イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アキバ冥途戦争:第6話『姉妹盃に注ぐ血 赤バットの凶行』感想

 お務め帰りの武闘派が、赤い嵐を巻き起こす……冥途戦争本格始動の第6話である。
 ここまで巻き込まれ一般人担当だったなごみが、姉妹盃交わしたねるらの血潮でメイドとして化けるか、死に際の願いのまま優しくあり続けるか。
 なかなか今後が楽しみになる急旋回だった。
 前回ゆめち達が一線超えて、ボンクラ味が抜けてきたのも、実録路線を強めていく布石だったのかな……って納得もあるね。
 さー、どんどん笑えなくなっていくぞッ!!

 物語が加速するエンジンとなった愛美・スーパーノヴァ・山岸さん(サタスペテイストの濃い名前で最高)は、登場からえぐ味マシマシの濃いキャラ立てで、一息で存在感を増した。
 広島弁ナチュラル過ぎて、キレると何言ってるか解んないのホント凄いな……。
 ムショで時間が流れるうち、暴力より経済を稼業と定めた今っぽいヤk……メイドに我慢ならず、突き立てる赤バット
 彼女も嵐子と同じ古い動物であり、ナメられたら終いな鉄砲気質を賢く納めることが出来ない、イケイケドンドン火の玉である。 

画像は”アキバ冥途戦争”第6話から引用

 なごみとねるらと姉妹盃に先んじて、時代遅れの侠客二人がカツ丼とビールとラーメンで親交を深める場面は、……まぁ言い訳のしようがないほど”幸福の黄色いハンカチ”だけども、大変良かった。
 デカい声でガナリつつ絶滅戦争には踏み込まない、シャバに残った連中の賢い流儀。
 それを飲み込めなくて”とんとことん”を武闘派路線に(悪気なく)引きずり込んだ嵐子は、ムショぐらしでトウが立った顔をキッツいコスチュームに包む愛美と、同じ立ち姿である。

 そうして魂の奥底で惹かれ合いながら、家が違えば血みどろに殺し合う稼業の手習いを、二人は良く知っている。
 だから素性がバレた時もさっぱりしたもんで、ベタついた私情を引きずりはしない。
 そういう女だから、”スジ”を盾にしてこの段階での武力衝突を収めて、なごみを守ることも出来るし、厄介の種が生まれないようねるらを見殺し(あるいは、その生き様を見届ける)事もできる。

 なごみが体現する暖かくて生ぬるい、当たり前の人間の情。
 そういうもんをバットで殴り飛ばしたところにヤクザの生き方はあると、嵐子も愛美も真っ直ぐ体現する。
 それじゃ立ち行かないからこそナァナァな膠着関係が維持されてきたわけだが、檻から解き放たれた古き猛獣は、否応なくメイドの本質へとアキバを引きずり込んでいく。
 そこに憎悪ではなく、むしろ響き合う侠客の心意気が漂っているのが、綺麗で寂しくて良い。

 

 

画像は”アキバ冥途戦争”第6話から引用

 んで、万年嵐子もう一つのの姉妹仁義も顕にされたわけだが……どー考えてもキュベレイ肩幅のケダモノランドリーダー、凪さんだこれーッ!
 クラシックな装いを身にまとい、真っ直ぐメイドがメイドでいられた善き時代は、専守防衛なんてヌルい夢を追いかけ親を鉄砲で弾かれた時、終わりを告げたのだろう。
 その成れ果てがあのゲテモノメイド軍団だと思うと、笑うに笑えないのが大変良い感じであるが……。
 凪さんが苛烈極まるドヤクザなのは既に描かれていて、嵐子もここで専守防衛の夢を砕かれた結果、復讐に荒れ狂って監獄に入ったのだろう。
 つまり嵐子は、今のなごみのような『なんにもしない、出来ないメイド』から現実の厳しい査定を受けて、今の無表情なターミネーターに変わり果てた……ってことだと思う。
 殺しに動じずスジだけを守り、けして笑わない夢の残骸。
 それを置き去りに街の半分を手に入れた凪は、嵐子のことをどう思っているのか……かなり”デカい”の眠っていそうではある。
 ねるらの死を着火剤に、嵐子が慣れ果てたヤクザの鑑(つまりは暴力の化身)に、昔の彼女に似ているなごみも落ちていくのか……って方向に話が舵切ったので、真実メイドであることとは何のなのか、嵐子の過去と絡めて、今後描かれそうでもある。

 

 

画像は”アキバ冥途戦争”第6話から引用

 そして今回の本命、ラーメン盃酸いか甘いか、無惨に砕ける姉妹の縁である。
 ぶっちゃけここでねるらちゃんを退場させるなら、ロクでもないお話の端っこで小さく関係を作るより、一話メインを渡して関係を強くする描写があってもいいかな……とも思うが、絵面の強さとハッタリ力でなんとか、飲み下せる展開ではある。
 つーか女女モノでは心躍る一大イベントのはずの”姉妹の契り”が、ヤクザフィルターを通すことで大変ろくでもないラーメン盃姉妹仁義になってるの、このアニメらしい韜晦全開で大変グッド。
 ろくでもない笑いは、真顔でやりきるのが大事だねホント。
 アホみたいな絵面でも姉妹の契りは本物で、血の海に逆さまに浮かぶ約束の名札は、なごみの命運もまた暗転していく未来を、暗示しているのか……。
 このラストカットのろくでもない詩情も、また良い。

 

 なごみはヤクザの隠語じゃない、キラキラ輝くフツーの”メイド”を追い求めてる作中唯一のキャラだ。
 彼女の甘っちょろい夢に巻き込まれる形で、ねるらは系列の壁を超えて情報を流し、自分なりの”メイド(それがヤクザの隠語でしかないのは、構えたドスが良く示していよう)”を貫いて散ることになる。
 血で血を洗う生き地獄に、マトモな人間の倫理持ち込んで引っ掻き回しているのはなごみの方であり、ねるらはその犠牲者……とも言える。
 そこら辺の因果は分かりつつ、残される妹分に恨み言一つ言わずに死んでいくねるらには、分厚い”スジ”通ってた。
 そういうヤクザなりの道理をぞろっぺぇ広島弁でしっかりガナってるから、愛美さんにブレない芯を感じられるワケね。

 このスジの強さは嵐子も同じで、どー取り繕うが実録ヤクザ血風録でしかないお話に、何を勘違いして”メイド”求めてるのか……なごみはキツい代償を払わされたことになる。
 姉妹の純情を情報の出口に利用した店長のゲスさを、責める資格も多分ないんだよな……『結果として』ではあるけど、事実ケジメ付けられるだけの裏切りを姉に強いた形なんだし。
 なごみが理解していなかった侠客の理論は、ヌルく平和に仲良く過ごしたい夢を許してくれない。
 そんな現状を思い知らせるべく、ねるらは死んだ。

 このまま(おそらく、かつて嵐子がそうだったように)血みどろの修羅に落ちていくのか、まだまだ生ぬるい”メイド”を追い求めていくのか。
 過酷な正念場が、やや強引に動き出した感じを受ける折り返しであった。
 正直人死にすぎヤクザテイスト濃厚すぎで、”メイド”が悪趣味を飾るアクセサリーくらいの仕事しかしてない現状、普通に楽しい時間を過ごし平和にやっていく価値観をこの修羅場にどう混ぜて、どう砕いて、どう守るか……結構大事なところだと思う。
 あんだけエキセントリックに喜劇じみた気軽さで人死んでんだから、なんもかんも嘲弄するシニカルなブラックユーモアで塗りつぶすのも、作品の方向性としてはアリだろう。
 ただ……”メイド”という異物をあえて混ぜ込んで、ヤクザがヤクザであるために置き去りにするしかない綺麗なものを主役に追わせていることは、このろくでもないお話にしか追いかけられない独自性を、捕まえる手がかりなんじゃないか。
 そういう感じもある。
 嵐子と愛美の存在感で”ヤクザ”のスジはビッと立ったんで、甘っちょろい”メイド”貫くことで何が守れるのか、なごみに根性出して作品に奥行き出して欲しい気持ち、結構強いね。

 それを追求するためには主人公、ねるらが残した呪いを総身に浴びて、アキバで唯一『何にも出来ないメイド』であり続ける必要もあるのかな、って思った。
 ”とんとことん”のボンクラ仲間ですら、過酷なアキバジャングルのルールに押し流されて、ヤクザな人殺しになってしまったこの状況。
 赤い超新星が戦争の火蓋を切り、姉を殺られて熱い血しぶきは、もはや他人事ではない。
 戦わなければ身内が殺され、戦えば出口なき修羅道に落ちる、メイド稼業のどん詰まり。
 さぁさぁ、どっちもどっちも! って状況……おもしれぇじゃねぇの。
 加速を続ける悪趣味メイド実録、次回も楽しみですね!