イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

テクノロイドオーバーマインド:第2話感想

 溶鉱炉転落から始まる音楽成り上がり心育成しまくりアンドロイド家族劇、ほんわかトンチキな第2話である。
 『第2話だし、ライバルユニットとか増やすのかな~』と思ってたら、ロボット刑事と怪しい振付師が出てきて、主人公周りの謎をスケッチしつつ、機械と人間が家族になっていく第一歩が踏み出された。
 極めてトンチキながら、人の形をして人と同じ反応をする機械がどういう存在か、アンドロイドSFの根っこはちゃんとやる心持ちを感じられて、大変良かった。
 ”KNoCC”とエソラの話を彫り込みつつ、世界観周りの色々も手際よく教えてくれたしね。

 というわけで開幕ポリス沙汰、ロボット擁護派と排斥派で揺れてる世間は見た目より楽園ではないっぽく、コージカタストロフィに必要な苦味も背景に軽く香る。
 何しろ常時ケープ着用、治安機構にすらアンドロイド導入しないと社会が維持できないくらいに人間が減ってる世界なんだから、そらーロクでもない要素もかなりあるだろう。
 胡散臭く道化の仮面をかぶり、ノジケンボイスで怪しさ漂わせるノーベルも、何考えてるのか分からんしな……。
 主人公サイドの謎めいた出自といい、想定していたよりSFサスペンスとしての色が濃い作品なのかもしれない。

 世間が世知辛いほど、極めてピュアな人形機械の純粋さ……彼らが生み出す音楽と、そこから広がっていく心理発達は、その意味を増していく。
 ”KNoCC”の四人が特別なイレギュラーであることは、ボーラ警部補のしつこい調査(これをいとわない所に、機械存在の本質が見えてて結構好きな描写)から伝わってくる。
 アンドロイドの魂を調律する行為もダイレクトに”歌”と繋がっていて、歌うことで人を知っていく無垢なる四人が見つけるものが何か、だんだん興味を抱ける足場は整ってきたと思う。

 

 そこに切り込む足がかりがエソラとの交流なのだが……ここはベタ足のボーイミーツボーイ、機械と人間の疑似家族物語で、大変いい感じだ。
 エソラくんも大概ピュアピュアなのだが、コバルトくんを筆頭にポンコツアンドロイドどもがマジで純粋すぎて、透明度の高い交流で肌が大変潤う。
 父を喪った少年が新たに見つけた居場所は、ポンコツ共のメカニックであり、”ただいま”を言える家。
 何かと腕がポロンしたり、ド天然四人のノーツッコミな日常の呼吸だったり、独特のトボけた味わいをオーソドックスな関係構築のお話がしっかりまとめて、安定感がある。
 この出会いがエソラの寂しさを埋めるだけで終わらず、”KNoCC”が新たな表現力を身に着けバベルをのし上がっていく足場にもなっているのは、公平で良い感じだと思う。

 まー人間との交流で学んだ感情(今回なら寂しさ)があまり精査されず、パフォーマンス個別の色として際立ってこない感じなのは、ちょっともったいない気もするが。
 第1話でもそうだったのだが、3Dモデルに切り替わって歌い踊ると『仕上がりすぎてる』感じがあって、孔だらけのポンコツが一個ずつ何かを学んでいく手応えみたいのが、ステージに薄めなのは惜しい。
 せっかく魅力的で透明度が高いキャンバスがあるので、そこに一個ずつ学び取った成果を飾り、ステージングとして個別の色を見せてくれると、ドラマとステージがより気持ちよく連動するかな、と思う。

 ただこの仕上がり方は、伏せ札である”KNoCC”の過去、製造目的と特別さに繋がってる部分でもあると思うので、今後ミステリが転がる中で納得行く説明がある……かもしれない。
 行動目的を入力されないと、自己保存のための行動すら取れない。
 アンドロイドの生態は生物としては欠陥で、機械としては最低限のフェールセーフだ。
 アンドロイドが人間の制御を離れ、勝手に夢に向かって突っ走ったり、あるいは誰かを殺したりする未来は、終わりかけてるこの世界にとっては悪夢でしかないだろう。
 しかし”KNoCC”のトンチキで幸せな日常を見ていると、この世界の機械は寂しさを覚え夢を見る。
 その自由さは眩い光と同時に、ドス黒い影も呼び込みかねない危険な双子だ。

 人造知性体の重たい宿命を、あくまで明るく前向きな描線にしっかり刻み込んで進む、なかなか面白い第2話でした。
 僕はこういう世界観でやるなら、底抜けに脳天気なお話より適切な重たさがあったほうがいいと思うので、最高のヒキである”溶鉱炉おじさん殺人事件”を生かして、この世界のアンドロイドと人間がどんな距離感なのか、ちゃんと彫っていくのはいい感じだと思う。
 そこで生まれる鋼鉄の心に、音楽がどんな意味を持ってくるか。
 そこら辺も次回以降掘り下げてくれると、さらに面白くなりそうですね。