イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うる星やつら:第12話『テンちゃんがきた/ふたりだけのデート』感想

 OP&EDも心機一転! 第2クール突入の令和うる星第12話である。
 あたるの悪友であり弟分でもあるテンちゃんを軸に、2エピソード使って魅力を見せていくいつもの形式。
 前回面堂家で展開したど派手なデスゲームとは違って、ヒロイン達のかわいい晴れ着が嬉しいサクラ先生のお家お正月にほっこり癒やされ、後半のドギツい昭和エロ事情に胸焼けし、いい具合に緩急付いたエピソードとなった。
 令和のテンちゃんは手足短くお顔大きく(そして眼自体は小さくて、そこがまたかわいい)、悠木碧の声帯力も相まって大変ベビベビしい。
 俺がオッサンになったってのもあって、あたるとの気が置けない(置けなさすぎる)距離感も兄弟めいてめちゃくちゃ可愛くて、1クール待っただけの甲斐はあった。
 面堂ボーイとのかかわり合いもチャーミングなのだが、テンちゃんガチでバブな部分がたくさん残っているので、そんなジャリに本気になれるあたるの幼さもより強調されて、二人合わせて最高に美味しいんだよな……。
 うる星でボーイ成分を補充することになるとは放送前思ってもいなかったが、こういうのも嬉しいサプライズである。

 

 

 

画像は”うる星やつら”第11話より引用

 というわけでAパート、宇宙から来た火の玉ボーイを間に挟んで、比較的おとなしいお正月である。
 火ボーボー吹かれてるのに”おとなしい”もクソもないが、この世界観が本気でアクセルふかした時どこまでぶっ飛ぶかを既に知っているため、宇宙産のジャリ一人暴れた程度でかわいいもんよッ! って感じになる。
 実際『テンちゃん初登場のこの回……とにかく可愛く仕上げるぞッ!』ていう気合は画面全体に満ちていて、ちっちゃな手足でよちよち進むスペースベイビー、大変良かった。
 あくまで外見相応の赤ん坊としてテンちゃんを扱うラムは、普段よりバブみが増してて、相互作用で新しい魅力出てる感じもするな……かわいいの過剰摂取、ありがたい。

 可愛いのは他メンバーも同じで、身内に邪険に扱われて拗ねるあたる少年も、取り繕った面の皮を必死で守ろうとするランちゃんも、皆最高にチャーミングである。
 ラムを擬似的な娘として取り込んだ諸星家において、テンちゃんは新鮮な”末っ子”でありあたるは使い古された”長男”になる。
 大暴走ドスケベ人間に見えて純情を残す少年にとって、両親に自堕落に甘えられるポジションから追い出されていくのは存外キツいことであるし、それを率直に叫べない複雑さも、ワイワイ騒がしいあたるの道化ヅラの奥には潜んでいる。
 こういう思春期のナマっぽさをひっそり書いておくことが、後にラムとの純情を彫り込む時効いてくるのは、第5話・第10話で示されたところである。
 色々濃い味付けはされているが、根っこは年相応……と思えるように、体温大事に書き続けているのは原作の善さだと思うし、このアニメ化は結構そこ大事に育んでるな、って印象。

 まぁそういうナイーブさと同時に、ガチャガチャうるせいコメディ要素も全力全開なんだがな!
 やっぱなぁ……ざーさん声が荒れ狂ってると、嬉しいッ!
 全力でブッってるランちゃんは、あたるにだけクソジャリ要素を叩きつけるテンちゃんとの二重人格相互作用で大変美味しく、めっちゃ可愛いことを思い知らされた。
 砂糖菓子みたいな外装に、たっぷり毒を含んだ女(ひと)が好き……。
 まーテンちゃんは子どもなので、ボーボー火を吐く裏の顔を隠しきれず衆目にさらしてしまうわけだが、その隠さなさも、そんなぶっ飛び加減も子どもらしさと受け入れてる周囲も、一番無遠慮に叩きつけられ文句言ってるあたるも、みんな可愛い。
 テンちゃん初登場でお守り役を担当しているせいか、ラムがあんまダーリン♡ダーリン言わなくて、疑似家族の物語としての手触りが濃いのが、今回のお話に匂い立つ可愛さを足してる感じもある。

 

 

 

画像は”うる星やつら”第12話より引用

 そして後半はサクラ先生との、ドタバタデート回。
 テンちゃんスケベはスケベなんだが、まだ精通果たしてない年頃なこともあって、そのスケベは身の丈に合ってない背伸びでしかない。
 あたるに時折かおる生臭さがどっか遠くて、似た者同士だからこそ反発も共鳴もして、組み合わさると面白いコンビ力が、よく出た回だと言える。
 なーんも解っとらんテンちゃんに、エグい昭和性風俗ネタを乱発させる展開にはどすぐらい悦楽も香り、今見るとなかなかネジレた快楽があるエピソードとも言える。
 ネタがエグいからこそ、テンちゃんの無垢さが際立つってのは、初登場回に相応しい良い自己紹介だったと思う。
 ガキの背伸びなんだが、あくまでジェントルにデート相手をエスコートしようとする所とか、根っこの善良さが濃いのはいいよね~。

 んで、そんな天使が唯一悪魔になるあたるとの、遠慮が一切ない悪ふざけも楽しい。
 今考えると色々ヤバい要素満載だが、宇宙人のガキだから条例は適応されねーんだわッ!!
 ヤバいことこそ面白い……コンプライアンス主義がまかり通る令和に投げつけられる原液(に見えて、思いの外丁寧な成分調整が入ってもいる)の昭和力、たっぷり堪能できる回だった。
 女の子には”いい子”なテンちゃんが、あたる相手にはまるで実の兄にぶつかるような全力悪童でいられるの、今見るとメチャクチャ微笑ましくもありがたい光景で、今後も大事にしていって欲しい。
 あたるの方もギャーギャー騒がしく文句言いつつ、女の子の前ではあんま出さない”童”をむき出しに噛み付ける相手が出来て、ハタから見てると『良かったね……』と思わされるわな。
 まぁ当事者同士は本気で最悪と思い合ってて、そんな苛立ちの奥にあるものを見つめきれてない未熟な味わいも、また面白かったりするわけだが。

 あと、あたる達のギャーギャー騒がしい割に全然進展がない恋愛の裏で、ひっそり指輪交換まで実績積み上げてるさくら先生の恋路が、良い対比を生んでいた。
 テンちゃんのアプローチはあくまで子供の遊び、乗っかって楽しみつつも本気にはならないという大人な身のこなしが、なんもかんも全力やりすぎな若人とはちょっと違った渋みを、お話に足していた。
 落ち着いた陰りを狂騒の果てに見せたり、無垢なテンちゃんを鷹揚に抱きしめてたり、サクラ先生の魅力も、ぐぐっと高まる回だったと思う。
 これを受け取るのが主役なあたるではなく小さな紳士であるテンちゃんで、人生の複雑な鬱屈を吐き出す特別な相手として、あたるとの関係も際立つ。
 ……こうして書いてみると、反目しつつ本音を叩きつける関係性はラム&ランと似てて、双方向に対等にワイワイ仲良しなのがあたる&テン、ランちゃんからの巨大感情が上滑りしがちなのがラム&ランな感じね。

 

 というわけで待望のテンちゃん登場回、大変可愛く騒がしく面白く仕上げられていて良かったです。
 新OPも新EDも、ノスタルジックな味わいを大事にしつつ”今”刺さる作りにしっかり仕上げていて、令和うる星の精神が良く形になってた。
 ケイゴイノウエ来たのはびっくりだなー……素晴らしい。
 ナマイキ可愛い弟分が加わり、さらに加速を続ける令和のるーみっくわーるど……第2クールも大変楽しみです!