イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-:第1話『DIYって、どー・いう・やつ?』&第2話『DIYって、だれかと・いっしょに・やるってこと?』感想

 新潟三条市全面協力!
 ドローンや自動運転、3Dプリンタ医療が当たり前になった近未来、ドジっ子……というにはあまりにも生々しいヤバさとユルさを備えた高校一年生・結愛せるふが、DIYと大事な人に出逢って、自分なりの高校生活を作り上げていくお話。
 正直一話はプラスティックなオタク臭さが先に立ち、世界とキャラの人造感に警戒を強めていたのだが、几帳面で生真面目なたくみんが部の仲間となる第2話で作品が僕と握手してくれた感じがあり、素直に楽しむことが出来た。

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第2話より引用


 主線をゆるく溶かし、色彩も淡く作り上げた陰のないヴィジュアルには独自性があり、穏やかな情景、作品のテンポ、主役のキャラクター性ともしっかり噛み合っている。
 最近主流の、とにかくわかりやすく動きとクオリティで飲み込むような”神作画”ではないが、相当なカロリーをつぎ込んでアニメが仕上げられている感じが伝わり、見ていて楽しい。
 現実の三条市を良く取材したローカルな手触りと、無人バスが当たり前となった近未来の日常が巧く溶け合って、独自の異化作用を生んでいるのも、まったりSFとして面白いところだ。


 根を詰めて丁寧にやらなきゃ指やら首やらが飛びかねないDIYという趣味、絵面的に地味になりがちなので、ドンガラガッシャーンしがちな属性を主役に与えた……ってところなんだろうが、なまじアイテムの描画に気合が入っている分、せるふの一挙手一投足に冷や汗が出る。
 しかしせるふのキャラクター自体は独自の魅力があり、危ういゆるさも個性の範疇かな……と、物語の進行に従い洗脳されてきた。

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第2話より引用

 

 この子はあまりに夢見がちで、良く妄想の世界(ここの作画がメインとまた違った質感をしっかり組み上げていて、これ一本で仕上げてほしいくらいに魅力がある)でぷりんとラブラブに耽る。
 ここのファンシーな筆致、舌が痺れるくらいの幼い純情がとにかく無邪気で罪なく、みんなで幸せになることを望んでいる子なのだと、良く教えてくれる。
 あんまり無邪気なので裏を勘ぐっていたわけだが、『あ、ガチでピュアなのね……』と飲み込んでからは、そういう子が高校生となり、自分らしさを見守られながら自分なりの社会関係をDIYしていくお話として、手がかりを掴むことが出来た。
 くれい先輩もそうだけど、わかりにくいたくみんの善さをしっかり見つけて、『丁寧ですごく良いよ』と言葉で伝えれる人の良さも描かれて、グッと主役への好感度を上げてくれる。

 

 ぶっきらぼうすぎて誤解を受けがちなくれい部長は、なんだかんだ後輩の面倒を良くみてくれて頼れるし、新しい学校で友達になったたくみんは、引っ込み思案な几帳面が手作業の天稟ともなっている。
 第2話で描かれた”部活”としての情景……放課後世界から見捨てられた中庭に集まってそれぞれ好きなことをやりつつ、お互いが隣りにいてくれるからこそ生まれる笑顔が、温かな手触りでこの作品なりの青春を教えてくれた。
 華やかな表舞台ではDIY部の変人たち、誰もヒーローにはなれないだろう。
 しかしそれぞれの個性と良さが確かにあって、穏やかに生活を共にするうち、一緒にDIYする中で、それが共有され絆になっていく。
 おまけに形に残る何かまで作れてしまうのだから、DIYとは良いものだ・
 ……って思える手応えが第1話からあまり感じられなかったので、ビビって警戒してた部分もある。第2話でキッチリ、そういう所埋めてきたけど。

 

画像は”Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-”第2話より引用

 

 自転車と徒歩と、なんか未来的な歩行機械。
 DIY部三人、それぞれ異なる速度を巧く合わせて一緒に下校する様子には、ペーソスと愛おしさがちゃんと宿っていて、なかなかいいものだった。
 三人のヘンテコで特別な青春を包んでくれる繭として、夕陽の三条市が大変良い書かれ方をしてて、舞台と選んだ場所をしっかり尊いものとして描く筆の強さを感じることも出来た。
 ふでやす先生、こういうの描かせると本当に上手いな……。

 

 ツンツン幼馴染のぷりんと離れ離れになりつつ、常時せるふの動向を監視できる環境を作るために、学校を学校が取り巻く異常環境を平然とお出しするトンチキさとかもあって、なかなか変な作品である。
 せるふのあんまりの幼さ、鈍感ですらあるのんびりに置いてけぼりにされ、ぷりんの愛は憎悪へ変わる寸前なのだが、当のせるふは自分のペースが彼女を乱してることに気付いていない。
 ずっと幼い時のまま、お互いが大好きでいられると信じているのはせるふだけで、ぷりんは加速していく時間にちゃんと追いついて、二人の距離はどんどん離れていく。
 淡い色彩とゆるいテンポに隠れてはいるが、幼馴染の間合いは結構ピリピリ危機的で、しかも解決の道のりは相当どっしり進んでいきそうだ。
 新しい環境で新しい女と仲良くやってるせりふの小さな成長が際立つほど、置き去りにされたぷりんの哀れさが空回りする構図で、さてはてどうなるか。
 せるふとぷりんの青春絵日記は、12話全部使っておっ立てる大事な柱になるのだろう。

 ここの骨がかなり太くて、ぷりんが憎まれ口たたきつつも濃厚なせるふLOVEを隠せないところとか、初手から前回でぷりんLOVEなのに幼さをアジャストしてないから相手に届いてないせるふとか、戯画化されたキャラの掛け合いにしっかり、思春期の体温が宿る。
 1クール終わった頃には、でっけぇ感情建造物がDIYされてそうで、そこも楽しみだ。

 ボロッカスなDIY部の再興つうストーリーラインも、第2話でたくみんを仲間に引き入れ順当に進んでいる。
 仲間になりそうな新たなトンチキも巧く見せれてて、緩めのテンポを維持しつつ話の骨格はカッチリしてる印象だ。
 この土台があるからこそ、ゆるーっと焦らず、DIYすることで何が生まれ何が変わっていくかをしみじみ染みさせる話運びも可能になる。
 変人揃いのトンチキ部を全面的に肯定しつつ、『何よアイツラ!』とプリプリしてるぷりんを横に置くことで、いい具合に価値観の水ぶくれを防いでいるのもいい塩梅。
 ここら辺のバランスって相当難しいと思うが、メインヒロインをカウンターウェイトに配置することで、現状結構いい感じだと思う。
 こういう風穴を開けておかないと、出口を失った価値観が永遠に内部で循環して発酵しだすからな……その閉じた独自性、クセある味わいもまたいいもんだけどさ。

 

 ともあれ、第2話で青春部活モノとしての手応え、キャラクターの個性と関係に向き合う手触り、舞台となる実在の土地、扱うテーマへの姿勢が見えてきて、大変良かったです。
 近未来テイストを前面に押し出しているのは、加速していくテック社会の中で『自分の手で物を作る』意味合いを掘り下げていくためだと思う。
 しかしぷりんが扱い3Dプリンタも”DIY”なわけで、今後話が転がる中でぷりん的価値観をあのアナログなボロ屋に取り込めていったら、より豊かな景色が見えてくる気がする。
 つーかぷりんの純愛空回りが寂しすぎて、はようせるふに”覚醒(めざ)め”て欲しいんだよな……『勝手に走って、置いてっちゃってごめんね』といえる自分を、DIYやる中で捕まえて欲しい。愛に報いて欲しい。
 そんな中核をじっくり楽しみつつ、次回もDIY奇人が部活に混ざるようで。
 異国からの転校生を混ぜることで、どんな化学反応が起こるか……楽しみですね!