イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プロジェクトセカイ カラフルステージ感想:交響する街の片隅で

 ついに2.5周年を迎えたプロセカ、少女たちそれぞれの戦いを前にその”今”をスケッチする、春の交錯である。
 周年クロスオーバーは比較的緩い感じの、日常メインな話運びという印象があったが、今回は参加メンバー全員自分たちの表現をガッツリ表に出して、地金でぶつかってる感じがあった。
 将来職業として音楽を選び、今隣りにいる最高の仲間達とずっといっしょにいるためにも、絶え間なく己を高め続ける。
 妥協なきストイシズムが全面に出る……と同時に、自己評価が厳しくなりがちな彼女たちが他人から見るとどれだけ素晴らしいのか、ユニットの枠を外したからこそ観察するチャンスにもなっていた。
 みんな自分に厳しくて夢に貪欲で、だからこそ自己評価も低くなりがちなんだが、こういう客観視がいいタイミングで挟まることで、努力が彼女たちをどこまでお仕上げているのか、しっかりチェックできるのはありがたい。
 ここら辺、”みんなでエンジョイ! スポジョイパーク”でモモジャンを外れたみのりが、どんだけナチュラルに”アイドル”できてるか確かめれたのと、おんなじ感触がある。

 

 今回の軸は志歩と杏、プロセカが誇るハンサム女子二大巨頭である。
 志歩がメインに座ったことで、内心を語るモノローグ、彼女がどんな風に自分と他人を認識しているかが濃く書かれたけども、メチャクチャ世界に興味を持って、自分に引き寄せて考えるようになっていた。
 孤高のガチ勢として不器用に、一人で戦う所から物語を始めた彼女が、二年半作中世界を生きてきてどう変わったのか、凄く鮮明に確認できるエピソードだったと思う。
 三周年の大イベント”進級”を前に、キャラを取り巻く環境もその人格も変化の総まとめに入っている感じがあるが、ワントップで素人どもを引っ張ってきた立ち位置の変化も含め、世界と自分に対して窓が開いてきてる志歩の”今”が、良く伝わってきた。

 志歩は現実にスレているように見えて……というか物語開始時実際スレていたわけだが、なにかに感動する自分の感性にかなり敏感で、何を良いと思ったか極力言語化する。
 そうして感動を分解していくことが、自分がベース引いて感動を生み出し、仲間と未来を切り開いていく大事な力になることを、既に学んでいるのだろう。
 持ち前の真っ直ぐな度胸もいい方向に生きて、褒め言葉に打算がなく率直なのが、志歩の良いところだと思えた。

 そんな志歩と今回はじめて本格的に出会い、あっという間にお互いの深いところまで踏み込んでいく杏ちゃんだが……お前は女をデートに誘うのが早すぎ、最高の体験を手渡すのが上手すぎ、ハンサムすぎモテすぎ。
 すっげーサラッと、他人の手を取ってエスコートするよね……ナチュラルモテ仕草……。
 杏ちゃんの焦燥感はビビバス初のイベストだった”いつか、背中合わせのリリックを”からずーっと続いていて、最初から人間的完成度(あと謙さんと街に護られた育成環境)が優れていた彼女、唯一の欠落と言っていいだろう。
 その軋みが彼女をストリート的存在に熱く留め、こはねを導くだけのハンサムな王子で終わらせない魅力を生み出してもいる。
 憧れとして追われるからこそ、誰よりも輝く超新星の眩しさを強く感じて、それを頼もしく愛しく……そして恐ろしく受け止める。
 何よりも大切だからこそ追いつかれ、追い抜かれて取り残される怖さと切実さは、プロセカの子ども達皆に共通で、春の日差しに暖かく包まれながらも消えないガチった本領が、今回は元気だ。
 みんな本気だから、響き合うものがある。
 ユニットとキャラの核に近い場所を、それぞれの表現を触れ合わせる形でガッツリ描くのは、お話のギアがまた一つ変わった感じがあって面白い。

 

 東雲先輩も映えるスポットに浮かれずシコシコスケッチに勤しんでいて、承認欲求モンスターの面影もはや遠く……という感じ。
 自分がどこにいるのか、”評価”にボッコボコに殴られつつ客観性を鍛えてきた絵名が、出来ていない今の自分をできるだけやっていると、かなりバランス良く確認している所に、確かな変化を感じた。
 他人の言葉に振り回され、自分が見えなくなっていた時間に苦しめられてきたけども、ニーゴに並び立つだけの自分でいるために奥歯噛み締めてゲロ飲み込んで進んできた結果、出来ない自分、認められない自分も自分だと、弱さ込みで肯定できるようになってきた。
 これはニーゴの面々(筆頭に、弟とダチと先生、新しく知り合った色んな人達)が『ダメなオメーはダメじゃない』と抱きしめ続けた結果なので、愛はつくづく強い。
 ありのままの自分は最悪で大嫌いだが、そんな自分を大好きだと言ってくれる、顔が見えて手で触れてくれる誰かだけが、それを肯定させてくれる。
 ニーゴらしい生っぽさで、思春期に必要な自己肯定・自己定義の到達点(であり途中経過)をスケッチしてんなー、って感じ。

 草薙さんもビビりで震える性根のまんま、ダチに追いつくべくよく知らない人にも積極的に声を書けて、新しい成長をもぎ取ろうと頑張っていた。
 ここは一歌と出会い触れ合い、過去の傷が塞がらないままその痛みだけが世界の全部じゃないと、優しい繭から出て色々体験するのは大事だと、思い知れた結果なんだと思う。
 周年エピにふさわしく、ここまでの物語がどう積み重なって人間を作っているのか感慨深いのは、かなりありがたい。
 お陰で一気に追いつくのは難しい量になってるけど、ヤケクソみて~な施策で物語リソースにアクセスしやすくもしてきたので、まだまだプロセカくんは新規取り込んで全力で走る気なんだなぁと、ありがたくホッコリもする。
 その”速度”が、子ども達をどこか高くていい場所に連れて行ってくれるだろう。

 あとさー……今回のレオミクさんは最高。
 携帯電話のちっちぇーサイズから、人間たちの輝きが眩しく溢れる現世を覗き込んで、満足そうに微笑んでいるその尊さが、やっぱりありがてぇよ……。
 ミクさんがちっちぇーと、電子化された現代の妖精、幼きイノセントだけが出会うことを許される特別な導き手感がモリッモリ究極に高まって、フェアリーテイルとしてプロセカ見てる自分としては、脳髄の一番奥をガックンガックン揺さぶられてしまった。
 大事な秘密の友達に、こっそり世界の一番キレイでアツい場所見せてあげる志歩も、ジュブナイル主人公力高くて最高。
 やっぱバチャシン達が現実と触れ合う瞬間、作品から溢れ出す現代童話としての”地力”がたまんねぇので、時折そういう味わいを濃い目に出していただけると助かります。

 

 というわけで優しく熱く青春が交わる、春のオルケストラでした。
 ユニット超えたエピソードの描き方もちょっとずつ変わってきてて、プロセカ全体の語り口が今どういうところにあるか、確認できるエピソードだったのも良かったです。
 この出会いで確かめた自分たちの熱と現在地を、今後それぞれの居場所でどう広げていくのか。
 三周年に向けて更に進んでいくプロセカも、大変楽しみです。