イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

宇崎ちゃんは遊びたい!ω:第4話『宇崎ちゃんはマウントとりたい!』感想

 学祭で受け取った占いという爆弾、どう炸裂するか……という宇崎二期第4話である。
 前半はイツメンによる現状チェック、後半はそこからの発展形。
 先輩との距離感を確信できてニタニタキモい宇崎を亜実と榊が冷静にツッコみ、揺らされた宇崎が不安になりだし……と、結構状況が(先輩本人置き去りで)動き出した。
 周りが危惧してるとおり、当人任せだとどうやっても恋路が先に進んでいかないので、結構強引にでも横車を押して意識を変えていく感じに、話の手触りが変わってきた。
 延々続くもどかしいイチャイチャも好きであるが、どっかで手応えある結論を掴めたほうが二人にとって良いと思うので、この方向性はかなり好き。

 宇崎のニチャニチャを見ていると、『マウントとりたい!』というよりも『自分が上にいる、相手に求め好かれている』という距離感でもって、好きな人との関係を安定・継続させたい意識のほうが強いように思う。
 要するに先輩が大好きなのでずっと一緒にいたいし、その間柄は先輩が自分のウザさに苛立ちながら追いかけてくる、今の距離感が一番いい……という話なんだと思う。
 高校時代、変わってしまう時間の残酷さを既に味わっているからこそ、二度目の出会い……そこから生まれる生暖かくも心地よい奇跡を手放したくないと願うのは、思いの外自然のことだと思う。

 ここら辺の感情の柔らかさは変化への怯えにそのまま直結してて、他人に盗られる可能性含め、前に進むにしても失って後退するにしても、先輩との間合いが変わっていくことは宇崎にとって想像もしたくないタブーである。
 だから『先輩は私が好きなんだ! 求められちゃって困るな、しょうがないなー』と、心情的に想い人に優越できる気持ちよさで現実にフィルターをかけ、ありのままの今を見つめることから逃げている。
 それは臆病というにはあまりに健気な嘘で、『お前ほんと先輩と、先輩に関わり先輩が好きな自分が好きだな……』という気持ちになる。
 『自分が好き』といっても自己愛まみれのナルシシズムというより、引っ込み思案で自信がない地金を飛び出して、うざいくらい元気で前向きになれる特別な相手として、触媒効果を愛してる感じがある。
 ここら辺、破天荒ギャグの形を取りつつ地味な陰キャの性根をよく解ってる感じがあって、結構好き。

 

 こういうネチョネチョした感情に浸って、宇崎はキモい足踏みに甘えているわけだが、それが別に現実と真実捉えていないことを、友達達はよく捉えている。
 榊のクレバーさが鋭く宇崎を突き刺し、強引に前に進めていくのはいつものこととして、先輩の肉体を狙っているのが自分一人ではないという実例……闇に潜む性獣として亜実が活用されるのは、ザマァみろ感あり酷すぎもし、なかなか痛快な展開だった。
 他人をコンテンツとして消費するのが状態化してるから、そういう扱いになるんだよ……。

 宇崎を幸福に浸す幼い現実認識は、自分の思い込みでしかない。
 相手のいる恋愛で真実、揺るがないものを捕まえたならその心を確かめ、つながりを一回壊して作り直す勇気を持たなきゃいけない。
 ここら辺の危機感を抱くきっかけが、真の性獣・宇崎月なのは『まぁ……そうよね……』って感じが強い。
 宇崎がラストシーンで見せた危惧、妄想でも思い込みでもないからなぁ……君は知るだろう、獣はいつでも闇の中牙を研いでいることをッ!

 自分に都合の良い夢を他人に押し付け、心地よく甘いヌルさに浸った結果、他人を蔑ろにしてしまう。
 こういう危うさは親子で共通なんかな……と思ったりするが、同時に花ちゃん母親ほど性欲持て余した危険人物ではないので、生身の先輩が自分をどう捉え、自分が生身の先輩とどうなりたいかを、ちゃんと受け止めれるだろう。
 ほんっっっとにね、娘が好意を抱いている相手の誠実さを、料理教える中でちゃんと分かっているはずなのに、気がつくと手前勝手なリビドー色に塗りたくって世界と先輩をセックス色に変えているの、良くないね。

 

 宇崎の青春独り相撲が、色んな人のアシストを受けてゴロゴロ転がっていく展開であるが、先輩は変わらず一人の心地よさにとどまり、同時に触れ合った他人は拒絶せず手を伸ばす人の良さを崩さない。
 この爽やかな好青年っぷりが、ネトネト煮込まれていくモラトリアムの自意識から上手く湿気を奪って、ニヤニヤ笑いつつ恋の行く末を見守りたくなる心地よさを生んでもいる。
 しかし宇崎の幼い臆病は先輩も同じなので、今回宇崎を切開した刃はそのまま、先輩にも襲い来るだろう。
 そうして既に変わってしまっている自分と自分たちを見つめたあとで、どんな風に一歩を踏み出していくか。
 ロクでもない青春にゲラゲラ笑いつつ、そういう部分にちゃんと期待を持てる話な所が、僕は好きである。
 次回も楽しみッ!