南国より降り立った褐色の爆弾!
しーちゃん加入でツリーハウス建造計画も本格始動、DIY第5話である。
規格外の自由さで(物理的に)壁を飛び越えやってきた闖入者が、部に馴染むまでをAパートで終わらせて、人数揃ってきたDIY部の心躍る”部活動”をどっしり見せてくれる構成となった。
学園日常物としては明らかに飛び道具である彼女を、楽しい部活モノのストライクゾーンに摩擦なく落とし込むべく、色んな工夫がしてある回だったな……。
しーが加入して何が生まれたか、材料集めやウォールシェルフ製作を通じてしっかりした手応えで伝え、”手仕事”をテーマにしてる強みもパワフルにブン回った。
人数少ない時は出来なかった大掛かりな作業を通じて、みんながいてくれる嬉しさやありがたみ、その中で弾けるモノづくり……だけでなく、ポジティブな自己像や豊かな関係性、望ましき場所まで自分の手で作り上げていく良さが、隅から隅までギュギュッと詰まったエピソードだった。
今回のお話はしーちゃんが窮屈な衣装を着せられ、入り日に自由に舞うフラミンゴを羨ましく見つめていた幼少期から、DIY部に居場所を見つけて輝く星をまっすぐ見つめられるようになるまでの物語である。
ネコ科の奔放な魂を暴れさせ、本編では湿ったところを見せない彼女の柔らかな部分で、お話の最初と最後を挟み込むような構成は、カラッと爽やかな魅力を損なわないまま、キャラクターに立体感を与えている。
せっかく見つけた面白そうなことだから、仲間の前でメロウな部分を見せはしないけど、自由や孤独を追い求める気持ちは強い。
ここら辺の造形は、『金持ち・ルーツが海外・全体的に高スペック』と共通する部分が多いジョブ子(12)が、すーぐお姉ちゃん達の前でメソメソしちゃうのと面白い対比だ。
しーちゃんは一人暮らしの寂しさも、居場所が欲しい湿った心も、友達に顕にしない。
そういう大人びた強がりが奔放な態度の奥に宿っていること、その弱さを見せれる家族が電話の先にいることをちゃんと見せて、ただのフリーダム娘ではないとしっかり見せているのは、とても良かった。
前回もそうだったけど、少女たちの寂しさに丁寧に寄り添いつつ、”家”を悪者にせずそこに宿る確かな温もりと愛情、しっかり伝わるように描いてくれてるのも素晴らしい。
それぞれの”家”にそれぞれの事情や形があって、すれ違いや寂しさが生まれて、でもそれは小さな歩み寄り、支え合いを通じて満たすことが出来る欠落で。
ともすれば主役の旧き善き”家”だけを肯定してしまいがちなお話の中で、近代的で冷たく思える家庭に何が宿っているか、ちゃんと書き続けているのは凄く偉い。
そんな彼女が屋根ぶち破ってDIY部に闖入してくる今回、くれい先輩以外はスムーズにその存在を肯定する。
あらゆる人と仲良くなれるせるふは別格として、過去話数の物語的リソースをしっか
り活かして、たくみんやジョブ子が彼女を好きになる理由を簡勁に描いていたのは素晴らしい。
しーちゃんはたくみんが第2話で心を込めて作っていた花瓶釣り、そこに活けられているたんぽぽを見落とさないし、しっかり褒める。
前回DIYした自室を満たすほど大好きなニンジャ・ガールなら、ジョブ子だって瞳をキラキラさせて大歓迎だ。
ここで一人ひとりしーちゃんを解っていくシーケンスを回していると、無理解のギスギス感が過剰になるし、時間も足りない。
それぞれの心の凸凹がしっかり噛み合う描写をコンパクトに活かして、部長以外をあっという間に攻略していく小気味よさもあった。
くれい先輩が『ちょいちょーい!』って突っ込む役なのは、お話の空気をナァナァにしすぎず、彼女に導かれ教えられて青春を書けていく部活のお話として、結構大事だったと思う。
五人になった部活の書き方を見れば、この集団が1+4の構造なのは一目瞭然だ。
先輩はDIY熟練者として、部長として、年長者として、瞳キラキラさせたちびっ子軍団の面倒を見て、守るべきスジを体現する必要がある。
しーちゃんが部に加入するのは既定路線としても、野放図な横紙破りぶっ込んでるのは事実だし、誰かが”常識”ってのを持ち込んだほうが、お話の足が地面に付く。
その上でガミガミ規律にうるさい感じではなく、部長として先輩として人間として自然な範囲の注意に、適切に目を向けてる感じの味付けだったのはとても良かった。
くれい先輩は注意深く周囲を観察しながら(工作作業においては、とても大事な資質だ)、自分の目と手で人間を確かめた上で判断を下す。
ぶっきらぼうな態度の奥に、相手を誠実に自分に引き寄せてから考える慎重さが、しっかり宿っている。
そういう彼女の人格を大事にしながら、お話に必要な仕事を割り振っている感じは、大変に良い。
一見脳筋な腕相撲勝負、まさかまさかのお嬢様&幼なじみ属性から繰り出される法華津先生の助け舟を通じて、部長はしーちゃんを仲間と認める。
その過程で、手と手が繋がれているのは”手仕事”テーマのこのお話に、とても良く合った描写だろう。
ダイレクトに肌を触れ合わせ、その力を知って、相手の気持を慮る。
くれい先輩がそういうコミュニケーションに対し、とても開かれた人なのだということが解る。
あとDIY部加入が懸かった大勝負が、思い出乱入で水に流れもすごーくサラッと、再会の喜びのほうを大事に素直に負けを認めるしーちゃんの、爽やかな人格もね。
こういう描写を通じて、キャラを好きにさせていく腕力はこのアニメ、大変高いと思う。
しーちゃんが抱えた寂しさを知る先生が、正しき情の深さで昔なじみに居場所を用意するのも、このアニメらしい暖かさで素晴らしかった。
先生はしーちゃんの寂しい子供時代も、それが未だ爆弾小町の奥で眠ってるのも良くわかってる……そういう人だと、今回で教えてくれるのはありがたい。
後のパレット運びで、しーちゃんのパワフル宣言がただのフロックではなく、腕相撲続けてたら……と思える運び方も面白かったな。
かくして運命の仲間を加えDIY部本格始動……の前に、素直になれないツンデレ乙女攻略の下準備を、丁寧に地ならししているのも有り難い。
前回あんな話投げつけられちまったら……ジョブ子との楽しい同居生活はドシドシ見たくなっちゃうじゃんッ!!
そういう所叶えつつ、超最新鋭高の近未来な授業風景とか、ぷりんがDIY部に”感情”抱いてる様子……それをしーちゃんが認知する流れが転がっていく。
ぷりんを素直にさせてくれない壁は凄く普遍的な思春期の難しさであり、だからこそ結構丁寧に壊していくのが大事かと思う。
同じ教室で日々を共有するしーちゃんが、そこのこじらせを知っておくことは、後に青春の助け舟を出すとき大事だろう。
それにしたって、せるふの側にまーた知らねぇ女が滑り込む様子にヤキモキしつつ、そこに踏み込めない自分にもモヤモヤという、ぷりんの可愛さが留まるところを知らない。
じっくりコトコト、青春と愛を煮込んでいって欲しい……周りの人達はみな優しく賢いので、”時”が来たら全てがあるべき場所へと流れていくさ……。
そういう風に、必要な物語的停滞を愛しく見つめられるのってすげー大事だと思うよ、俺は。
というわけでツリーハウス建造計画本格始動! ……の前に、お金の管理もDo It Youself、工夫と準備でコツコツ行くぞ!! という、パレット回収&ウォールシェルフづくりである。
せるふの奔放な想像力がイメージイラストに自由に溢れていて、凄くワクワクする夢の設計図なの大変良かった。
これを自分の手で形にしていくやり方は、くれい先輩に教えられ、仲間と一緒に汗を流しながら一個ずつ学んでいけるわけで、見る人がぷりんの夢を共有してくれるような、とても素敵な具体物を彼女が作れることに、なんかホッとしたし大変良かった。
あんだけ苦戦してたネジ止めも、額に汗しつつしっかり成し遂げてて、地味で地道な話だからこその確かな成長描写に、確かな手触りを感じられる。
何でもブラックカードで解決しようとするジョブ子と、与えられた条件に柔軟に対応して解決策を提示できるしーちゃんの対比で、12歳と15歳の人格的差異が見えた所とかも、大変良かった。
エゴの制御力とかアイデアの出し方、人間関係の作り方、やりたい事への飛び込み方と現実を抜け目なくハックする手腕……15歳にしたって、しーちゃん相当”出来て”いるけどね。
今回はそういう、彼女の良さをたっぷり味あわせてくれる回なのだ。ありがたい。
前回のハンモックづくりは小気味いいモンタージュで過程を飛ばしていたが、今回のウォールシェルフは材料調達からジャージに着替え、釘抜きを使う時の持ち方のコツまで丁寧に作画して、作業工程を追いかけていく見せ方だ。
やっぱ手仕事がメインテーマだから、工具に籠もった力、流れる汗の心地よさがしっかり伝わってくるようなこの描写……最高に気持ちがいい。
これはしーちゃんがDIY部に入ったから(仲間が彼女を受け入れたから)生まれたもので、そういう意味でもニューカマーの特別な良さを、実際の描写で裏打ちするエピソードとなっている。
チビッ子が釘抜き頑張ってるところも、くれい先輩がスマートにやり方見せるところも、五人になったからこそ作れる夢へと一歩ずつ、着実に前進してる手応えが、凄く良かった。
みんな最高にキラキラしてるし可愛いからな……このアニメ良いよなー、本当に良い!
というわけで五人となったDIY部は、皆で力を合わせてウォールシェルフを作った。
でもそれはただの壁掛け棚ではなく、心の何処かに寂しさを抱えた女の子たちの居場所であり、こうして出会えたみんなで作るツリーハウスという夢への第一歩であり、暖かな夕日の中で確かに笑いあえる”今”、それ自体だ。
そういう、モノでありながらモノ以上の存在を手作りできているアニメは、DIYが何を生み出しうるか、凄くポジティブに真実を語っている。
やっぱ俺はわざわざテーマに選んだものの価値を、作品を通じて最大化してこちらに教えてくれるような物語が好きだから、そうあろうとアニメの全領域に気を配って編み上げてくれてるこのお話は、大変に好きだ。
しーちゃんが心から笑えて……本当に良かったと思います!!
全身全霊で青春して、楽しみながらお互いの寂しさを埋めて、友情も笑顔も手作りしてよ……みんな偉ぇーよホント。
次回も楽しみッ!!!
追記 『世間に定められたたった一つの規格で、人間の可能性、世界や他者との関わり方を鋳型にはめて殺す必要なんて、欠片もないんだぜ!』と、萌え萌え美少女のDIY学園ライフを楽しく転がしながら確かに語りかけてくれてるの、ジジイも見ててめっちゃ元気出る。
DIY追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月2日
大会も勝負もない地道な部活、ツリーハウス建造ってデカ目の目的を掲げて、今後の展開を牽引するエンジンにしてるの、地味に上手いと思う。
それを叶えるための着実な一歩も、くれい部長がしっかり見取り図作って、チビッ子たちに進ませてくれるしな。
5人になって、そこら辺の構図も鮮明に。
ぷりんとの断絶を広げる一因にもなってるせるふの奔放な想像力が、計画へのやる気を俄然高めるイメージイラストとして、DIY部に共有され役立っている様子とかも、凄く良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月2日
これから色んな大変が待ってるんだろうけど、せるふがあの素晴らしい絵を形にしてくれてたことで、頑張れる時が必ず来ると思う
あの子の個性はそういう風に、ちゃんと他人の役に立つものであるし、手元の危うさだって楽しく部活する中、しっかり補正できてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月2日
楽しいって気持ちほど、人間を新たにしていく特効薬はないし、そこで生まれてくるのは思いの外懐かしい、幼く馴染み深い自分なのだろう。
せるふは世間とのズレ(ぷりんが勝手に、優しくやきもきしてるもの)を気にしないほど純朴だが、DIY部に入らなければ、その個性は社会との軋轢になってたかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年11月2日
ああいう素敵な夢を描けるせるふの良さを、”部活”が楽しく元気に育む揺籃であってくれるのが、俺はとても嬉しい。