イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第10話『むむむ! 思い出の料理ってどんな味!』感想

 ごはんは笑顔! ”食”に込められた栄養補給以上の意味合いを探るひろプリ第10話は、どっしり腰を下ろしたナイスな日常回。
 たい焼きに似て非なるヤキターイを求めて、楽しく悪戦苦闘する三人が朗らかに眩しくて、大変良かった。
 激しい戦いに心を繋げたあと、こういう落ち着いた善さをたっぷりと感じさせてくれる話が来るの、緩急聞いてて良い感じだ。
 ハードなバトルでしか証明されない価値は、実は当たり前の日常、そこに宿る笑顔にしっかり繋がってて、お互い様の関係だというのがプリキュアイズムだからな……。
 そこに異文化コミュニケーションの意味とか、大人びていても少し寂しい等身大のツバサくんとか、自分だけの輝きを求めるましろちゃんとか、色んな善さが乗っかって贅沢な回でした。
 こういうエピソードを『心を込めて作った色んな鯛焼きをみんなで食べれるのが、なにより幸せなことだ』とまとめるの、表現とメッセージがしっかり噛み合ってる感じで好き。

 

 つうわけでツバサくん歓迎回……に見せて、ヒーロー一直線な異世界人でも空に憧れる変身超人でもない、一般人担当なましろちゃんの悩みと強さを掘る回。
 シンプルにメインテーマを掘り下げるだけで終わらず、クッションかけて横幅広い描写を拾いに行く作りは、ひろプリの特徴かなー、って感じするね。
 名前の通り未来は白地図、自分だけの夢も強さもまだわからない”真白”ちゃんだけども、持ち前の優しさは異世界人どもにすっかり染み渡ってズブズブであり、無自覚に施した善行が自分に戻ってくる形で、己の輪郭を一つ、確かにする展開となった。
 ソラちゃんもツバサくんも目的意識バリバリ、夢に向かって努力積み重ねまくりヒューマンだし、ましろちゃんはそんな友達の輝きを心から喜び憧れれるピュアガールなので、そらーコンプレックスも強くなる。
 しかし目指すべき場所がハッキリしていれば人間偉いというものでもなく、不定形で色のないましろの優しさは、出会う人を既に幾度も助けている。
 それはカバトンががなり立てる即物的で短絡な強さではないが、柔らかく誰かの寂しさを受け止め未来へ送り出せる、靭やかでましろにしかない強さだ……ということを、異世界のダチどもはたっぷり思い知っていて、しっかり伝えるのが良い。

 そんな強さの具体的な表現として、美味しく食べて心に満ちる食事と、湧き上がる願いが戦う力へと変わるプリキュアバトルが、日常と非日常、両方の極からしっかり書きたいものを支えていた。
 俺はメシがただの栄養素の塊ではなく、人間を支えたり繋げたりするメディアとして描かれるのが好きだから、ましろちゃんが誰かを思って何か作る描写が多いの、凄く嬉しい。(なので、すくすく育つエルちゃんにも新しく美味しいものたくさん用意してあげてる描写があって、メチャクチャ良かった)
 ヤキターイと同じものは作れないけども、そこに込められた思いが最高の調味料となって、ツバサくんが覆い隠そうとしていた寂しさを凄くポジティブに開放する展開も、異文化コミュニケーションとして凄く良かった。
 差異は確かにそこにあって、でもそれを同質化して塗りつぶすことだけが、答えではない。
 冒頭、既に自分だけの色を見つけて突っ走ってる友達と同じ場所にたとうと背伸びしてるましろちゃんが、その友達に自分だけの”真白”を教えられて、それが私の色合いなのだと認め父母に届ける話運びにも、しっかりチューニングが合っていた。

 新たに同じ屋根で暮らす仲間、大事な友達、共に戦う戦友となったツバサくんに、歓迎の気持ちを伝えたい。
 そんなましろの優しさが、巡り巡って彼女に道を示す今回、たくさんの鯛焼きが当人が蓋をしかけていた寂しさを開放して、ツバサくんを等身大の子どもに戻すのが好きだ。
 コミカルに時折プニバード形態に戻ったり、飛べない鳥でありそらとぶ少年でもある自分を朗らかに肯定できている現状に、微かに伸びる影。
 それを”弱さ”と否定する気持ちがツバサくんのどっかにあって、認めてしまえば進めなくなると封じ込めていたものを、ましろ鯛焼きは解き放っていく。
 そうして寂しさを認めたことで、ツバサくんは自分の誉れを心から喜んでくれた父母の思い出に、率直に向き直す”強さ”を取り戻して、異世界で夢を追う日々を力強く、楽しく進み直すことができる。
 こういう新たな翼の獲得に、無自覚に大きな仕事を果たせるのが虹ヶ丘ましろという人間であり、その強さなのだ。
 エピソードテーマが具体的かつ詩情豊かに、その内部で展開するドラマに乗っかって語られているのが、分厚い表現で良かったです。


 んで、こういう小さな発見と成長を暗い場所から当てこすり、答えを引き出すのが悪役の仕事であり、カバトン先生のヘイトアーツは今回も冴えわたる。
 どっしり展開し過ぎてカバトンの登場がいかにもノルマ的だったが、そういう無理くりを可愛げに変えてしまえる千両役者に育ってきたので、独特の味で良かったと思う。
 屁こきネタをやりたいだけにも思える焼き芋屋だけど、ましろちゃんが真心のメディアとして使いこなせている”食事”が、カバトンだと詐術の道具であり欲望の対象にしかならねぇ浅ましさを、上手く際立たせてもいた。
 やってる悪事も腐った性根も、いつでも死んで構わない悪辣さをたっぷり滲ませつつ、どっかヌケた面白さもしっかりあることで気づけば心を寄せていて、カバトンが信奉する”暴”の悲しさが真に迫ってくるのも、面白い語り口よね。
 オメーもその焼き芋をミサイルに変える代わりに、誰かと分けて笑い合うきっかけに出来りゃぁ良いんだけどねぇ……。

 殺陣の組み立てが、キュアウィングを交えた三人のチームワークを教えてくれる立体的な感じだったのも、お目見え直後のエピソードっぽくて良かった。
 直線的な打撃でゴリゴリ追い込むスカイと、三次元駆動を駆使して華麗に戦うウィング、遠距離支援のスペシャリストプリズムと、役割分担キッチリしつつ個性があるのは、ひろプリバトルの良いところだなー。
 ここにバタフライがどういう役割担って加わるのか、楽しみになる良い見せ方でした。

 

 というわけで、大変素敵な歓迎会でした。
 ソラちゃんが目的意識バリバリ(ゆえに、時に縛られ心の翼を失う)キャラなので、白紙の未来に戸惑いつつ自分を探していく等身大主人公の仕事は、やっぱましろちゃんが担当すんだなー、って感じ。
 真逆だからこそお互い補い合い、物語を多角的に面白く描いていくプリキュアらしさ、ひろプリらしさが垣間見える話数にもなりました。
 同じ屋根の下仲良く暮らす輪の中に、ツバサくんがどういう朗らかさと寂しさで混ざり合っていくのか、しっかり示してくれたのも良い。
 この暖かな風を受けて、あげは姐さんとツバサくんがどういう第一次接触を果たすのか。
 次回も大変楽しみです。