イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プロジェクトセカイ カラフルステージ感想:Find A Way Out

 ストリートの匂いを強く漂わせるビビバスでも、一番熱く燃えている男、東雲彰人メインのお話。
 伝説を越えるべく仲間と足掻く中で、ふと立ち止まって思い出と対峙し、自分の成長とその先を見据える、少年漫画テイスト濃いめのお話だった。
 ……ムカつく奴らとのリベンジ・マッチもあったからな! 歌で!!

 お話の方は最近多めな各キャラのゼロ地点探訪といった塩梅で、ソロ時代をよく知る洸太朗くんを壁役に、今よりもっとガムシャラにギラついてた時代の思い出に、一発かまして先に進むまでのお話。
 ビビバスは元RADerを『かつて子どもであり、だからこそ子どもたちの必死さに共鳴できる大人』として書いてる関係上、彰人が現在進行系で取っ組み合っている焦燥や惨めさ、渇望を通り過ぎ、思い出にしてしまったその切なさも、並走して描かれる。
 中学時代の彰人に物分かりの良いアドバイスを手渡していた謙さんが、『お前以上にギラついてたぞ』と幼なじみに暴露されるの、ちょっと面白かった。

 

 誰もが皆、子どもたちが今囚われているものを通り過ぎて大人になっていく。
 なっていってしまう。
 そこに身を置いている間はまるで永遠のように思えて、とっとと終われと心底願う身の丈の小さな時代は、その焦りや惨めさや乾きや殺気も全部含めて、時の流れに押し流されて遠くから見つめた時は、熱く燃える星のように眩い。
 プロセカの主人公たちは皆、そういう熱い季節の只中にいて、しかし同時に遠くに思い返す起源がないわけでもない、思春期の当事者だ。
 当事者だからこその共鳴が引力になって、各ユニットを繋ぎ、またユニットの外側に波及もしているわけだが、年も立場も離れているように思える存在にも、同じように焦りながら世界との響き方を探していた時代があった。
 あるいは、今も終わらずに続いている。
 ビビバスの物語の中、大きな壁や頼りがいある導き手という役割を果たしながら”大人”が視線に宿す湿り気には、彰人がボーボー燃やす現役の熱量とは少し違う、角度を変えた見解が宿っている。

 今走り始めたばかりの彰人たちにとって、それはなんとなく感じ取ることが出来るけど実感がない、やはり遠くにある星だろう。
 子供の切なさが真実大人にはわからないように、大人の寂しさも子どもには伝わらない。
 それでもどこか懐かしく、ただのノスタルジーを越えて自分たちの人生が刻んでしまった限界点を越えて行けと、切実に身勝手に祈りを込めて、伸ばした手こそが新しい未来を支える。
 中学時代の謙さん、高校時代の大河さんと、RADerのオッサンたちの言葉で顔を上げて走り直せた彰人に、寄せられる期待。
 それは今回惨めな記憶を払底し、成長している自分への手応え、成長させてくれた仲間への信頼を力強く掴んで進んでいく新世代が、伝説とされているRADerが秘めていた限界点を越えていってくれるという、らしくない弱気の現れなのかもしれない。

 

 彰人は大人たちが見せないようにしている惨めさや後悔……今回彰人自身が恐れずさらけ出し、それを越えていく戦いに勝利したものを知らない。
 知られないために、大人たちはかっこいい自分を頑張って維持する。
 それはカッコつけた強がりと嘘であり、そんな風に背筋を貼っていなきゃ、崩れ落ちそうな子どもたちをいざという時支えられないからでもある。
 そんな大人に抱きとめられながら、彰人はギラギラと燃え盛りながら、未来に向けて走っていく。
 その一歩一歩がどんだけ熱いか、よく伝わるエピソードで良かった。
 ユニストでのやらかしで悪役イメージがけっこうある洸太朗くんが、駆け抜け続ける昔なじみに焦りつつ必死に追いすがる立ち位置を好演してて、かなり美味しい立ち位置だったのも良かったな。

 あと現実世界の色んなものに興味津々なビビルカさんが、電子の海を泳いで色んな人の生活を覗き込むことで、彰人にフォーカスしつつ風通しのいい話だったのもグッド。
 セカイの住人が他人の目に触れちゃいけない”秘密”な描写はちょっとさみしいけど、その特別感がメインユーザー層へのシンクロ率を上げると思うと、結構必要な描写のかもな……と思ったりもした。
 そう考えると、セカイってデジタル化された『放課後の秘密基地』なんだな……。

 あと作曲頑張ったのにキッツイ一発親父から食らった冬弥が、少し悲しくなりつつも自分が感じた善さを信じて堂々主張し返してたの、ホンマ立派なことだった。
 親が絶対的な権威であり、その最悪さに反発を感じつつ支配もされてしまう年代にあって(その代表はまひるか)、最初のエピソードで親の限界点と立派さを客観的に受け止め、適切な距離を取って自分と相手を守れる立ち位置を確保できてるのは、特筆すべき成熟だと思う。
 プロセカの親世代を見れば解るように、年だけ重ねればそういう、賢く優しい立ち回りができるようになるわけでもねーからなぁ……。
 そこで賢く表面だけ取り繕って距離を離すのではなく、ある程度傷つくの承知で真っ直ぐ向き合って、伝えるべきは伝えてコミュニケーションを維持もしている。
 絵名と雪平先生との関係再構築、そこから生まれる成長の描写にしても、耳に痛く遠ざけたくなる存在だけが突き刺してくる真実に、ちゃんと耳を傾けた上で自分の糧になるよう、致死性の毒にならないよう選り分ける手際を、しっかり育てている感じがあるね。

 という感じで、強く渇きながら未来へ向かって突き進む、東雲彰人の現在地でした。
やっぱビビバスの荒っぽい感じは独特かつ魅力的で、彰人はそれを一番色濃く煮出してくれるキャラだなー、と痛感。
 ギラつきながらも他人を遠ざけず、誰かが背中を支え隣に並び前を走ってくれるからこそ高みを目指せる現状に感謝しつつ、彰人は前へ前へ、仲間たちと突き進む。
 それが、大人たちが置き去りにしたものをも未来へと飛び立たせるのか。
 物語は続く。楽しみだ。

 追記
 イベントタイトルは”Find out”で『見つけ出す』、”Out way”で『出口』となって、彰人の迷妄と突破を複層的に表した、良い副題だと思う。
 プロセカは多層的な意味合いをタイトルに圧縮するのが上手くて、それを読むのもまた楽しいね。