上松範康×RUCCA×Elements Garden原案のマルチメディア企画を、動画工房がアニメ化した、トンチキポンコツアンドロイド音楽コージカタストロフィ成り上がり物語の第1話。
命令を受け取らなきゃマトモに動き出せもしない、社会適合率ゼロのイケメンアンドロイドたちが、破滅寸前の世界に残る娯楽すべてを集めたバベルの塔を音楽でのし上がっていくお話……と思いきや、人間さんとの人情噺あり、まさかまさかのサスペンス要素を最後に投入と、結構横幅広い展開を見せた。
想定していたより世界の終わりっぷりが深刻で、街はどんどん水没していってるし、気温は余裕で40度超えだし、照りつける陽光は白い衣で対応しないと熱中症まっしぐらなレベルだ。
そんな激ヤバ世界で主役は妙にのんきに明るく暮らしており、タイプの違う天然イケメン四人がキャッキャする話としてのポテンシャルは高め。
何しろ被造物なので自主性が一切ないし、初期設定にちょっとバグがあるっぽくて社会常識に馴染んでないしで、よく言えば無垢、悪く言えばどポンコツな四人が、のらりくらりと人生を泳いでいく話になりそうだ。
まぁそういう柔らかな印象を、溶鉱炉に落下して蒸発してくおじさんが綺麗に覆してきたがな……。
あのヒキは本当に凄い。さすが上松っぁんのコンテンツ。
アンドロイドを利用して労働をアウトソースしないと、社会が回らないくらい終わってる世界はポップで気楽な描画の奥でしっかり息をしていて、しかし深刻さはまだそこまで滲み出さず、機械の妖精郷めいた気楽さが現状元気だ。
水没した世界もテーマパークみたいな味わいがあり、四人乗りの水上バイクで移動する姿が、なんか可愛くて良い。
そんな世界の中、このままだと強制活動停止(それが”死”の別名だと、わからないくらい四人は幼い)な状況を覆すべく、ありったけのアミューズメントを集めたバベルの塔に挑む……という筋立て。
少年の人生に寄り添うことで感情プログラムがいい感じにブートし、パフォーマンスのなんたるかを把握した四人組が、ここまでのポンコツっぷりを全部ぶん投げて切れた歌とダンス披露したの、落差もあってめちゃくちゃ面白かった。
それが秘されたプログラムの成果なのか、被造物なりに”努力”した結果なのか。
今後バベルの塔を上がっていく中で見えてくると思うけど、気楽な印象に反して結構”機械と人間”やれる世界だとは感じたので、SF要素も頑張ってほしい気持ちがある。
首がもげたり電力が尽きかけたり、冷静になってみればかなり激ヤバなはずの状況も、哀しみをプログラムされていない人形たちは明るく楽しく受け取っていく。
作品世界の描線も、あくまでキレイめに終わっていく世界を切り取っていて、破局のドス黒い部分はあくまで端っこの方にまとめて、目立たない感じに仕上げてるしね。
そんな機械の宿命と、終わりかけの世界は結構良い共鳴を放っていて、作品に漂う独自のペーソスを保ったまま、重くて暗い部分に切り込めると陰影が付いていいと思う。
その足がかりになるのが、ロボットによるおじさん焼殺事件だとは思うが……いやー、初手から良いのブッ込んできたね本当ッ!
何が起きても気にしない、主役のポンコツっぷりが全面に出ているからこそ、老いたる霊長類の善き友であるはずのロボットが殺人するショックは大きい。
世界に伸びる暗い影こそがお話の真実なのか、歌と踊りはそれを跳ね除けて未来を創るのか。
無垢なる機械の楽団修行と合わせて、衰退の果てにある心地よい終末をどうスケッチしてくるかも楽しみである。
こうして見渡してみると、機械と人間のヒューマンドラマ、ど底辺からの音楽成り上がり物語、終末世界の真相解明と、要素が多めの作品なんだな。
この欲張りな過積載をどうまとめあげ、あるいは八方破れの勢いのまま加速していくのか、続きが楽しみであります。