イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

君は放課後インソムニア:第1話『能登星 ぎょしゃ座カペラ』感想

 北陸石川を舞台に、学園の片隅で運命が出会う物語の第1話。
 屈折し誤解されがちなんだけども、『問題のある生徒』にはなりたくない主人公が鬱屈から逃れ迷い込んだ天文台で、同じ苦しみを抱える女の子と出会って夜に彷徨い出すお話である。
 かなりど直球に青春ボーイミーツガールだが、腰をどっしり落として真っ直ぐ投げ込むからこそ生まれるパワーがあって、高校一年生の繊細な感覚を上手くお話に取り込む機微にも優れ、地道ながら見ごたえのあるスタートだった。
 今年の春は、超☆アオハル祭りだなぁ……。

 

 

画像は”君は放課後インソムニア”第1話より引用

  原作ぜーんぜん知らずに見始めたが、勝負どころの絵がめちゃくちゃ強くてグイッと引き込まれた。
 特別美しいものに出会った時、特別な物語が否応なく動き出してしまう唯美主義が効いてて、冴えない主役の運命が瞬き出した都合の良さを、ゴリゴリと納得させられてしまう。
 女の子と運命と星の夜。
 眠れぬまま文句行ってばっかりの丸ちゃんは、一話のうちに自分の青春を捻じ曲げるだけの引力をもったものに沢山出会ってしまって、それはどれも美しい。
 特別な物語が始まるだけの圧力を、そういう一瞬を切り取った絵がしっかり持っているのは、第1話として大事なことだ。

 
 草薙の美術力がローカルな手触りを上手く背景に落とし込んで、美しい場所で特別なことが動き出すワクワク感を、非常に上手く盛り上げていたと思う。
 丸ちゃんを包囲する当たり前の鬱屈は、丁寧に編み上げられた石川の風景、その手触りにしっかり支えられて、不思議で素敵な土の匂いがする。
 あまりアニメアニメしていないキャラクターデザインと合わさって、そういう魅力的な普通さを切り裂いて特別な光が立ち上がってくる瞬間が、スペシャルに眩い。
 二人で見つめる青い雲と、もう憂鬱ではない夜明け。
 星をテーマにした物語に相応しく空が抜群に美しいが、それと同じくらい伊咲ちゃんという女の子に出会えたことが、どれだけ特別なのかもまばゆい光が良く語る。

 

 

 

画像は”君は放課後インソムニア”第1話から引用

 つーか丸ちゃん、こんなスーパースペシャル青春爆弾と素敵な邂逅果たしておいて、『俺は特に冴えたところもないボンクラ眼鏡です。学園生活は灰色です』とか言ってたら、ぶっ飛ばされるよマジ!
 ラブコメはどんくらい強い牽引力を、ヒロインに持たせられるかが大事だと思うが、主人公にとっての運命となるだろう伊咲ちゃんがめちゃくちゃ可愛くかけているのは、大変良かった。
 教室の騒がしさからちょっと離れた、天文台の妖精っぽさもありつつ、真夜中特別な時間丸ちゃんだけに見せてくれるスーパーチャーミングあり、初回にして多彩な魅力で見る側をぶん殴ってきてて、とっても良い感じ。
 病気がちな過去とか不眠症とか、世の中から逸れた薄暗さが作品の主題となる”夜”と上手く重なりつつ、その中でこそ輝く特別な眩さが既に元気なの、『この子が丸ちゃんの”星”になってくんだな……』て手応えがガッシリあった。
 カメラって小道具も、ナイーブな青春をテンポ良く追いかけていくお話に刺さるフェティッシュとして、とても良い小道具だと思う。

 丸ちゃんの屈折の描き方も、逃げ込んだ天文台で出会ってしまった自分の同志にノータイムで同じ傷を見せて、孤独な居場所のなさを自然補っていく描写が良く効いて、思春期らしい心地よいナイーブさになっていた。
 親友の受川くんがマージいいヤツで、自分の弱くてヤバい部分なんもかんも預けれる立ちがいてくれるありがたさが初手から元気で、彼がいてくれることで丸ちゃんも伊咲ちゃんの手を取れた。
 孤独で異質な者たちが、光満ちた教室とは少し違う場所で生きる意味とか見つけていく話なんだと思うが、フツーに魂半分支えてくれるダチがいるありがたさもそこにはあるのだと、初手で書いてくれたのは嬉しい。
 俺は特に力むことなく、正しさで殴りつけることもなく、個人が個人として抱える個別の難しさを見守り、そっと手を添えてくれる静かな優しさが好きだからよ……。

 教室のハグレモノである丸ちゃんは今後、天文台を根城に自分だけの居場所を作っていくのだろう。
 そして初めてのナイトウォークで隣に立った女の子が、自分にとってどれだけ特別な存在なのかを、特別に美しい情景に一個一個名前をつけていく中で、思い知っていくのだろう。
 今後二人が良く眠れない理由、高校生活にべっとりへばりつく重たい影も描かれると思うが、その泥をかき分けて前に進んでいく力強さが、美しい夜と恋に宿っていくのか。
 そんなことも気になる、素晴らしい第一話でした。
 次回も大変楽しみです。