHoJ1Y
青い渋谷と天使のウィンクに出会い、”絵”という自己表現手段に邂逅した八虎だが、心の根っこは早々変わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
周囲の求めるイメージを敏感に感じ取り、それに合わせて踏み込まない。
賢い処世術は、一般的なイメージで彼の探求を止めさせてしまう。
縁は糸。
それは本当に、八虎だけに見えている絵?
大葉先生の指摘は、今回もクリティカルに青年の心臓を射抜く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
反射的にローコストに80点の答えを差し出すのではなく、思い切り踏み込み反応して抉り出した、120点の”アナタだけ”を。
目に見えるものを描かせない課題は、そういうリアクションを求めている。
ん、だが。
問いも答えも分からないまま筆を進めても、頭の中にある最高の一枚を汚すばかり、己の至らなさが脳裏に腐る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
描けども描けども手応えなし、答えが眠ってるかも知れない脇道に、逸れる余裕も一切なし。
そんな自分に気づくにも、一旦煮詰まらないと始まらない
(画像は"ブルーピリオド"第5話より引用) pic.twitter.com/cIljaFoyVQ
八虎は得意なはずの取材課題で、『時計を中心にする”べき”』と発想する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
知らず世間一般にある正解を探し、その近似に自分を近づけていくスタイルは、イーゼルの檻、指先のフレームのように不自由に、八虎を捕まえ続けている。
そんな檻から魂を引っ張り出し、吸い込んでいく強い絵。
自分の人生を確かに変えてくれた、あの天使のウィンクのような絵画体験が、自分の絵には宿らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
藻掻いて藻掻いて、どこまで行っても檻の中。
イーゼルや足が描く三角形が、八虎が『脱却してぇ~』と悶える壁を、上手く可視化している。
それは誰かと触れ合うことで、ようやくヒビが入る硬い壁だ。
血相変えて自分を押しのける龍二が、何に苦しんでるのかあんまちゃんと想像できない辺り、ここの八虎がどんだけ視野狭くなっているか、よく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
他人との”縁”をテーマに追ってるはずのなのに、絵の外側の自分が”縁”を大事に出来ていない。
そしてそんな姿勢の歪みを、自覚できてない。
というわけで、一度は賢しく断った100号の大作に、額に汗して挑むことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
自分の狭い脳髄で理屈だけを捏ね繰り回してるときより、キャンバス貼るのにも苦労する実感を浴びてる時のほうが、やっぱりいい顔をしている
(画像は"ブルーピリオド"第5話より引用) pic.twitter.com/3lGBF4V9y0
何よりも、自分を見つめ見つけてくれる誰かの声を聞いている時…”縁”に触れ合っている時にこそ、壁をぶち壊す可能性に、八虎の眼は開けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
受かるために必要な『べき』を一旦壊して、ただただ絵に向き合う体験を思い出す。
初期衝動がいつの間にか掠れているのは、ただの経年劣化ではない。
好きだと思えたから頑張って、上手くなって、色々考えて、気づけばそれが壁になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
何もかも素直に、最高の結果なんかに結びつかない世界の躓きは、美術を選んでしまった八虎を何回も捉える。
周りの求めるまま、優等生/不良を演じて何も求めれば、知らなかった苦悩。
でも絵画と出会わなければ、薄っぺらく窒息していく苦しみが、八虎をいつか殺してもいただろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
どっちにしても”描く”事を選んでしまった八虎の壁は、”描く”ことでしか突破はできない。
そして”描く”ためには、”描かない”ことも時には大事で…。
人生問題集は、定形の答えがないので難しいね。
そんな檻に閉じ込められているのは八虎だけでなく、龍二もまた何処にも行けず身悶えしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
携帯電話の背景に広がる青空なんて、何処にもない息苦しい家。
小さな小さな窓が、苛立つ父の拳で揺らされて、青春、何処にも出口なし。
(画像は"ブルーピリオド"第5話より引用) pic.twitter.com/1kr3qEqLYx
そんな龍二のため息を、100号に挑む決意を固めた八虎は捕まえる。今度は、縁を取り逃がさない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
ソリの合わねぇ親友の苦しみを、引き受けようと歩み寄った瞬間、龍二が窓を開けて風が入ってくるのが、好きな演出である。
縁も苦悩も、八虎だけの専売特許ではないのだ。
今の自分では合わせる顔がないと、森先輩の誘いを外の空気吸う口実で終わらせちゃう龍二が、チャーミングで哀しいな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
それでも八虎が差し出してくれた縁は彼にとって救いで、自分を食い殺す家という檻から引きずり出して、風を吹かせてくれる大事な存在だ。
一方八虎も、森先輩と『逢わない』ことで檻を抜けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
一点の絵画に変わらず込められた”祈り”は、モチーフを変えてもテーマが共通している。
表現の手段を変えても、自分だけに見えていて大事にしたいものは揺るがない。
八虎にとっての光は、森先輩本人ではなく、彼女の作品に満ちている。
絵に悩む八虎が、絵で道を見出していくこのシーンは凄く良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
狭く狭く、窒息させられる息苦しさが悩みの中に満ちていたからこそ、広大なアトリエで巨大な作品と向き合い、自分の手が何を掴みうるか、何を描きたいか見つけ直す描写は映える。
(画像は"ブルーピリオド"第5話より引用) pic.twitter.com/zY0R1p0cqE
糸のように細く靭やかなものではなく、もっと熱く貪欲に、危険に変化していくもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
八虎は縁を溶鉄と見定めて、パレットナイフでキャンバスを斬りつけるように、大きく大きく作品を刻んでいく。
そこには彼だけが見据えたものを、彼以外の人に伝えるうる可能性が、熱く脈打っている。
青く見えた渋谷を、青く描いてもいいという自由。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
そうして抉り出した表現が、誰かに届いてくれる喜び。
自分を打ちのめした最初のハンマーが緩んで、優等生らしく『べき』を探していた視界が、今度は自分の筆に吸い込まれていく感覚。
もう、三角の檻は八虎を捕らえていない。
湧き上がってきた衝動、目の前に広がった答えを叩きつけた絵は、恩師達の称賛を呼ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
褒められると、やっぱ嬉しい。素直な八虎が好き。
しかし好事魔多し、”答え”が見えたことで八虎は、己を模倣しだす。
あの時は、こう描いてた”はず”、と。
(画像は"ブルーピリオド"第5話より引用) pic.twitter.com/C8tdryyQha
八虎は外見より遥かに自信/自身がなく、周囲の評価や対応にグラッグラ揺れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
それを固定しようと、自分の外側にある答えを柱にし、あるいは他者に評価された過去の自分を足場に定める。
しかしそれは、明白な意図と衝動、鮮明な技術と意識に支えられた”いい絵”から、八虎を遠ざけていく。
ぬか喜び…ってわけじゃないが、洋鉄の縁を完成させた時の熱量も永遠には続かず、成功が今度は枷になる当たり前のままならなさが、なんとも苦い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
進んで、迷って、下がって、苦しんで。
それを繰り返した先に、果して未来はあるのか。
少なくとも、このままじゃぁ無い。
大葉先生の言葉が刺さる。
階下で笑う母の声が、ナイフのごとく心を抉る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
好きなことをやるってことは、いつでも楽しいってことじゃない。
出会ってしまった”好き”に本気で飛び込めばこそ、八虎は閉ざされた窓の前で、一度付けた煙草を握りつぶす。
紫煙は、青春を酔わせない。
(画像は"ブルーピリオド"第5話より引用) pic.twitter.com/5u47cNiTNh
祈りと縁に導かれ、出口に思えた場所から繋がっていたどん詰まりに、鳴り響く携帯電話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
その先にいるのは、去っていったはずの少年。
グサグサと心を掘り返し、その天才で打ちのめし、それでも心から追い出せない…これもまた、一つの縁か。
友達でもねーのに電話かけてきて、さて一体どんなつもりか
受験までの日々をチリチリ焦燥に燃やしながら、寒い冬は熱く滾っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
離れたと思ったらまた衝突してくる世田介との縁は、悶える八虎にどんな景色を見せるのか。
技術も意志も覚悟も見識も、何もかもが足りない現状を思い知らされながら走る、受験マラソンはまだまだ続く。
そこの補助線として、師となる人が八虎をよく見て、大事に正しい言葉を届けてくれること…それを八虎が蔑ろにしないのが、やっぱ良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
受験に苦しむ生徒を主題にしつつ、あるいはだからこそ、先生/大人の輪郭が太い線で、在り来たりでなくしっかり引けてることは、とても大事だ。
八虎が支えられている描写、赤い鉄のような縁が燃える場面が多数ありつつ、感謝を忘れない賢い八虎が、誰かを助けている様子も、苦難の中でしっかり描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
『やった!』という喜びが停滞に、身悶えする苦しさが成長に繋がる、裏腹に地獄めいて、面白い世界。
そこが、八虎達のキャンバスだ。
八虎の全身に青いインクを塗って、ゴロゴロ身悶えさせた軌跡を写し取って生まれる絵は、無様で切実で、熱があって綺麗な”いい絵”だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月30日
自分を捉えて吸い込んでいく体験は、物語との対峙からも生まれる。
さて次回、どんな火花が鉄を鍛えるのか。とても楽しみですね。